「Half moon」(91)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

美穂がいなくなったと聞き、爽子は会社を早く退社しようとした。そしてエントランスを
通り過ぎた時にそこに立っていた人物とは・・・!?

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それではどうぞ↓





























******



「あれ?黒沼さんは?」

「え?帰ったよ」


光平は外回りから帰ってきて部署を見渡すと爽子が見当たらず、側にいた友香に聞いた。

いつもならいる時間なのだが、今日は美穂を探しに行ったに違いない。


(ま・・・大丈夫か。何かあれば連絡あるし)


「何かあったの?」

「いや、何でもない」


光平も美穂を探そうと警察に向かうことにした。会社の場所を聞いていたというのが気に

なる。でも考えれば考えるほど訳が分からなかった。あの自分が見た美穂がそんなこと

が出来るとは思えなかったからだ。


「そう言えば、爽ちゃん、エントランスで見たことない人と話してたな」

「え?」

「いや、今ね、エントランスまで爽ちゃんと一緒だったんだけど私忘れ物してさ、そこで

 別れたんだけど、振り向くと誰かと喋ってて・・・」

「え??どんな人だった?」


光平が焦ったように言うのでその気迫に押されながらも友香は続けた。


「ちらっとしか見てないけど・・・長い髪できれいそうな女の人だったよ」

「!!ーサンキュ」

「え??ちょっと〜〜」


光平は友香の話が終わらないうちに駆け出していた。その女性が美穂という保証はないが

とにかく爽子を掴まえなければならない。まだ間に合うかもしれない。


光平は全速力で廊下を駆け抜けていった。



**************




「さわこ・・ちゃん?・・だよね」

「は、はいっ」

「ちょっと話あるの。蓮に内緒で会いたいんだ。いい?」

「わっ・・・美穂さん、治ったんですね。か、感じが違うから・・・・」


あまりにも普通に話す美穂を驚いた表情で見つめると、爽子は戸惑い気味に言った。


爽子は夏に会った美穂と違う人物のような美穂に妙に緊張を覚えた。そして、これが本来

の美穂だと思うと、次第に目に涙があふれてきた。初めて本当の美穂に出会えたからだ。


「良かった・・・・良かった!!」

「・・・・・」


美穂はそんな爽子を冷静に見つめた。爽子はしばらく感動に浸っていたが、今からやろう

と思ってたことをハっと思いだす。


「あっ・・・でもっ蓮さん探しているみたいで・・あれ?内緒って・・・??」

「・・・ふぅ〜ん」


美穂からはあの時のような友好的な雰囲気を感じず、表情に気迫さえ感じる。

爽子は思わず美穂の態度に言葉が上滑りしてしまう。


「あ・・あの」


一刻も早く連絡したかった爽子は美穂の言葉の意図が掴めず不安そうに瞳を揺らした。す

ると美穂は敵対心むき出しで言った。


「私、蓮の彼女なんだけど」

「はい。知ってます」

「知ってるのにどうして邪魔するの?」

「え??」


するといきなり、訳が分からず固まってる爽子の手を美穂はぐいぐいと引っ張って歩き出した。


「あ、あのっどこに??」

「・・・・・」


美穂は爽子の問いかけに返答もせず、すごい勢いで手を引っ張って歩く。

その時、会社から少し離れた場所で爽子の携帯が鳴った。



PiPiPiPi


「あ・・・携帯が!」

「取らないで」

「え??」


(風早くんからかもしれない!)


