「Half moon」(35)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
7人で行った七夕祭り。風早は混雑している人ごみの中、光平が爽子を抱きしめている
姿を見てしまい・・・・。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 の続きです。
それではどうぞ↓















* * * * *


「ふぇ〜〜〜すごかったね!!もう、浴衣ボロボロだよ・・・」

「でも、みんな無事に会えて良かったじゃん」


あの後、目的地のレストランに着いた7人はそれぞれ身なりを整えて、なんとか

夕食にありつくことができた。


「翔太、どうした?」

「・・・・・・・」

「風早くん??」

「・・・っえ?」


蓮と爽子に呼び掛けられ、やっと現実に戻ったように二人に目を向けた風早。さっきから

ぼーっとしている風早を皆は不思議そうに見た。


「風早ももみくちゃにされた?」


光平に聞かれ、風早は目線を光平に移したまま黙り込んだ。


「風早?」

「あっああ・・まぁな。すごいな仙台七夕祭りは・・・ははっ」

「・・・・・」


光平はそんな風早の変な様子に気付きながらも、それ以上触れず皆と楽しく喋っていた。

それぞれ夕食を堪能した頃、辺りはすっかり日が落ちて真っ暗になっていた。


「あ〜〜〜〜おいしかった!!」


店の外に出て昌が叫んだ。他の皆も満足そうに店から出てきた。


「これから、どうしよっか」

「折角だからもう少し街を歩こうよ」

「賛成〜〜〜〜!!」

「爽子ちゃんも大丈夫??」

「う、うん」

「やった〜〜〜〜!!」


太陽と昌が誘ってくれると、爽子は嬉しそうに答えた。皆の後ろで風早もついて歩き出した。

前を歩く光平に目を注ぐ。

皆と楽しそうに喋りながらもちらちらっと熱い視線を爽子に送っていることに気付いた。

今までも心のどこかで不安を感じていた。爽子を好きになる男は今までもいた。でも・・・・。

風早は自分が爽子の側にいない生活の今、動揺を隠しきれなかった。


暗い顔をして歩いている風早の横にそっと沙穂が並んだ。


「どうしたの?風早。なんか元気ない」

「あっああ・・・大丈夫だよ。ありがとな」


沙穂はいつも通りの笑顔を見せた風早に頬を赤くした。前では爽子が楽しそうに昌達と話し

ている。その姿を横目で見ながら言った。


「何か悩みがあったら私でよければ聞くよ」

「サンキュー。何かあったらよろしくなっ」

「うん・・・でもっ「―翔太!」」


沙穂の言葉を遮るように蓮が声をかけた。


「皆に付き合うことないからもう帰ったら?」

「へっ?」


風早が不思議そうな顔をしていると、蓮はにんまり笑って風早の耳元で言った。


『・・・早く二人になりたいだろ?』

「////////////」


「で、でも、今日は一日大丈夫なんだよね?風早?」


そんな蓮の言葉に沙穂はいらっとした様子で言うと、”爽子に聞いてみるね”と嬉しそうに

駆け寄って行った。それを面白くなさそうに見送る沙穂の横で蓮はぼそっと言った。


「・・・・だめだよ。あいつは」

「え?」


沙穂は驚いたように蓮を見た。蓮はそれだけ言うと、さっと前を歩いて行った。沙穂はぎゅっと

拳を握りしめて、蓮の背中をきっと睨んだ。


(・・・そんなこと・・・蓮から言われる筋合いない・・・)


「ごめん。今日はもう帰るわ」

「き、今日はありがとう・・・」


風早と爽子が頭を下げると、皆は残念そうにしながらも、二人を冷やかして”またな〜〜”と

手を振った。沙穂と光平は複雑そうに二人の後ろ姿を見つめた。


そして、5人がぞろぞろと歩き出すと光平は自分の手にそっと目線を下ろした。

ずっとあの場面が頭から離れない。光平はまた、爽子を抱きしめた感覚を思い出した。


”『・・俺がいるから・・・俺が守るから』”


