「Half moon」(32)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
二人は花火の後、仙台の街を歩いていると、偶然蓮に会い・・・。3人の回です。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31 の続きです。
それではどうぞ↓















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「蓮??」

「あ・・・・・」


花火が終わって、街中を歩いていた風早は蓮を見かけて声を掛けた。蓮は明らかにまずそうな

顔をして、よっと手を上げた。

蓮は二人を先に見つけていたのだが、スルーして去ろうと思っていたのだ。


「あ・・・こんにちわ」


爽子がぺこっと頭を下げた。


「ども」


と苦笑いして、頭を軽く下げた。


『悪い!翔太。まさかこの人混みで会うなんて』


こそっと風早の耳元で言う蓮に風早はぷっと笑った。


「いいって!そんな気を使うなよ。一人?」

「ダチと飲んでた。もう帰るとこ。翔太は?」

「今から、どこか店行こうかとしてたとこ。」

「そっか、んじゃまた明日な」


風早は、すぐに去ろうとしてた蓮の首根っこをぐいっと引っ張った。


「ちょっと蓮、折角会ったんだから一緒に飲もうぜ」

「え??」


いいよね?と風早は爽子に同意を求めた。爽子は嬉しそうにコクンっと頷いた。


「いいのか?」

「当たり前だろ」


余裕だな〜なんて笑っている風早を見て思った蓮だが、後から聞くと、彼女の滞在

が長いことが分かった。分かりやすい風早を見て、やっぱり蓮はぷっと笑った。


「何笑ってるんだよ!!蓮」

「いやっ〜〜あはは」


3人は馴染みのバーに飲みに行った。ここはショットバーだが、お洒落で食事も

美味しいので、風早は爽子を連れて来てあげたかった。


「おっ風早くん。彼女??」

「はい」


ロマンスグレー風のオーナーがにやにやしながら風早に問いかけた。


「く、黒沼爽子です。よろしくお願いします」


きれいにお辞儀する彼女にオーナーは、今時いないような大和撫子だね〜と感心する

ように言った。


「かわいい彼女が来たから、一品サービスね。ゆっくりしてって」

「ありがとうございます!」


風早が言った横で、爽子はぺこぺこっと頭を下げた。

爽子は運ばれてきた料理に目を輝かせた。


「ほら、これもこれも美味しいんだよ。食べて、爽子」

「う、うん」


おいしい!!と目を輝かせてる爽子を風早は嬉しそうに見ていた。

その様子を蓮はビールを飲みながらにやにやして眺めていた。蓮の視線に気づいた

風早は、はっとしたような顔をした後、咳払いを一つした。


「ほらっ蓮も食べなよ」

「いやっ翔太、お気づかいなく」

「////////」


爽子は二人をニコニコして見ていると、蓮と視線が合った。


「あ、あの、明日よろしくお願いします!」


明日は7人で会うことになっている。爽子は蓮に頭を下げた。


「こちらこそ。そう言えば、光平と同じ部署なんだよな?」

「う、うん。田口くん元気ですか?」

「元気だよ〜〜〜新しい職場は大変そうだけどな。人材不足なんだって」

「そうなんだ・・・」


爽子は心配そうな顔をした。そんな爽子に風早は問いかけた。


「どれぐらい田口はいるの?」

「う〜ん、私達も分からなくて。ただ、田口くんのアパートは引き払ったって

 言ってた。1ヶ月では戻れないからって」

「このままずっといんじゃないの。光平」


わははは〜っ


風早と蓮は笑っていたが、爽子は少し複雑そうな顔をした。それは光平がこの出張

をあまり快く思っていないように感じたからだ。


「どうしたの?爽子」

「うん・・・なんかね、田口くん、行く時つらそうな感じがしたから」

「ふぅ〜〜ん。なんでかな。また戻れるんだからいいと思うけど・・・」


風早が言うと、蓮も同じように頷いた。

その後、風早はちょっとトイレと名残惜しそうに席を立った。


し〜〜〜ん


蓮と二人になった爽子は少し緊張した面持ちでカクテルを一口こくんと飲んだ。すると

蓮がぽつりと話し出した。


「翔太さ・・・・あんたがいれば何もいらないんだと思う」

「え・・・・」


そう言って、ビールをぐいっと飲み干した。爽子は蓮の言葉を聞き逃さないようにと

しっかりと耳を傾けた。


「・・・だから逆に危険なのかも知んねーけど」

「・・・・・?」

「あいつさ、すげー頑張ってんだ。仕事。まだ新人だからそんなに突っ走って大丈夫?

