「Half moon」(54)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
風早は朝になっても帰ってこなかった。まだ前に進めない爽子は気がかりだった
美穂に会いに行く。そこで気づいたこととは?
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53 の続きです。
それではどうぞ↓


















************



「−さわこちゃん!!」


案の定、美穂は満面の笑みで爽子を迎えた。爽子は嬉しそうに美穂に近寄った。


「さわこちゃん・・・ごめんねこの間」


すると美穂が落ち込んだ口調でもじもじして言った。どうもあれから蓮や母に叱られた

ようだ。その姿を見て、爽子も申し訳なさそうに言った。


「ううん・・・。こちらこそごめんなさい」

「ーあんたが謝ることないじゃん」


後ろの壁にもたれていた蓮が口を出すと、爽子は蓮を見て恥ずかしそうな顔をした。


「ううん・・・私、あの時、自分のことしか考えてなかったから」


風早くんからの電話が嬉しくて、美穂さんの存在より早く会いたくなったの。

だから・・・ごめんなさいなの。


「あ、あのね、美穂さん。・・・私、明日帰るの」


爽子は意を決したような表情で言った。また美穂を傷つけるかもしれない。でも爽子は

真実を隠すことはできなかった。


「ほっかいどう?」

「え?」


美穂の言葉に驚いて、爽子は蓮を見た。蓮は優しく微笑んで頷いた。

蓮は爽子が来るまでに美穂を説得していたのだ。


「でも・・・さわこちゃん、また帰ってくるんだよね??また遊べるよね!!」

「・・・うん!!」


爽子は満面の笑顔で答えた。美穂の純粋な気持ちが爽子は嬉しかった。二人は手を握り

合って、喜んだ。それからしばらくの間、美穂とあの時のように一緒に遊んだ。


「ねぇ、さわこちゃんは好きな人いるんでしょ?」

「え!?/////」

「みほはね〜〜〜れんが好きなんだよ」

「う、うん!知ってるよ」


蓮が用事で席を外していた時、美穂が嬉しそうに話し出した。


「・・・れんと一緒にいられるならずっとこのままでいいなぁ・・・」

「・・・・・」


美穂が独り言のように言った言葉に爽子は少し違和感を感じたが、単純に蓮のことが

とても好きなのだと思い直した。


「さほちゃんは好きな人いるのかな?」

「さぁ・・・聞かないの?」

「うん、さほちゃん、みほのこと好きじゃないから」

「え!?」


美穂の意外な発言に爽子は目を丸くした。明らかに寂しそうな様子の美穂。


「そ、そんなことあるわけないよ。だって姉妹なんだから」

「・・・そうかなぁ」

「そうだよっ!!」


爽子が一生懸命言うと、美穂はにんまりとした顔をして、爽子に抱きついた。


「え//////」

「さわこちゃん好き!!」


素直な表現に爽子は恥ずかしさが一杯になった。でも美穂の女の子らしい優しい感覚

を感じながら思った。自分はこんなに素直に風早に表現できているのかと。

伝えられているのかと。


「・・・私・・・逃げてるのかな」

「え??」


美穂の大きな目がきょろっとして爽子を見た。爽子は視線を窓に移し黙り込んだ。


高校の時、風早くんに好きな人がいると知ってショックだった。まさか自分のことだとは

知らずに、自分に対する気持ちが同情だと思った時、友達のちづちゃんに怒られた。

あの時、色々な人に背中を押してもらった。でも、それから想いが通じてから幸せな毎日

を過ごさせてもらった。風早くんが笑うと、どんなに落ち込んでいても笑顔になれた。

風早くんが悲しそうにしていると言葉も出ないほど悲しくなった。風早くんが困っている

と、私も何かの役に立ちたくなった。

風早くんは私に沢山の初めてをくれた。風早くんに会って沢山の感情を知ったの。


私は風早くんに何か返せてるのかな?・・・ちゃんと伝えてられているのかな?

もう、背中を押してもらわなくても自分で伝えないといけない。ううん・・・伝えたい。


爽子はぐっと顔を上げて美穂を見た。


「美穂さん・・・このままでいいなんて、やっぱり良くないと思う。美穂さんの家族や

 蓮さんはこのままでいいと思ってないよ。だから、美穂さんも諦めたりしないで。」


美穂は爽子が言うことを真剣に聞いていた。爽子は美穂に届くように、自分の気持ちが

届くように、思いを伝えた。


「・・・・絶対、皆そう思ってるよ。沙穂さんも。だから・・・私も諦めない」


美穂は目線が定まらないまま、爽子を見ていた。爽子はしばらくの間、美穂を見つめると、

頭を深々と下げた。


がらっ


病室のドアで二人の話を聞いていた蓮が中に入ってきた。蓮と爽子の視線が合う。


「―帰る?」

「う、うん。もう帰らなきゃ。でもなんか美穂さんが・・・」

「気にしないで。アンタは自分のこと考えな」


蓮は優しい目で爽子を見た。蓮の温かい気持ちが伝わってきて、涙がじわっと込み

上げてくる。


「あ・・りがとう」


蓮はそれ以上何も言わず、爽子を送りだした。


蓮の目が全てを語っていた。

爽子は思った。なんて良い人なんだろう。風早くんに会えなかったら会えてない人。

世の中にはこんないい人達が沢山いる。ありがとう!ありがとう!爽子は胸いっぱい

に広がった温かい気持ちを抱えながら、風早の元へ走った。


(絶対・・・届けたい。ちゃんと届けたい!!)



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ガチャッ


はぁ、はぁっ


「・・・・え」


走り続けた爽子は荒い呼吸を整えながら茫然と部屋の中を眺めた。

そこは、爽子が出て行った状態と全く変わらず、置き手紙もそのままだった。


「・・・・・・」


爽子は置き手紙を握り締めながら、しばらくの間考え込むようにじっとしていた後、

ぐっと顔を上げた。


「・・・探さなきゃ」


そう呟くと、すぐに立ち上がった。もういてもたってもいられなかった。

帰る明日の朝まで、時刻は刻々と進んでいる。爽子は再び街に向かって走り出した。









あとがき↓

やっと動き出した爽子はどうなる!?乞うご期待!なんちゃって。あまり期待しないで
下さい。風早くん救出したいとこですがね〜〜!それでは更新できる時には頑張ります。
また、気軽に遊びに来てください!ダメな方はスルーで!!

Half moon 55