「Half moon」(31)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
仙台七夕祭りに出かけた二人。風早と爽子の心情が入れ替わるように入っていて
分かりにくくてすみません!
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 の続きです。
それではどうぞ↓















七夕祭りの初日、仙台の街は多くの人でごった返していた。前夜祭は花火がある。明日は

皆と一緒に祭りに行くことになった二人は、2日間は二人きりで七夕祭りを楽しむことに

なっていた。


(っつーか、ずっと二人で居たいんだけど・・・・)


浴衣に着替えている爽子を待っている間、風早はそんなことを考えては"修行、修行”と唱え

ていた。爽子と付き合って6年。何年たってもちょっとしたことで嫉妬してしまう俺。

爽子本人が思っている程、世の中の評価は低くないんだっていつも訴えるのだけど分かって

もらえない。どんどんきれいになる彼女を宝箱の中に閉じ込めて俺のものだけにしたいって

時々本気で思う。俺以外の男に笑いかけないでとか、近くに寄らないでとか・・・そんなこと

考えてる。そんな俺を彼女はまだ”爽やか”なんて言う。純粋に人と接することを喜ぶ彼女を

本心から受け入れてあげられないようなそんな小さな男なんだよ。


かちゃっ


「お、お待たせしました」

「!」


浴衣に着替えた爽子が恥ずかしそうに部屋に出てきた。

その姿を見て、風早は真っ赤になった顔を手で覆って隠した。


「風早くん・・・?」


変かな〜?なんてあわあわしている彼女に、風早は気を取り直して、真っ直ぐ見て言った。


「きれいだよ。爽子」

「あ・・ありがとう////」


爽子の浴衣姿を見たのは初めてじゃないけど、見るたびに新鮮で、心拍数が上がる。

ほら・・・こんな彼女、やっぱり見せたくなくなるんだ。

ドクン、ドクン

髪を上げて、白いうなじを見せる色っぽい爽子を風早は眩しそうに眺めた。


「それじゃ、行こっか。花火始まるよ」

「うん!」


当たり前のように、恋人繋ぎをする二人。爽子の指には風早にもらった指輪が輝いている。


「浴衣に指輪って似合わないんだろうけど、外したくなくて・・・・」


恥ずかしそうに言う彼女がたまらなく愛しくて、風早は目を細めて微笑んだ。

街はすごい人手で、手を繋いでいないと、はぐれそうになる。


「爽子、大丈夫??」

「う、うん。すごいね〜!!」

「ちょっと我慢してね。蓮が花火を見る、穴場を教えてくれたから」


爽子は風早に引っ張られながら、男らしい手を頼もしく思った。

”ずっと離さないで欲しい”

そんなことを思う自分は欲張りだろうか。今でも当たり前だとは思えない。彼の側でいられる

現実。爽子は頬を染めながら、しっかりと繋がれた風早の手の体温を感じた。そして、幸せな

時間を実感して目に薄ら涙を浮かべた。


仙台の街のあちこちにきれいな七夕飾りと音楽が流れていた。仙台は学生の街だと聞く。

様々な若いミュージシャン達が七夕祭りを彩っていた。


ヒュ〜〜〜ドンッ


「あ〜〜〜上がった!」

「きれい・・・」


二人は穴場と言われた河原に座っていた。風早は花火で照らされる彼女の横顔に思わず

見とれる。”きれいなのは爽子だ・・・。”

風早も、二人でいる今に幸せを噛みしめていた。会えないから余計に一分一秒が貴重に思う。


「俺って・・・幸せな方だよな。」

「え?」


爽子は風早の言葉にそっと耳を傾けた。


「だって、織姫と彦星は一年に一回しか会えないんだよな。俺、そんなの耐えられるかな」


真剣に言う風早の横顔を見とれるように見ていた爽子は同じことを思った。こうやって会える

だけで幸せなのに、もっと近づきたいとか、触れたいとか・・・・そんなことを思っている。


「私も・・・。どんどん欲張りになっちゃって・・・・織姫と彦星に怒られちゃうね」


ふふっと笑う爽子のほっぺに風早はそっと自分の手を添えた。


「・・・それは俺だよ。爽子が側に居れば、いつも触れたくなる・・・・」


ヒュ〜〜ドンッパッ


見つめ合う二人を明るい花火の光が照らした。


風早くんが私と同じ気持ちを言った。その気持ちを伝えたいのに、彼の熱い瞳を見ていると

何も言えなくなった。ただ聞こえるのは、妙にリアルな自分の心臓の音。


ドクンドクンッ


そして、感じる彼の唇の感覚。すごく優しいキス。ああ・・・満たされていく。


「ははっ・・・また泣いてる」

「ご、ごめんなさいっ。幸せで・・・・」

「俺も・・・。俺、ずっと爽子に恋するんだろうなぁ〜例え一年に一回しか会えなくても」


そう言って、風早は照れたように微笑んで爽子の涙を拭った。


「わ、私もだよ!!ずっと風早くんが・・・・」


爽子は風早の目を見て、言葉に詰まった。とても哀しい目をしていたから。彼は時々そんな目をする。

その目を見ると、すごく切なくなる。


「いや・・・俺の方が絶対好きだから・・・」


それ以上何も言えなかった。好きすぎて苦しい。風早くんを知ってから覚えた感情。


ヒューッパン


切なそうな表情をしていた風早は切り替えたように明るい顔をして言った。


「これから仙台で、いっぱい楽しい想い出作ろうな!!」

「うん・・・作りたい!今日も・・本当にありがとう。」


嬉しそうに無邪気な顔で花火を眺めている爽子を見て、風早は思った。

好きすぎて辛い・・・って時々思う。好きすぎて、彼女をがんじがらめにしてしまう。

彼女が他の誰かを好きになってしまったら俺はどうなるんだろう・・・・。


風早はまた哀しい目をして、大輪の花火を見上げた。









あとがき↓

風早は真っすぐなだけに、狂気も合わせ持っていると思います。大切なものは一つですから
それがなくなった時めちゃくちゃになりそうで・・・。そういうのもこのお話の筋になって
いく予定。(そのためにも沙穂ちゃんはいるんですよ〜)それではまた遊びに来て下さい。

Half moon 32