爽子の柔らかい身体の感覚だけが残る。ずっと触れたかった。そして触れたらもっともっと

触れたくなるなんて・・・・。こんな想い初めてだ。

光平は事故とは言え、爽子を抱きしめられたことに興奮を覚えていた。そして外から守るよ

うに抱きしめていると、彼女の白い肌が赤く染まった。恥ずかしいだけで自分に何の感情も

持っていないことは分かっている。でもそんな姿を見てしまったら・・・・・止められなかった。


その後、風早と目が合った。大勢の人の中、なぜかあいつの視線だけは分かった。でも彼女は離

せなかった。人と争うとか奪略とか無縁の俺が、意志表示するかのように彼女を抱きしめ続けた。


”もう絶対引けない・・・。”


本気でそう思った夜だった。



「・・・・・・・」


そして・・・爽子の後ろ姿を見つめている光平を昌はずっと見ていた。



************



「風早くん・・・見て」

「えっ・・・」


二人は皆と別れて帰り道を歩いていた。すると爽子が夜空を指さして言った。


「ほら・・・今夜はハーフムーンだね」

「あ・・・・・」


風早は嬉しそうに微笑む爽子の横顔を見た。


”「爽子がいないと。ずっとハーフムーンなんだ。一緒にいられてやっとフルムーンに

  なれるんだよ」”


自分が言った言葉を思い出した。きっと爽子もその言葉を思い出し微笑んでいる。

風早は爽子をぎゅっと抱きしめた。


「か、かぜはや・・・くん?」


返事のない風早に爽子は不安になり、顔を見ようとしても、きつく抱きしめられ身動きが

取れない。


「俺だけの爽子だからっ・・・」


そう言うと、風早はばっと爽子の身体を離し、熱い目で爽子を見つめて言った。


「このきれいな髪も・・・・」


爽子の髪をさらっと優しく触り、


「このきれいな肌も・・・・」


爽子のほっぺを優しく包み込み、


「このきれいな瞳も・・・・」


爽子の目をじっと見つめて、


「このきれいな唇も・・・・」


そう言うと、風早はそっと爽子の唇を塞いだ。それはいつまでも離れようとせず、

爽子は息が出来ず、顔が真っ赤になってきた。


「・・・んっ・・・風早くっ」


その顔を見て、風早はせつなそうにまた角度を変えてキスを繰り返した。


「・・・はあっ・・・・」


やっと口を離してくれた風早に少しほっとしたように爽子は大きく息を吐いた。


「・・・ごめん」


風早は頭を垂れたまま謝った。そしてずっと顔を上げずにいる風早の姿を見て、爽子は

そっと頬に手を伸ばした。


「・・・どうして謝るの?う、嬉しいよ/////」


風早は小さな震える手が自分のほっぺに当てられると、驚いた顔をして爽子を見た。

爽子は紅潮した顔で、少し躊躇した後、背伸びをして風早の頬にそっと優しく口づけをした。


「う、嬉しいから・・・・」


恥ずかしそうに真っ赤になって自分を見る爽子を茫然と見つめた後、風早はぎゅっと再度

彼女を包み込んだ。


「ずっ・・・ずり〜〜〜///////」

「え?え?」


焦ってばたばたしている彼女をさらにぎゅっと強く抱きしめた。


「顔・・・見ないどいて」

「あっ・・・はい/////」


(・・俺って単純//////これだけのことで元気になるなんて・・・)


風早は爽子にもう一度キスを落として、抱きしめながら夜空を眺めた。彼女がいるだけで、

幸せな気持ちで一杯になる。

絶対、離さない。ずっと俺の宝物だから・・・・・。

風早は夜空のハーフムーンを見て、切なそうに微笑んだ。









あとがき↓

またこの話開始します。私の中では終わりが見えてきました。でもまだまだ長くなりそう。
ある程度、話を進めたらもう一つの連載を終わりにしたいのでそちらも進めますね。後、
短編も入れたりしながら。「Half moon」はなぜかさらさら書けちゃうので、こればかり
進んじゃうんですね。みなさんの中には”これだけ早く進めて欲しい”という話があるか
もしれませんが、更新頻度は悪くない方だと思いますので(今のところは)少し、お待ち
下さいね。後、今まである短編の続きとか書いて欲しいのがあったら言ってください。
それではまたお暇でしたら覗いてやってください。

Half moon 36