「あとの祭り?〜After curnival〜」(7)


ギャグありホットありのごちゃまぜな話。


* 爽子が健人の家にいることが分かった翔太はかなりのショックを受ける。そして
  怒りのまま健人の家に乗り込んだが、そこで目にしたものとは??
  最終話です。

「あとの祭り?〜After curnival〜」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) の続きです。



以下からどうぞ↓



















クラッカーの紙ふぶきがかかった頭のまま、翔太は時間が止まったようにじっとして

いた。そして必死で状況を飲み込もうとする。すると、あやねがにっこりと悪魔の微

笑みで翔太を見て言った。


「実はねぇ・・・」


あやねから語られた事実に翔太はさらに固まったまましばらくの間動けなくなった。


「・・・・マジで?」


そしてしゅるしゅるしゅる〜〜〜っと力が抜けるようにその場に座り込んだ。



***********



懐かしい面々が揃って、お酒を囲んでの宴会が始まる。


「いや〜最初はここまでするつもりなかったんだけどね、風早の慌てぶりが面白くってさ」

「あのなぁ〜〜っ」


そんなあやねに翔太はかぁ―っとなって言った。今となっては怒る気も失せる。それ

よりもこの事実が嘘であったことの安堵感の方が大きかった。


「ケントのカバンの中から指輪が出てきた時に思いついたのよ。爽子は絶対探しに

 来ると思ったから、その時爽子を拉致しようってね」

「・・・はぁ?」


翔太と爽子は呆気に取られてあやねの言うことを聞いていた。


「まさかこんなに上手くいくとは思わなかったけどね。爽子が風早に連絡なしに飛び

 出したことがGJね!」

「ご・・・ごめんなさいっ」


翔太の隣で小さくなる爽子。そんな爽子の隣を一時も譲らない翔太がむっとして言った。


「そんなこと悪ふざけがすぎないか!?爽子はかなり悩んだと思う」

「風早が悪いのよ」

「・・・何でだよ」


真剣な翔太の目も臆せずあやねが言った。


「爽子を独占しすぎなのよ。私達だって爽子と遊びたいんだから」

「う"っ・・・・それは・・・・」

「だからね、その時閃いたの。皆で風早を弄ろうって!」

「―なっ!!」


段々と皆にからかわれて翔太の顔を真っ赤になってくいく。すると翔太の後ろで小さ

くなっていた爽子があのぉ〜〜〜っと頬を染めて手を挙げた。


「あやねちゃん・・・私、翔太くんと一緒にいられて幸せだよ。私の方が・・・翔太くんを

 独占していたと思います/////」


すると翔太が驚いたように目を見開いた。


「え・・・爽子?いや・・・じゃなかったの?」

「え?何が?」


翔太は爽子の言葉にみるみる体が熱くなっていくのが分かった。


「俺ばっかりが、想いが膨らんじゃって・・・・我慢できなくって・・・・」

「わ・・・私も想いが膨らんで・・・翔太くんといると欲張りになってたよ」

「爽子・・・・」

「翔太くん・・・」

「あ"〜〜〜〜〜〜〜〜っ!結局こうなる」


あやねは吐き捨てるように二人を見て言った。そこにかなり酔ってきたくるみも毒を吐く。


「そうだよね・・・結局、高校ん時から風早は爽子ちゃんしか見てないんだもん」

「え//////」


翔太の顔がみるみる真っ赤になっていく。


「これはもうストーカーね!」

「え?」

「ほんと、ほんと〜風早は結局、ずっと貞子ちゃんを盗み見てたんだもんな。」

「そうね、あの時は完全に犯罪ね」

「あ"〜〜〜お前らいいかげんにしろっ!!」


がははは〜〜〜〜っ


翔太が真っ赤になって怒ると皆が大笑いする。そんな光景を眺めながら、健人が風早の

肩をぽんぽんっと優しく叩いた。


「今回の企画は”風早弄り企画”だけじゃないって知ってた?」

「え・・・?」


翔太が皆の顔をぐるっと見渡す。すると皆温かい目で二人を見ている。するとあやねが

かわいい花束を二人の前に差し出した。


「”幸せ再確認企画”よ。はい。結婚記念日おめでとう」

「あ・・・・・」


爽子は驚きのあまり固まってしまっている。


「爽子が側にいることが当たり前になってたんじゃないかって・・・企画したのよ」

「・・・・。サンキュ・・・矢野」


翔太は照れながらも皆の心遣いにやっと柔和な笑顔が出る。そして、爽子は感動のあまり

涙が溢れる。翔太はそんな爽子の肩を優しく抱いた。


「みんな・・・ありがとう」

「爽子・・・」

「爽子ちゃん・・・」

「貞子ちゃん・・・」


爽子は皆に見守られながら、心からの笑顔で笑った。


高校に入るまで一人もいなかった友達。でも今はこんなに自分を見守ってくれる人達が

いる。その目はとても温かかった。爽子はこの幸せを絶対忘れないと心で思った。そして

手を胸に当てながら何回言っても足りない言葉をもう一度呟いた。


「ありがとう・・・」

「爽子。いつでも私達は爽子の味方だからね」

「あやねちゃん・・・・」


ピンポ〜〜ンッ


その時、またインターホンがなった。健人が出ると、そこには千鶴と龍の姿。


「ち・・・ちづちゃん!?さ・・真田くん!?」