 なんて思うこともあるけど、天性のものもあるし、すげーって思うよ」


蓮はそう言った後、嬉しそうに自分を見ている爽子に気付いた。


「何?」

「あっごめんなさい!じっと見ちゃって・・・・」

「?」

「あのね・・・実はあんまりなくて・・」

「え?」


蓮はぽつりぽつりと話し出す、爽子の言葉に耳を傾けた。


「風早くんの友達に会うこと。だから・・・蓮さんは特別なんだと思った。

 すごく・・・いい友達だなぁって」


頬を染めて嬉しそうに言う爽子を、今度は反対に蓮がじっと見つめた。


「・・・?」


見られていると気付いた爽子は不思議そうに蓮を見た。すると、頬杖つきながら爽子を

見ていた蓮は少し口角を上げて言った。


「正直・・・どんな娘かと思ってた。翔太の相手って。」

「!」


す、すみません〜〜〜〜こんなで!と爽子があわあわしていると、蓮はにこっと笑って言った。


「すごく似合いだと思う。・・・まっ俺に言われても仕方ねーんだろうけど」


そう言うと蓮は軽く苦笑した。爽子はそんな蓮に瞳を揺らして言った。


「う、嬉しい・・・。すごく嬉しい。ありがとう」


そう言って、彼女は本当に嬉しそうに笑った。

風早が言っていたことがある。”真っ直ぐなのは彼女の方だ”そしてそんな彼女に憧れて

いること。蓮は何となくそれが分かったような気がした。きっと彼女の言葉には嘘がない。


「翔太の面白エピソード教えようか??」

「うわぁ〜〜〜いいのかなぁ〜」


爽子はぱぁぁと頬を染めて、嬉しそうに蓮の話を聞いていた。


風早はトイレから出てきて、思わず目の前の光景に立ちすくむ。そこには蓮と楽しそうに

笑いあっている爽子の姿があった。また、無口な蓮もいつになく楽しそうだ。


「おっ翔太〜おかえり。もう一杯いく?」

「うん・・・」

「?」


風早の様子を見て、蓮はお腹を抱えて笑いだした。


「ちょっと翔太・・分かりやすすぎだから。心配すんな」


そう言って、肩をぽんぽんっと叩いた。


「〜〜〜〜〜///////」


にやにやする蓮に心を見透かされた風早は恥ずかしそうに俯いた。

その後、二人の高校時代の話や、蓮や光平達の昔の話で盛り上がった。


「んじゃな〜」

「おう、明日な」


爽子はぺこっと頭を下げた。

そろそろお開きということになり、二人は蓮に別れを告げた。


「さてと、行こっか。―爽っ??」


風早が爽子の方に振り向くと、爽子は下にうずくまっていた。


「どうした?爽!!」


焦った風早は爽子を覗きこんだ。


「ご、ごめんなさい・・・ちょっと酔ったみたい。なんか力入らなくて・・・」

「マジで??帰れる?タクシー呼ぼうか」

「うん、大丈・・・・あっ!!」


立ち上がろうと思った爽子は、ちゃんと立てず風早に抱きつく形になった。

ごめんなさい!と見上げた爽子は目はとろんとして、風早は思わずブレーキをかけた。

アルコールに弱い爽子が酒を飲むことは少ないので、このような姿を見ることは滅多に

なかった。風早は心拍数がどんどん早くなっていくのが分かった。


爽子の色っぽい姿に今にも押し倒した気持ちをぐっと押さえ、風早はコホンッと咳払い

をして言った。


「あのさ、酒・・・あんまり飲んじゃダメだからね。俺がいないところで」

「う、うん。今日はちょっと飲みすぎてしまって・・・楽しくって」

「・・・・」


そんな爽子の発言に風早は、ぱっと自分から爽子の身体を離した。


「風早くん・・・?」

「うん。楽しそうだったね。蓮と」


少し拗ねたように言う風早に爽子は夢心地のような顔をして言った。


「風早くんとお似合いだって言われて・・・・すごく嬉しかった」

「え・・・・」


”恐れ多いけど・・・ごめんなさいでも嬉しくって・・・”なんて恥ずかしそうに言いながら

両手を胸の前で組んで、目をキラキラさせて嬉しそうな爽子。そんな爽子の様子を

風早はぼーっと見つめた。


(うわっはずかし〜〜〜〜//////)


また風早は、嫉妬で一杯になっていた自分自身に恥ずかしくなり、頭をくしゃくしゃっとした。


「と、とにかく〜〜〜っ!人前であんまり飲まないでね」

「ご、ごめんね。ふらついて。でももう大丈――っ」


風早はそう言うと、爽子の腰を抱いて、いきなり唇を奪った。


「んっ・・・風早くん、人が・・・ん!」


恥ずかしい爽子にお構いなしに、風早は爽子の口を貪るようにキスを重ねた。

やっと唇を離された爽子ははぁ〜っと大きく息を吐いた。そして、恥ずかしそうに

風早を見上げた。風早は熱い目で爽子を見つめて言った。


「だって、飲んだ爽子・・・色っぽすぎるから/////」

「//////」

「だから、飲んじゃだめだからね!」


風早はぷぅーっと膨れたように言った後、爽子に優しく微笑んで手をそっと差し出した。


「それじゃ、いこっか」

「う、うん/////」


(うわぁ〜〜〜ドキドキが止まんないよ・・・)


風早のいきなりの行動に爽子は酒を帯びて熱くなっている身体がさらに熱くなるのを

感じた。予測できない風早の行動にいつも自分の中の女の部分が刺激される。


爽子がそっと風早に視線を移すと、同じように頬を染めてこちらを見ている風早がいた。

ぎゅっと力を込める手から愛しさが伝わる。

”好き・・・・好きでたまらないの”


夢のような2日目の甘い夜は更けていく。







あとがき↓

なかなか、七夕祭りの回が終わりません。二人がいると甘甘にしたくなっちゃって(笑)
明日は別マ発売日!感想をちょこっと書きますかね〜〜!ああ・・・楽しみ♪
このお話は七夕祭り2日目のところでちょっと一休みする予定。もう少しだ!!
それではまた遊びに来てもらえると嬉しいです。

Half moon 33