「瞳は知っている」11 

※ 前書きから読んでください。こちら⇒前書き
※ 風早×爽子カップルではありません。オリキャラ登場します。


このお話は 「瞳は知っている」         10 の続きです。

あらすじ*お互いの気持ちが同じかもしれないと思い始めていた風早は真夜中に見た風景に・・・!
それでは以下からどうぞ↓











「瞳は知っている」 episode 11








花火の後は、トランプ大会などをして一日目の夜は更けていった。

遊び疲れて眠りこけているジョーや他の友人を部屋に連れて行って寝かしたり

バタバタとしているうちに真夜中になっていた。同室のハルは帰ってこない。

まだ他の連中と騒いでいるらしい。風早は気がつくと、先に眠っていた。


どれだけ眠っていたのだろう?夜中、ぱっと目が覚めて時計のLEDを覗きこんだ。

時刻は3時。まだ寝てていいんだ・・・。と思ってまたどかっと横になる。そして、横

のベッドを見るとハルがいないことに気付いた。トイレでも行ったのだろうと、何も考

えなかった。それより何か冷たいものが飲みたくて、寝ぼけた目をごしごしっと擦って

自販機を探しに部屋を出た。そして、1Fのロビー付近まで来た時、何かこそこそっと

人の声が聞こえた。


(ん・・・?人がいる?)


風早が自販機にコインを入れようとした手が止まった。


「!」


そして、一瞬で目を伏せた。


風早は走ってその場を去った後、部屋に戻り、自分の布団に潜り込んだ。

全速力で走ったから心臓がバクバクいってる。


ドクッドクッ


そして頭まで布団をかぶり、膝小僧を抱いて丸まった。

そこで見た全ての光景を忘れるために。全てなかったかのように・・・・。



******


その頃ロビーでは―――


「・・・爽子?」


ロビーの隅のソファーではハルと爽子が向き合っていた。

爽子の頬には一滴の涙がつたう。

ハルは優しくその涙を拭った。そして不安そうに爽子を見つめた。


「キス・・・嫌やった?」


静かなロビーに二人きり、昼間の喧騒とはかけ離れた異空間が漂っていた。


「ちがう・・・ちがうよ・・・」


爽子はぶんぶんと頭を振った。


「それじゃ・・・なんで泣くん?」

「・・・・・・」

「それは嬉し泣きなんかじゃないよな?」

「・・・・・」


何も言わない爽子をハルはじっと見つめて答えを待った。爽子は必死で何かを訴え

ようとしている。でも言葉が出てこない。物音ひとつしない空間の中、沈黙の時間

が余計に長く感じる。

そんな爽子の様子を見て、ハルは一瞬切ない顔をした後ぱっと表情を変えて言った。


「はっ!な〜〜〜んてね。そんな気分の時もあるよな??」


ハルはすくっと立ち上がって、おちゃらけポーズを一つして、「寝よ」と爽子の手を

引っ張って立たせた。


「ハルくん・・・・」

「いーから!明日も海行くし」


爽子はハルに促されて、何も言えないまま部屋に向かって歩き出した。何も喋らない

ハルの背中を見つめることもできない爽子は俯いたまま歩いていた。そして、爽子の

部屋の前で立ち止まった。



「んじゃおやすみ!」


ハルは優しく微笑んだ。それは自然な笑みではなかった。爽子はそんなハルの姿を

見て、必死で想いを伝えようとした。


「あ、あのハルくんっ」

「お腹出して寝たらあかんで〜〜北海道の夏は涼しいからな」

「う、うん・・・・あのっ!」

「おやすみ、爽子」

「あっ・・おやすみ・・・」


かちゃっ


ドア一枚を隔てて、二人は背中を向けて大きなため息をついた。


*********


がちゃっ


部屋のドアが開いて、ハルが帰ってきたのが分かった。眠れずにいた俺はハルの

存在に身体を強張らせた。でも当然ハルの顔を見れるわけもなく、タヌキ寝入り

をするしかなかった。


「――なぁ、翔太。俺、爽子とずっといたいねん」

「・・・・・!」


(何?起きてるのバレてる・・・!?)


ハルは背中を向いて反応のない風早にひたすら話しかけた。


「でも・・・ずっと不安やねん。自分ばっかり好きちゃうかって・・・」


(だから、なんだっつーの。一応寝てるってば・・・・・)


「俺には爽子しかおらへん・・・」

「・・・・・」


何だろう・・・・ハルの声が切なく感じた。あの後、何かあったのだろうか。

そうだ・・・!前にハルが言っていたことがあった。”キス以上の関係にいけない”って。

もしかして、あれから・・・??

風早はハルに背を向けながら悶々と考えていた。


しばらくして、ハルの寝息が聞こえた。


がばっ!


「寝てるし・・・・」


風早はベッドに座り込んで頭を抱え込んだ。


「あ"〜〜〜〜〜〜っ」


そして、そっとハルの寝顔を見つめた。

ハルは彼女を失ったらどうなるんだろう。

ハルの幸せを願う気持ちと、それとは真逆に大きくなっていく気持ちとが複雑に絡み合い、

どんどんと風早を追いこんでいった。








あとがき↓

好きな人のキスシーンって絶対見たくないですよね。一緒に旅行に行くことによって

改めて二人の姿を見ることになり、苦しむことになる風早くんでした。それではまた

明日〜〜〜♪よければ続きを見に来て下さい。

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