爽子はびっくりしたように声を上げた。


「こんな面白いことになってるんだったら早く来るんだったよ〜〜〜!!」


千鶴は大きな音を立てて入ってくると、がはがは〜〜〜と笑った。


「ちづ、子どもは?」

「あ〜〜〜お母さんに預けてきた(龍の)♪」

「うわっひでっ〜〜〜いつもながら」


わははは〜〜〜っ


「だってさ、爽子の一大事にはいつでも駆けつけられる自分でいたいからさ」

「・・・ちづちゃん」


爽子は千鶴の言葉に大粒の涙を流した。そんな爽子に千鶴は照れ笑いをした。


結局爽子愛は翔太だけではなかった。翔太はそんな彼らにやきもきしながらも、嬉しそ

うに微笑む爽子や仲間の温かさに思わず笑みがこぼれた。


こうして”あとの祭り”はまさに言葉通り、事が終わった後の”祭り”になった。本当

の意味にはならずに一番ほっとしたのは翔太だっただろう。


爽子にとって自分の失態から始まった今回の出来事は、不思議なほど幸せを再確認する

ことになった。そして、その帰り道、爽子はもっと幸せをかみ締めることとなる。


* * * 


月がきれいな〜〜〜今日は」


二人は健人の家からの帰り道、そっと夜空を見上げた。外は寒いが二人の繋いだ手

は温かい。


「こんな風にさ・・・よく爽子を送ったよね」

「うん。いつも翔太くんは家まで送ってくれて・・・嬉しかった」

「・・・・・」

「翔太・・・くん?」


何も言わない翔太を爽子はそっと見上げた。翔太は月から目を離さずせつない目を

して言った。


「矢野がさ・・・爽子と一緒にいることが当たり前になってんじゃないかって・・・そんな

 ようなこと言ってたけど・・・」


そこまで言うと翔太は爽子の方を見て言った。翔太の熱い目にドクンッと爽子の胸が

鳴った。


「当たり前なんて・・・思ったことない」

「翔太くん・・・」

「だって・・・同じ家に帰るんだよ」

「!」


翔太の視線をたどると、そこは爽子の実家へ向かう曲がり角だった。


「もう・・・・家に送った後、離れなくていいんだよ」


翔太の今の言葉に、爽子は改めて結婚したことを実感した。爽子もまた、結婚して1年

翔太が側にいる生活を当たり前と思ったことはなかった。


「うん・・・」


爽子は嬉しさのあまりそれ以上言葉を発せず、頷くのに精一杯だった。そして、改めて

今日のことを謝った。


「翔太くん・・・今日は本当に心配させてごめんなさい」


翔太はそんな爽子に身体を向けると、頬にそっと手を当てる。翔太の手は爽子の涙で

濡れていた。


「爽子・・・本当のこと教えてね」

「うん・・?」


翔太はそう言うと少し照れた様子で一回俯いた後、真剣な目で爽子を見つめた。


「俺が・・・べたべたすること・・・・いやじゃない?/////」

「え??」

「矢野が言ってたように・・・俺、気がついたらずっと爽子を独り占めしてる気がする。

 す・・・すぐ襲っちゃうしさ////」

「わっ////そ・・・そんなっ」


二人はまるで火がついたようにかぁ〜〜〜っと真っ赤になって俯いた。そして爽子はぐっと

顔を上げると、紅潮した顔を翔太に向けた。


「嬉しい・・・。心から嬉しいの」

「爽子・・・。」


爽子の純粋な瞳が素直な心を届けてくれる。翔太はじわ〜っと心に染み込んでいくように

その言葉に温かくなる。


「わ、私も・・・・翔太くんを独り占めしちゃってるので・・・いやじゃない?」

「えっ!/////」


すると、翔太は恥ずかしそうに手で顔を覆うと、その場にしゃがみこんだ。


「あ〜〜〜〜〜〜〜っ良かった」

「翔太くん・・・」

「今日はマジ焦った・・・。もしかして愛想つけられたんじゃないかって・・・(三浦のとこいる

 って言うし・・・)」

「そ、そんなことあるわけないよっ!!」


爽子はそう言うと、そろ〜〜っとしゃがみ、翔太に目線を合わせた。


「ず・・・ずっと私を・・・独占してくださいっ。きゃっ////(言っちゃった〜〜)」


爽子が恥ずかしそうに両手で顔を隠すと、ふわっと大きな身体に包まれる。


「うん・・・・俺もずっと独占してね。」

「・・・・うん」


雪が舞う中、月はそんな二人を優しく照らした。


「じゃ、帰ろっか!!・・・俺達の家に」

「・・・うん」


翔太はすくっと立ち上がるとそっと手を差し伸べた。爽子は嬉しそうに微笑むと、翔太

の大きな手に自分のを重ねた。



今日は1月11日。甘い甘い結婚記念日の始まりだった。


そして、後に警察から強く怒られるという記念日のおまけもついてくるのであった。




<END>








あとがき↓

最後はほっこりと。なぜ最後に日にちを入れたかというと、わざわざこのサイトの
1周年記念ということで”すいの部屋”の翠様がお話をプレゼントしてくださったか
らです。まさかまさかのプレゼントに感激してしまいました!(泣)そのお話はこの
結婚記念日にまつわるお話ですので、このお話の番外編として明日にUPさせて
頂きます。どうぞ皆様お楽しみに〜〜〜!それではこのお話を最後まで読んでく
ださった方、ありがとうございました。

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