「Half moon」(26)
社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
二人きりの空間に感情のまま爽子に手を伸ばした光平は?風早目線、光平目線。
それぞれの想いです。
こちらは「Half moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 の続きです。
それではどうぞ↓
ピロピロ〜〜〜〜ン ♪
その時、大きな携帯音が二人の沈黙を破った。
いきなりの携帯音に光平はピクッと指先が動いた。そしてさっと手を引っ込めた。
その時、彼女まで5センチというところだった。
「ご、ごめん・・・私の携帯・・・」
「あっいいよ、出て」
光平は一瞬で酔いが覚めるのを感じた。何をしようとしていたのか。光平は自分の手を眺めたまま、
ぼーっとしていた。心臓の鼓動は隠しきれないほど早くなっている。
「あっ、風早くん?」
光平はその声に再びハッとする。二人の世界から一気に戻されたように。
「あ・・・うん、うん。まだ会社。あのね、田口くんがいるんだよ」
彼女は頬をほんのり赤く染めながら、嬉しそうに話している。
俺、何をしようとしていたんだろう。完全に理性が吹っ飛んでいた気がする。
光平は自分で自分が分からなくなった。今までブレーキをかけられなかった恋はなかった。
「え?」
風早くんが話したいって。と携帯を渡された俺は、思わず目が点になった。
(ちょっ・・・心の準備が・・・)
「あっ、か、風早?」
楽しそうに話す二人を爽子は嬉しそうに眺めていた。
「―んじゃ、うん、黒沼さんに代わるな」
光平は爽子に携帯を渡した後、メモを書いて、そっと喋っている爽子に見せた。
「えっ??田口くん??」
「い〜〜から!!それじゃ行くね」
メモには”今日はありがとう。先、帰るね”と書いてあった。
爽子はどっちつかずであわわ〜としながらすでに出口で手を振っている田口を会釈して
見送った。
「ごめんねっ。風早くん」
『田口・・・帰ったの?』
「うん」
『んじゃ、そこに爽子一人?』
「うん」
『やっと、二人きりになれた・・・っつーか、ずっと田口と二人きりだったんだ?』
「あ・・・うん」
『あ"〜〜〜〜〜〜っ』
「えっと??」
『あのさ・・・単刀直入に聞いていい?』
「うん?」
『田口と二人になることって・・・結構あんの?』
「え〜〜〜〜〜〜ないよっ。今日、初めてかな」
『あっそうなんだ〜〜〜!!』
明らかに明るい声になった風早に爽子も思わずふっと表情が緩む。
"俺、爽子が思っているよりずっと独占欲強いから”
そう言われたことがある。風早くんに嫌われたくない。いつもそう思っていた。
だから変な誤解なんかさせたくない。離れているから特に思う。
「もしかして、や・・・きもち・・妬いてくれた??/////」
『・・・それ、聞きますか?////』
「ご、ごめんなさい!!図々しく・・・・!!」
慌てて爽子がそう言うと、電話越しで大笑いが聞こえる。
「???」
『まだそんなこと言うの?いつも言ってるのに・・・・俺は爽子のものなんだから。
どんだけ図々しくてもいいのっ!!』
「風早くん・・・・」
『はい。妬いてますよ。爽子の周りにいるものならなんだって。虫だって・・・』
「やだっ・・・風早くんったら・・・」
あははは〜〜〜〜っ
爽子は電話を切った後、先に帰った光平に申し訳ない気分になった。折角の誕生日を
中途半端に終わらせてしまったことに。自分が電話に夢中になっていたことに。
火照った顔をぱたぱたと手で扇ぎ、ケーキの残りを片付け始めた。
一方電話を切った風早氏―――
「ふぅ〜〜っ」
会社を出たところのベンチで話していた風早は、ゆっくりと自転車を漕ぎだした。
二人が仕事をしている風景が頭をよぎる。思ったより二人は仲がいいのだろうか。
田口に彼女はいないのかな・・・・。まさか、爽子を??
そんなことばかり浮かんでくる頭をぶんぶんっと振った。気にならないって言ったら
完全に嘘になる。でも彼女をがんじがらめにだけはしたくない。必死に取り繕って
いる自分自身。でも全部を見せるわけにはいかない。
「あ"〜〜〜〜〜〜っどうして俺、こんなだろ。異常だな。爽子のことになると・・・」
全てを振り切るように自転車を思いっきり漕いで家路に向かった。
風早の不安が現実になっていくことをこの時は、まだ知らない。
**************
後に引けないぐらい、好きになっていた。
・・・・それが怖かったんだ。
光平は会社を出た後、会社のビルを見上げた。
あれ以上見てられなかった。風早の電話に頬を染めながら嬉しそうに話す彼女を。
きっと罰だ。俺の不純な下心を風早に気付かれたかもしれない。
これ以上、アクセルを踏みだすわけにはいかない。
でも・・・・こんなにつらいなんて。こんなに好きになっていたなんて・・・・。
光平は、今まで必死で押さえていた感情が溢れてくるのを感じた。そして感情とともに、
頬に伝った涙をさっと拭った。まるで月からも隠すように・・・。
あとがき↓
お決まりの邪魔が入るパターンでした。すっかり本気になってしまった光平くん。どうなって
いくのでしょうか。爽子の魅力を知ってしまうと、絶対好きになった人は本気になるような気
がします。風早くんヒヤヒヤですね〜。でもこのお話は爽子の独占欲も書いてみたいのですが。
それでは〜!2,3日更新できないかもしれませんが、続きを楽しみにしてもらえたら嬉しい
です。