「困ります。緊急の電話があるので」

「そんなの知ったことじゃないし。自分のやってることを棚に上げてよくそんなこと言えるわね」

「え・・・??」


ばっっ


爽子は引っ張られていた手を無理やり取った。


「美穂さん、ちゃんと話してください。私、このままじゃ困るので」

「・・・・・・」


真っ直ぐな目で凛として言う爽子を美穂は無言で睨んでいた。


「蓮を・・・・蓮を取らないでよ。」

「よく分かりません。蓮さんは美穂さんの恋人ですよね?」

「蓮はそう思ってない・・・。全部あなたのせいじゃない。あなたが現れなければ蓮はずっと

 私の側にいてくれるのに」

「・・・・」


爽子は美穂に異常性を感じ始めた。そしてこのまま話しても埒が明かないような気がした。

何か大きな誤解をしているのだが、否定しても全く受け付けてくれない。それより美穂の

目が段々狂気になっているように感じた。


「あ・・・あのとりあえず近くのお店にでも・・・」


その時、爽子は目の前の美穂の行動に大きく動揺した。


「え・・・美穂さん?」


そして、美穂の手に持っているものを認識すると、さらに大きく目を見開いた。


美穂が手に持っていたものとは・・・小さなナイフだった。そしてじりじりと爽子に向かってくる。


「蓮と別れてよ。」

「・・・・・!!」


爽子は狂気に満ちた美穂の目から視線を逸らせず、硬直したまま動けなくなった。



********


ピッ


「何で通じないんだろ?」

「光平にも連絡したけどこっちも出ないんだ・・・」


蓮と風早は北海道に入り、爽子と光平の会社に向かっていた。あれから、風早は無理やり蓮

に付添うことにした。蓮はかなり拒否をしたが、風早は引かなかった。そして飛行機の中で今

の蓮の状態を聞いて、蓮が長い間苦しんでいたことを知る。もっと早く気付けてたら・・・という

想いが風早の中に残った。知ったところで何ができるわけでもないのだが、自分のことしか考

えていなかった自分自身に恥ずかしくなった。しかし同時に、風早は蓮に言いようのない違和

感も感じていた。


横を歩く蓮をちらっと見る。それは今まで見たことのないような必死な形相だった。


一方蓮は、風早が幸せな時に自分の暗い話をする気になれなかった。そして、これ以上二人

を巻き込みたくなかったのだ。自分の中の不透明な不安で風早を翻弄することだけは避けた

かった。しかしそんな蓮の思いやりが裏目に出ることになる。


言いようのない違和感・・・・。


風早はさっきからその疑問が頭の中で回っている。なんだろう・・・って?

それは感覚的なもので、蓮を長く知っているわけでないが、いつもの蓮ではなかった。


「!」


そしてハッとしたように風早は顔を上げた。


「翔太?」


蓮は立ち止まっている風早にやっと気付くと、不思議そうに後ろを振り向いた。


「蓮・・・何か隠してるだろ?」

「・・・・」

「何でさっきから俺の目を見ないんだよ」


違和感・・・それは蓮の目が真っ直ぐ自分を見ないということだった。いつもは絶対視線

を逸らさない蓮が自分を見ない。それが違和感だったのだ。


蓮は風早をちらっと見るとすぐに視線を逸らした。そして戸惑いの表情を浮かべた。


「・・・蓮らしくないよ」

「・・・・・」


風早の鋭い視線に、蓮の握りしめた拳の中がじっとりと汗が滲んでくる。風早はこのこと

が感覚的に爽子に関係あるような気がしていた。


「俺・・・蓮はもちろん信用してるけど、爽子に何かあったら・・・蓮でも許さないよ」


風早は初めて蓮を敵対するように見つめた。蓮はその姿をしばらく見つめると、くるっと

背中を向けた。


「蓮っ!」

「ごめん・・・。巻き込むつもりなんかなかったのに・・・絶対お前だけは巻き込みたく

 なかったのに・・・・」


蓮の背中は悲しみに溢れていた。風早はその姿を真剣な目で見つめ続けた。


「いろいろ・・・話さないといけないことある。でもとにかく・・・今はあいつを探したいんだ」


風早はしばらく蓮の背中を見つめた後、自分を落ち着けるように肩で大きく息をついた。


「・・・・分かった。とにかく探そう」

「・・・悪い」


風早は蓮の背中をぽんっと叩くと”行こ”と足早に歩き出した。蓮はそんな風早の後ろ姿を

見て心の中で謝罪すると、思いを振り切るように目的に向かって歩き出した。














あとがき↓

火曜サスペンスになりそうで皆様の予想通りとことんまでいかないので。もともとそこが
重要な話でもないんで。しかしどこまで蓮は風早カップルに迷惑かけるんだ!(笑)
一日に何回も更新して欲しいと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、このブログ、
一日に記事を何回も書くと、目次に入れた時にややこしくなるんです。だから止めました・・・。
ダイアリーだからなんでしょうね。本当にいろいろな面で使いにくいと感じています(´;ω;`)
いつも拍手・コメントありがとうございます。遅くなりますが、必ずお返事しますね!

Half moon 92