「Half moon」(27)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
爽子のいない時に仙台に行った光平。新しい生活が始まった。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 の続きです。
それではどうぞ↓
















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「あれ?田口くんは?」

「え〜〜?知らなかったの〜爽ちゃん。昨日仙台に行ったよ」

「え・・・・?」


爽子が出勤すると、明日仙台に長期出張だと思っていた光平のデスクはきれいに整頓

されていた。昨日は休日の振休で前から爽子の休みは決まっていた。


「・・・・・」

「勘違いだったんだね。メールでもしてやりなよ(アイツ絶対喜ぶよきっと)」


友香はイシシ〜〜と笑って朝のメールチェックを行っていた。


確か、明日だと田口くんは私に言っていたのに。爽子は首を傾げた。


「あ・・・田口くんのメールアドレス知らなくて・・・。」

「えっそうなの?んじゃ教えてあげるよ。赤外線で送るね」

「い・・いのかな?勝手に聞いて」

「大丈夫、大丈夫!ってか、爽ちゃん、たぐっちゃんと交換してなかったんだ??」

「うん・・・それじゃ、お願いします」


きちんと挨拶をできなかったことを悔やんだ爽子は、友香から光平のメアドを聞いた。



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―仙台―



仙台と言っても夏は暑く、外を少し歩くだけで汗がじわりと溢れだす。焼けつく太陽に手を

かざしながら光平は仙台駅から早速会社に向かった。また新たな人間関係だ。会社に

着くと、今度の上司が社内をいろいろ案内してくれた。


「いや〜っ田口くんだっけ??いきなりの異動、申し訳ないね。でも新人と言っても

 期待してるよ。君の上司の一押しだしな」

「え??」


ありえない・・・いつも上司には怒られてばっかりなのに。それに出張だろ?


「まぁ。夏休み中って言われてるけど、実は次が入るまでは居てもらうことになりそうだ」

「へ?」


(・・・っていつになるんだよ。もし次が入らなかったら、ここにずっと?)


1ヶ月ぐらいと言われていたので、北海道のアパートはそのままにしている。それは

会社がなんとかしてくれるだろう。でも・・・・・まいっか。と光平は思った。北海道に

何も残すものはないのだ。このまま仙台に帰ったとしても何の問題もない。3ヶ月前

に戻ったと思えばいいのだ。


光平は仙台に来ることを友達関係では蓮だけには伝えていた。また、あの仲間たちと

遊べると思ったら嬉しい。それに実家はあるし、何も困らない。

光平はこの日、顔見せだけのため、荷物整理をしてすぐに退社した。



Plululul〜〜♪


会社を出たところで、光平の携帯音が鳴った。素早くカバンから取り出して携帯を見る。


「ん?誰だ?このアドレス?」


ピッピッ


「!」


光平は中身を見ると、驚いたように目を見開いた。それは黒沼爽子からのメールだった。


”田口くんへ  友香ちゃんからアドレス聞きました。勝手にすみません。それから、挨拶
 できずにすみませんでした。 すっかり明日と勘違いしてしまい・・・。 どうぞ元気で。

 また仙台に行った時に会えるのを楽しみにしています。   黒沼爽子”


「・・・んだよ。あえてメアド聞かなかったのに」


それに、彼女だけに出発の日を一日遅く伝えていた。


光平は青空を見て大きくため息をついたあと、パカっと携帯を閉じた。



「田口?」


呼ばれた声にぱっと振りかえった。目の前の人物に思わず動揺した。そんな必要ないのに。


「風早?」

「あれ?なんで?」


仙台のビジネス街で風早はスーツ姿で汗を拭って、爽やかな笑顔で言った。


「あ〜〜実は・・っていうか、風早仕事中?」

「うん。でもそろそろ昼にしようかなって」

「もう2時なのにな。お疲れ!つらいよな〜営業って」

「そっかぁ〜〜〜田口もだもんな」


光平は後の予定もなかったので、風早の昼に付き合うことにした。二人は近くの

ファーストフードに入った。


「え??こっちの会社に長期出張??マジで」

「そうなんだよ〜〜〜なんか、こっちの支社の同じ部署の人が大量辞めたとかでさ〜」

「へぇ〜そんなことあるんだな。でもこれから一緒に遊べるな」

「ほんと。よろしくな〜」


風早もよろしく〜と笑った後、腹減った!と大きなハンバーガーにかぶりついた。


「―?何?」


光平がじっと見つめていることに気付いた風早は大きな口を開けたまま止まった。


「いや。一人暮らしだろ?こんなもんばっか食べてんのかなって・・・女か俺!!」


そう言って、自分の言ったことに照れている光平に風早はぷっと笑った。


「いちおね・・・なるべくジャンクは避けようと思ってるんだけど、難しいよね。好きだし。

 でも簡単なものは家で作ろうと頑張ってるけど。田口は?」

「へぇ〜俺は、全くだめかな。」

「それじゃよかったな。実家に帰るんだろ?」

「そーそーなんとか今のうちに栄養つけとくよ。」


ははは〜っ


「黒沼さん・・・料理上手いもんな。将来的には問題ないじゃん」

「え・・・。料理上手いの知ってんだ?」


風早はまたピタッと行動が止まった。


「いやっ、たまたまケーキをもらったことあってさ・・・」

「あっそうなんだ。・・・」


そんな風早の姿をじっと見て光平は言った。


「もしかして・・・風早ってすっげー独占欲強い?」

「え!?/////」


図星とばかりに風早は顔を真っ赤にさせた。


「あはは〜大丈夫だよ。俺はライバルにならないから」

「・・・・。田口、彼女いないの?」

「あ〜今はいない。とにかく、心配しないでいいよ。俺、修羅場とか

 絶対嫌なタイプだから」


そう言って光平は軽く笑ってジュースを啜った。そんな光平を風早は無言で見つめた。


「今日、早速飲み会参加するんだけど、風早来る?」

「あ・・・えと、今日は仕事が終わりそうにないから不参加かな」

「そっか、残念。蓮より忙しそうだな」

「まぁ、蓮とは部署が違うしね」

「建築の勉強もしてんだよな。蓮が言ってた」

「あ・・・まぁ。興味があるから」


風早の目は仕事に対する情熱が感じられた。風早はきっと何でも一生懸命な気がした。

彼女がいるからかな・・・と感覚的に思った。


彼女は仙台に来て、時々自分とも会うことになるだろう。その時、この二人を微笑ましく

見ることができるのだろうか。区切りをつけたはずの想いは、知らない間にどんどん加速

していた、。そして、後に引けないぐらいの想いだと気づいてしまった。

でも・・・・引くしかないのだ。


光平は風早と話しながら、もう側にいない彼女の影を思い浮かべた。








あとがき↓

恋敵じゃなかったら絶対いい友達になれたはずなのに。って光平側の想いでした。でも光平
の性格設定は自分を押し殺す方なので我慢しますよ〜。爽子が来たらやばいけど〜。
また2日ぐらい更新できないと思います。すみません。いつも来て下さる方ありがとうござ
います。とりあえず仙台七夕祭りぐらいまではこのお話を更新しますね。その後は他のものも
ちょこちょこっと・・・・。暇つぶしになれば嬉しいです。

Half moon 28