「Half moon」(49)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

あの電話から風早が気になって仕方がない爽子は??
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 43  44 45 46 47 48 の続きです。
それではどうぞ↓


















美穂が見つかったと聞いて、爽子と光平は急いで病院に向かった。爽子は美穂を見て、

安堵した顔で心から”良かった”と呟いた。そして、あふれてくる涙をぐっと堪えた。

何も言葉にできず、ただ美穂の母に深々と頭を下げた。美穂の母はそんな爽子に申し

訳なかったと頭を下げた。そして取り乱したことを謝罪した。


美穂はぐっすり眠っている。爽子は起きるまで側にいたかったが、風早のことが心配

でとにかく今すぐ風早の元へと行きたかった。


(風早くん・・・変だった。きっとすごく心配してくれたんだ・・・)


爽子はすぐに帰らないといけないことを告げ、病室を慌てて出て、風早の元へと走った。

その時、風早のことで頭が一杯で携帯のことを忘れていた。


爽子が出て行くのを目で追い、明らかに哀しそうな顔をしている光平を蓮は見ていた。


美穂のことを聞いてすぐに病院に来ていた蓮は、二人が病室に入って来た時から一言も

話さず、俯いたまま腕を組んで後ろの椅子に座っていた。


* * * *



「・・・光平、なんで彼女と?」

「・・・・」


爽子を見送った後、蓮は光平を病院の出口まで送った。


「偶然だよ」


光平に電話をした時、側に彼女がいたことに蓮は驚いた。そして嫌な予感がした。


「・・・分かってるよな?もうすぐ彼女帰るの」


蓮にしては珍しく、少し強い口調で感情を出して言った。


「・・・・分かってるよ」

「翔太はまた・・・長い間彼女と会えないんだぞ」

「・・・・・」


問い詰めるかのように蓮は光平を見た。


「・・・・見てたら分かるだろ?」


次の言葉を蓮はあえて言わなかった。二人が想いあっていることは誰の目にも分かることだ。

すると光平は批判的な目を蓮に向けた。蓮にこんな目をするのは初めてだった。

そして、しばらくの沈黙の後、薄ら笑いを浮かべてけらけらと笑いだした。


「!」


突然笑い出した光平を蓮は呆気に取られて見ていた。


「へぇ〜!すっかり蓮は風早の親友なんだなっ」

「・・・・・は?」

「そうじゃん。・・・・なんか変ったよな。蓮」


光平は冷やかな目で蓮を見た。蓮は何も言わずに光平の言葉をじっと聞いていた。


「そっか・・・美穂さんのことも皆に何も言わなかったけど、もしかして風早には

 言ってたりして。長年の親友より信頼できるんだもんな」


蓮の光平を見る目が哀しい目になっていることに気づき、光平はさっと目を逸らした。

そしてくるっと背中を向けていった。


「一言言っとくけど・・・・俺、風早の親友でも何でもないから」

「・・・・・」


光平はそれだけ言うと、最後まで蓮を見ずに”じゃなっ”と手を振って、ゆっくりと

去って行った。


バタンッ


蓮は光平の背中を切なそうにしばらくの間、見ていた。

何よりも言った光平が一番傷ついている。蓮にはそれが分かりすぎてつらかった。

そして、思ったよりも光平が本気だということに嫌な予感がさらに広がっていく。


蓮の”嫌な予感”は悲しいほど当たってしまうことを後から知ることになる。



*************



はぁはぁはぁ―――


息を整えて、爽子は風早のアパートのベルを押した。


(風早くん・・・居ますように!!)


胸の鼓動は走ったから早いのではない。風早に会いたくて、ドキドキしていた。

一緒にいられる時間は少ない。それは風早だけではなく爽子も十分感じていることだった。



ピンポン〜ッ


「・・・・・・。」


ピ〜ンポンッ


爽子は不安に駆られた。まだ”彼に会えない”と思った瞬間、身体が凍りつくようだった。

仕方なしに、もらっている合鍵で部屋に入ることにした。


「ごめんなさい・・・風早くん・・・・勝手に入ります!!」


かちゃっ


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


部屋の中は真っ暗だった。まだ風早が帰っていないことが入ってすぐに分かって、がくっと

頭をうな垂れた。そして、ゆっくりと部屋に入ってその場に座り込んだ。


がちゃん


鍵を机に置く音が響く。物音一つしない部屋は夏だというのにまるで冬のように感じる。


この部屋はいつも風早の笑顔と笑い声で溢れていた。


風早の笑い顔が脳裏に浮かぶと、目の前がぼやけてきた。


「うっ・・・うぅ・・・っ」


ぽつんっ


涙が爽子の手に一滴零れ落ちた。


きっと彼は何か誤解をしている。

”誤解・・・・”その言葉に、胸がズキンッと痛んだ。

話せばきっと分かってくれる。でも・・・話せない。爽子はどうすれば良いか分からず

ただ、そのまま座り込んで呆然としていた。


その時、部屋の角の方から小さな物音が聞こえた。









あとがき↓

ごめんなさいね〜爽子がかわいそうな展開になってきちゃった??でも風早は病んでも
爽子ちゃんは絶対病みませんから!後、爽子が携帯のこと聞かないわけないですよね。
でも病室で聞かなかったのは話の筋上、お許しくださいってことで〜!(汗)
ああ・・・当分Sweetがなくて寂しい・・・。また多分、途中短編とか入れて、Sweetします。
長編を楽しみにしている方、マイペースですみません。それではいつもご訪問ありがとう
ございます。

Half moon 50