「瞳は知っている」番外編

「瞳は知っていた」ハル編 

本筋は 「瞳は知っている」         10 11 12 13  14 15 16 17 を読んでください。

ハルの想いを少しだけ。ものすっご〜〜〜くショートです。
それでもよければ以下からどうぞ↓













「お〜〜〜〜っ久々やっ!!」


ハルは2年前に登った山に再び登って大きく伸びをした。


「・・・懐かしーな・・・」


頂上の岩に座って、ワンバーナーを取りだした。ここで飲むコーヒーは最高だ。

ハルはコーヒーを準備しながら2年前のことを思い浮かべた。


* * *


「――別れよう。爽子」

 「え?」


風早が去ってから4年目の春だった。それぞれが就職し、ハルは大阪に、爽子はそのまま

北海道に残り、遠恋になってすぐの事だ。

ハルの言葉に爽子は声も出せず大きな目を見開いた。


 「もう十分や」

 「・・・・・」

 「爽子が理性を優先すればするほど、人を傷つけることもあるんや。このままでいることが

  本当に爽子にとっても、俺にとっても幸せか考えてみ。答えは出るやろ」


爽子の表情がどんどん崩れていって、今にも倒れそうだった。思わず手が震えた。支えたくて、

抱きしめたくて・・・・。でも、俺は手を引っ込めた。

もうその手を差し出すことはできない。彼女はその後、何回”ごめんね”を言ったか分からない。

彼女にとって裏切るなんて経験は初めてだっただろうから。


”でもな、爽子。恋愛に義務はいらんやで。人間には道理でいかんことがあるんや。”


心の中では分かっていたが、どうしてもそれを口にできなかった。どこかで爽子の性格に

甘えてた。絶対爽子は言わないのが分かっていたから。俺はどこかでそんな爽子を利用してた。


言うまでに丸3年かかった。その間に彼女の心から風早がいなくなればそれでいいと思ってた。

でも・・・・それはなかった。


* * *


「・・・ごめんやで」


もっと早く解放してあげるべきだった。分かってたけどできなかった。

翔太にも、あの時、何も言えなかった。ただ”信じてる”という言葉であいつを傷つけた。

でも・・・例えあいつでも爽子を譲れなかった。好きだったから・・・。


「はぁ〜〜〜〜上手くいったかなあの二人」


ハルはコーヒーを一口飲んで、また思いっきり伸びをした。


翔太と出会って、7年の月日が過ぎた。今だから心から受け止めることができる。友情も愛情も。

爽子も翔太も幸せになって欲しいと心から思える自分がいることに幸せを感じる。


「――最高や!!」


ハルは清々しい顔で山からの雄大な景色を眺めた。


「さっ!俺もいい娘、見つけんとなぁ〜〜〜〜!・・ん?」


ハルは足元に何かを感じ、下に視線を送ると、ズボンの裾をくいくいっと引っ張る

タヌキの姿が・・・・・。タヌキはにっと笑った。そしてハルと見つめ合う。


「・・・・いややっタヌキなんていやや!!人間がええねん〜〜〜〜!」


山にはハルのおたけびが聞こえたとか聞こえなかったとか・・・・。



<END>








あとがき↓

なんか、最後ギャグになっちゃいました(汗)かなり短くてすみません。
ハルが爽子に電話で”彼女できた”といったのはうそでした。そうでもしないと
爽子が風早のところに行けないのが分かっていたのでした。
さて、これでこのお話も終わりです。長々ありがとうございました。
明日は何か短編をUPしますね。

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