「Half moon」(85)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

今回は昌の心情暴露と蓮のあれからの様子です。蓮は急いで帰るが、その先で待ち受けて
いたものとは・・・?

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それではどうぞ↓




























* * *



「爽子ちゃん・・・やっと風早に会えるんだね」

「う・・・うん」


昌は電気を消した後、ベッドの下の寝ている爽子に声を掛けた。


「なんか・・・私が言うのもなんだけど、ごめんね。沙穂のこと」

「う、ううん・・・そんな・・・」

「もう、あの子大丈夫みたいだから」

「・・・良かった」


昌はあの電話だけでも沙穂が以前より成長したように感じた。北海道で彼女に会って何を

感じたのだろうか・・・・。光平が好きになった彼女。


「私も正直に言うね。私も・・・心のどこかで爽子ちゃんに嫉妬してた」

「・・・・!」


昌は真っ暗で表情を見られないとばかりに懺悔するように話し始めた。


「光平のこと・・・ずっと好きなんだ。こんなこと爽子ちゃんに言うことじゃないけど・・・」

「!!」


爽子が驚いたようにこちらを向くのを闇の中で感じた。


「お願い。そのままで聞いて。それじゃないと懺悔できないからさ。私って結構小心者

 だから。」

「昌さん・・・」

「いろいろ醜いこと考えてた気がする。でも、結局は気づいたの。自分は自分らしくいる

 しかないし、一生懸命自分のことを頑張るしかないんだって。そして、爽子ちゃんみた

 いに、真っ直ぐ彼を想うことしかないのかなって・・・ははっ」

「・・・・・」

「光平のこと・・・ずっと見守っていきたいの」

「・・・うん」


しばらくの沈黙の後、昌が照れ隠しに”もう寝るね”と言おうとした時、爽子が口を開いた。


「昌さんも・・・秋山さんも・・・優しいんだと思う」

「え・・・?」


昌は爽子の言葉に驚いたように耳を傾けた。


「だから、皆さん・・・自分に正直になろうと思えば思うほど悩むのかと・・・」

「・・・・」


沙穂から聞いた。彼女は全く自分を恨んでいなかったと。そんな人間がいるのだろうか。

でも彼女の髪が真っ直ぐなように、背筋をぴんっと伸ばす姿は彼女の内面を醸し出して

いた。きっと正直なのは彼女だ。そんな彼女だから光平は好きになったのかな・・・。


「昌さん・・・ありがとう」

「爽子ちゃん・・・」


昌は爽子に思いがけなく気持ちを伝えることができたことに胸の奥がすーっとした思いが

した。心のどこかで引っかかっていた。自分が表面的に友好的に見せながらも心のどこか

で反対の感情を抱えていたことに・・・。


”ありがとう・・・”   昌もまた心の中でそう呟いた。




**********



「れんっ・・・・どこ行ってたの!?」

「ちょっと用事だよ」


この夜、退院してきた美穂に付添っていた蓮は風早からの緊急事態メールで爽子を迎えに

行った。美穂は蓮が家を出ると聞いて大泣きした。振り切って家を出た蓮は美穂の様子が

気になり昌の家から美穂のところにもう一度顔を出すと案の定、美穂が玄関先で待ってい

たのだ。退院が近付くにつれて、自分への執着が強くなっていることに蓮も気付いていた。


美穂の高い声に、側にいた沙穂はうんざりした顔をした。沙穂と母は交互に美穂を見ていた。

以前のように突然いなくなりそうで不安だったからだ。


「美穂・・・ちょっといいかげんにしなよね。」

「沙穂・・・悪いな」

「蓮が謝ることないじゃん・・・」


蓮は疲れた様子の沙穂を見ると、自分がいない間の美穂の様子が安易に想像できた。


「蓮は美穂のモノじゃないんだから」

「沙穂・・・いいから」

「なによ・・・さほちゃん・・・・れんのこと好きなんでしょ」

「え・・・?」


蓮は美穂の狂気ぶりに胸の奥がじりっとした感覚を覚えた。いつも感じる飢餓感だ。でも

今やその飢餓感は無機質なものへと変化していることに自覚する。蓮は爽子の瞳を思い浮

かべた。


「だって・・・さほちゃん、私のこと・・きらいだって言ってたもん」

「え・・何言ってんの?」


沙穂も蓮も美穂の異常な様子に困惑しながらその場に立っていた。


「病院にいたとき、さほちゃん・・・ベッドで言ってたもんっ」


うわぁ〜〜〜んっ


美穂はそう言って側のソファーにうつ伏せた。


「何やってるの?あなた達。もう遅いのに」


美穂の泣き声を聞きつけて、眠っていた母は言い争っている3人の様子に顔を歪ませた。


「・・・すみません。もう遅いのでとりあえず帰ります」

「そうだね・・・蓮、またね」


沙穂が蓮にそう言うと、美穂が悲鳴のように声を張り上げた。


「いやっ!!かえらないで。ずっと一緒にいてよ〜〜〜れんっ」

「美穂」


母も美穂を止める中、外はいきなり雨が降り出し、雷が鳴り始めた。


ピカッゴロゴロ〜〜〜ッ


「ぎゃ〜〜〜〜っれんっ!」


美穂は雷の音に必死で耳を押さえて丸くなった。蓮は嫌な予感がした。あの日も雷の日

だった。


「美穂っ!」


蓮は美穂をしっかりと抱きしめた。しばらくぎゅっと抱きしめたが美穂の嗚咽は収まら

ず、身体を離して美穂の様子を窺うと、狂気に狂ったような顔に目を見はった。もはや

正常な状態ではなかった。思わず肩に力が入る。


「美穂!こっち見て!」

「いや〜〜〜っ!!」


ピカ―――ッ


沙穂と母は二人のやり取りをただ呆然と見ていた。


「れんっ蓮っ・・・ああっ〜〜やだっ・・・行かないで」

「俺はどこにも行かない」


嗚咽を繰り返し泣きわめいていた美穂がいきなり泣き止んだ。


「・・・美穂?」

「行くって言ったじゃない」

「!」


雷が鳴る中、蓮は美穂の変化にハッとしたように目を見開いた。美穂は顔をぐいっと上げて

蓮を睨んだ。蓮は分かった。目の前にいるのは今までのふんわりとした美穂ではなかった。

美穂はキッと目を吊り上げるとはっきとした口調で言った。


「もう別れたいって言ったじゃないっ!ずっと一緒にいるって言ったくせに。私を捨てよう

 としたんじゃない」

「美穂・・・・!」


ピカッゴロゴロ  ザーザーザー


蓮と沙穂と母は時間が止まったように瞬きも忘れて目の前の光景を見つめていた。


3人の前に現れたのは紛れもなく、24歳の美穂だった。

蓮はその姿をただ茫然と眺めていた。固まったまま、ただ茫然と・・・。

外の雨はまるで蓮の心を映し出すように激しさを増していった。














あとがき↓

チャーチャーチャー、チャーチャーチャー♪という火曜サスペンスの音楽が流れてきそうな
展開になってきた。まさに昼ドラと言われそうだ。ちょっと分かってきましたか?蓮の過去
が。といってもたいしてすごい事実でもないけど。それでは5話ずつ拍手ボタンを設置させ
てもらいます。読まれたくない感想などはこちらに。それからハンドルネームを伏せたい方
などは言ってくださいね。私、今他サイト様のある話に夢中ですっ!

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