「Half moon」(63)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

光平は蓮に「ちゃんと真っ直ぐ見れる恋愛しろよ」と言われ、悩んだ末、動いた先は?

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それではどうぞ↓




















**********



光平出発の日―――


光平は仙台空港に向かう準備をしていた。フライトまでは十分な時間が合った。


「・・・・・」


全てを終えた光平は何もせずに一点を見つめていた。


”『真っ直ぐ見れる恋愛しろよ・・・』”


彼女を好きになってからずっと自問自答している。こんなこと世の中にいっぱいだと思う

反面、人間として自分自身がどうなのかと。心のどこかで背徳的な感情を持ちながらも

止められない自分。

蓮が言ったことの本当の意味は分かってる。どこかで引っかかっていた夏の日の出来事。

人を好きになるのに理由なんてない。でもこのままでは真っ直ぐ進むことはできない。


目を瞑ると浮かんでくる彼女の笑顔。純粋な瞳。抱きしめた柔らかい感覚。

不思議なほど想いだけが募っていった。今までの恋なんてただの思い込みだったのだと

実感する。そんな人に出会えたのだから・・・・。


「・・・・・」


光平はしばらく考え込んだ後、決心したように顔を上げ、カバンから携帯を取り出した。


「−もしもし・・・蓮?」



* * * *



カランコロンッ



店のドアが開いた音にすぐに反応した光平はバッと顔を上げた。そして戸口を見つめる。

そして入ってきた人物を確認するとドクンッと心臓が大きく脈打つのを感じた。その人物

は光平を確認するとゆっくりと近づいてきた。


「・・・・蓮から連絡貰った。」

「悪いな。仕事の休憩時間に」


光平は蓮に風早を呼び出してもらうように頼んだのだ。

風早はじっと光平を見つめた後、目の前に腰を下ろした。二人の間には緊張感が漂う。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


初めて風早に会った時、自分の想いを必死で引っ込めようと思った。今なら止められると。

でも彼女に会えば会うほど加速していった。この想いはもう引くことなんかできない。

光平は目の前の風早の様子を伺った。


虚ろな目で自分を見つめる風早は何かを悟っているのか、いつもの明るい雰囲気は感じ

られなかった。明らかに以前はなかった自分に対しての逆風を感じた。

やっぱ・・・気づいているのか?


「今日だよな?フライト」

「うん・・・この後行く」


そして、また二人の間には沈黙が続いた。光平は風早をまじまじと見つめた。

彼女の好きな男。高校からの彼女を知っている奴。そして蓮の信頼する奴。そして自分と

同じ想いを持っている男・・・・。


「風早さ・・・黒沼さんとなんかあった?」

「!」


明らかに風早の目が変わった。


「・・・なんで?」

「いや・・・なんか以前の風早じゃない気がするから」

「・・・・・ははっ以前の俺ってどんなの?」

「・・・・・」


光平は風早の言葉に考え込んでしまった。確かに会ったのも数えるほどだ。だけど

会った時思った。なんて素直な目なんだろうって。そしてその目でなんて彼女を愛おし

そうに見るのだろうって・・・。


暫く二人の間に沈黙が流れた。重い空気の中、光平は決心したように顔を上げた。


「俺・・・何も言わずに行こうかと思ったけど・・・やっぱりフェアじゃないから、

 ちゃんと伝えてから行くよ」


風早は光平を見ていた目に力を入れた。


「あの時・・・・黒沼さんが帰る前の日のことだけど・・俺の携帯から掛けた時・・・。本当に

 偶然会ったんだ」


光平はそう言うと複雑そうな表情を浮かべた。風早はそんな光平をじっと見ていた。


「俺・・・黒沼さんが好きだよ」


俺はこの時正直、風早がどう出るのか予想できなかった。殴られるかもしれない。でも

真っ直ぐ見るとか人としてどうとか・・・そんなことよりずっと心に引っかかっていたもの。


”これ以上、風早の存在に怯えるのはごめんだ・・・”


そんな俺は弱い人間だと分かっている。


「・・・・・」


光平は風早の言葉を待っていた。空気は重いというより緊張感に溢れていた。唾を飲み

込む音さえ聞こえるほどの緊張感。


かなりの時間が経過したように感じた。しばらくした後、風早が重い口を開いた。


「・・・・七夕祭りの時・・・・気付いた。爽子を抱きしめてる田口を見たから」

「・・・・」


光平は表情を固くして風早からの言葉を聞いていた。風早はそこまで言うと、身体を

強張らせて何かを堪えているかのように言った。


「そんなことっ・・・そんなこと言葉に出すのも嫌だけど・・・・触るな!!って言いたい

 けど・・・・っ」


風早はそのまま言葉を飲み込んだまま、また黙り込んでしまった。

光平は目の前のつらい表情をしている風早をただ見つめた。あの時、風早に見られてい

たことは気付いていた。でもなぜ何も言ってこないのか?ずっと光平は疑問だった。


「なんで?・・・何で見てたのに、何も言ってこなかったんだよ?」

「・・・・・」

「俺・・・風早がそんなんじゃ、マジ止めないよ?」

「!」


風早はキッと光平を睨んだ。そして、悔しさを噛みしめるように俯いて言った。風早の

手は強く握りすぎて真っ赤になっていた。


「俺に・・・・止める権利はないよ。決めるのは爽子だから。」


そんな風早を光平は呆気に取られて見ていた。

風早の考えていることがまるで読めなかった。


「はっ・・・えらく自信あるんだなっ」


光平が少し皮肉めいて言うが、風早は全く気にせず続けた。


「・・・・爽子は誰のものでもないから。それに・・・」

「それに?」


風早は今度はしっかりとした瞳を光平に向けて言った。


「田口は本気なんだろ?」

「・・・・・」


風早の鋭い目に光平はどくんと脈が鳴った。


「引けないから今、俺の前にいるんだろ?」

「・・・・・・」


光平は返事をせずに真っ直ぐ風早を見た。その目を受けるように風早が寂しそうな目を

して言った。


「・・・・選ぶのは爽子だから・・・・だけど」

「だけど・・・?」


聞き返した光平は風早の目を見てまたどくんと心臓が動く。風早の目は鋭かった。


「もし、彼女を傷つけることがあったなら・・・・絶対に許さない」

「・・・・・」



カランコロンッ



「・・・・・何言ってんだよ」


光平は分からなかった。あれだけ彼女一筋の男から出る言葉とは思えなかった。

でもあの鋭い目は何を言いたいのか。


光平はすっきりしない気持ちを抱えながら、風早が出て行った店のドアをいつまでも

眺めていた。











あとがき↓

今の月9の春馬くん・・・・この話の風早と重なるんですけど・・・(笑)風早も絶対
言い訳とかしない気がする。バカ正直すぎるぐらいな気が。私的には春馬くんの
もっと自我が強いのが風早くんっぽいんですけど。でも結構かぶります。
それでは次回は北海道に舞台が移ります。また遊びに来てください〜〜〜♪

Half moon 64