「瞳は知っている」15 

※ 前書きから読んでください。こちら⇒前書き
※ 風早×爽子カップルではありません。オリキャラ登場します。


このお話は 「瞳は知っている」         10 11 12 13  14 の続きです。

あらすじ*大学2回生になる前に海外留学してしまった風早とすっかり疎遠になってしまった
ハルは心のどこかでずっと風早を気にしていた。
それでは以下からどうぞ↓











「瞳は知っている」 episode 15










「ただ〜いま・・・って誰もおれへんけど」



ハルは出張から戻り、部屋に入ってカバンをどんっと置いた。そして郵便受けのたまった

手紙類を手に取り、床にどさっと置いて冷蔵庫に直行する。


「ハァ〜〜〜〜疲れた。とえあえずビール」


シュワッと缶ビールを開け、ぐいっと飲み干すとテレビのスィッチをつけた。そしてつまみ

に手を伸ばしながら郵便物をあさる。請求書やちらしなどを確認していると、何か違和感を

感じてその間に挟まったものを手に取った。


「ん・・・・なんやこれ?」


そこにあったのは古ぼけた葉書だった。新しい手紙類の中で、それはあまりにも異様な

存在感があった。


「いったい何やねん?このハガキ・・・っ!」


ハルはあまりにも汚い葉書を不思議に思い、消印を探した。その前に差出人に目が

止まり、ピタッと動作が止まった。


「・・・・翔太?」


そして再び、必死で日付を探した。かなり見えにくくなっていたが、なんとか読み取る。


「・・・マジ?」


それは1年前に出された風早の留学先からのエアメイルだった。何度も転送を繰り

返され、消印が何重にもなっていた。ハルは必死で内容を読み取ろうとした。しかし、

さすがに1年も旅をした手紙は文字も薄くなっている。そして読み取れた文字・・・・。


”北海道に戻るから”


ハルは目を見開いて、葉書を見つめた。


「ウソやろ・・・・お前、彷徨ってたんや・・・・」


そしてハルは目を輝かせたと思うと、いきなりバタバタと動き出した。


「待っとれよ〜〜〜〜っ!翔太」


適当にボストンバックに衣服を詰め込んで、部屋を出る。今までの疲れが一気に吹っ飛んだ

ハルは、空港に向かってタクシーを捕まえた。


こんなきっかけをずっと待っていた気がする。



**********



北海道○○小学校―――


「How are you doing? say it everyone !」

「はうあーゆぅ〜〜」

「先生!」

「なんだ?優斗、分からない?」

「変な人が覗いてます。」

「はぁ・・・・・・っ???」


小学校の一教室で風早は教壇から生徒が指さした窓の方向を向いた。

そこには教室の窓に男の顔。その男はにっと笑って大きな声で言った。


「見ぃ〜〜〜〜つけた!」

「・・・・・・」


風早は窓から覗いている人物をすぐには認識出来ず固まった。そして子どもたちに

ピースピースなんてやってふざけている男に、ぱっと風早は表情が変わった。


「!!ハ・・ハル〜〜〜〜〜???」

「よっ!久しぶりっ!」


* * * * *



「ほんとびっくりしたよ」

「そやろ〜〜〜〜〜驚かそと思ってな。風早先生!」

「からかうなよ〜〜〜〜っ」


あははは〜〜〜っ


風早とハルは大学の時、よく通っていたレストランに行った。


「もうお酒飲めるんだね〜〜〜はい、どうぞ!」


そう言って、店長が久々の再会にと、とっておきのワインを出してくれた。


「この店にそんな洒落たもんあったん??店長」

「相変わらずだね〜〜〜〜ハルくん」

「店長もそんなに老けてなくてよかったわ」

「こらっ!」


あはは〜〜〜〜っ


二人はとりあえずワインの味に浸った。話したいことは山ほどある。その時、二人の

間に何の壁もなかった。こんなに簡単に会えるのに、どうして今まで動けなかったの

だろう・・・・ハルは不思議に思った。そして、風早も同じことを思っていた。

二人はあっという間に大学時代に引き戻された。


「・・・・そうだったんだ。これ、すげーな」


風早はそのポストカードを愛おしそうに眺めた。


「そやろっ。ほんま感動したわ。って言っても昨日の話やけどな」

「そっか・・・・。昨日か・・・・」

「・・・・心配させたな。」

「い〜よ。こうやって来てくれたじゃん!!」

「あったりまえやん・・・・親友やで!」


二人はそう言うとお互い笑い合った。言葉に出来ない想いを感じながら・・・・。


それからも風早の留学の時の話や大学時代の話など昔懐かしい味と共に盛り上がった。


* * * * *


がちゃっ


「ふわぁ〜〜〜食った!飲んだ!おっじゃましま〜〜〜す。」


それから風早の家に行って飲み直すことになり、ハルはアパートに泊めてもらうことになった。

とてもこの何年かを一日では語り明かせない。


「おっ結構きれいにしてんな」

「いきなりだから、布団ないよ。俺と一緒でいい?」

「いいでぇ〜〜〜キス未遂の仲やしな」

「げっ〜〜懐かし〜な」


わはは〜〜〜〜っ  


「・・・・・・」


それから、笑っていたハルの顔が真面目になった。


「俺、もっと翔太と大学生活送りたかった。ほんならもっと想い出あったのにな〜」


からかい気味に言いながらも寂しそうなハルの顔を見て、風早の表情が曇った。


「・・・・・」

「なんてな、今更言ってもしゃーないし、それぞれの道があるしな」

「・・・ごめん」


風早はハルに思いっきり頭を下げた。いきなりの行動にハルは目が点になった。


「な、なんやねん・・・」

「相談せずに行ってごめん」


まだ頭を上げない風早にハルはふっと口角を上げた。


「やっぱ翔太やな。」

「え?」

「俺がそのことに一番傷ついたこと分かってんやん」

「・・・・ほんとごめん」

「あの時は、翔太にとって俺はそんなもんかとやっぱ思ったわ〜」

「違う・・・違うけど・・・・」


ハルはそんな翔太をなだめるように言った。


「もう、ええねん。全部もうええねん。昔のことや」

「ハル・・・・」


ハルは風早を優しい目で見つめた。あれから6年、全てはハルの目が語っていた。


”もうええんや・・・・”


「ほらっ飲もうぜ!!」

「おうっ!!」


風早は心からの笑顔で笑った。ずっと心にあったわだかまりが消えていくのを感じる。

そして、思っていたよりずっとそれが心の傷になっていたのだと実感した。


終始、笑いながら、真剣になりながら、語りつくせない話が続いていく。とっておきな時間。


しばらく話しこんだ後、ハルがぽつりと言った言葉に風早の心臓がとび跳ねた。それは風早

の心にもう一つ大きなわだかまりになっているもの・・・。


「・・・爽子と会った?」

「え・・・?」

「まさか会ってへんの!?帰国して1年も経つのに??」


二人の間にはしばしの沈黙が走った。









あとがき↓

ハルとの友情を書きたかったんです!!な〜〜んて。ただの妄想ですけど。

明日はついに映画ですね。ドキドキ・・・早く見たいなぁ。一人萌えしたい。

それではまた遊びに来て下さい!

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