「Half moon」(7)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
飲み会の途中に電話が鳴った爽子は?前半は風早と爽子、後半は沙穂と
昌の沙穂目線でどうぞ!
こちらはHalf moon      の続きです。
それではどうぞ↓



















「え・・・飲み会?」


爽子は店の外に出て、風早の電話に出た。


「う、うん・・・風早くんは?」

「家だよ・・・」


風早は見えない爽子の生活に色々な想像をしてしまう。人一倍独占欲が

強く、自己中なのは自覚している。だから必死で押さえる感情。


「男も・・・いる?」

「あ・・・同期会だから・・・」


するとしばらくの沈黙の後、「あ"〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」と発狂する

声が聞こえた。


「か、風早くん??」

「ううん、何でもないんだ。楽しんでる?」

「うん・・・。皆さん、とても良くしてくれて・・」

「よかった!!」


爽子には、今の風早の表情が安易に想像できた。そして脳裏に浮かんだ

笑顔にきゅんとくる。


「今、大丈夫なの?」

「うん・・・外にいるから大丈夫だよ」


電話口でしか感じられないお互いにもどかしさを感じながらも、一日一回の

大切な時間に風早は自分の独占欲を引っ込めた。自分のそんな小さな感情で

この時間を潰したくないからだ。毎日、お互いの生活の話しをする。爽子の

小さな感動がいじらしくなる。いつも一生懸命な彼女を見るたびに、沢山の

勇気をもらった。ずっと出会った時からそうだった。


そんなことを考えていた時、電話から彼女の声がいきなり聞こえなくなった。


「爽子?」

「っ・・・・うっ」

「泣いてるの?どうした!?」


突然、泣き声が聞こえて風早は焦った。もしかして側で誰かが彼女に何か

したのではないか??すぐに助けられない自分にもどかしさを感じた。


「−がうの。違うの。・・・嬉しくて・・・」

「え・・・・」

「風早くんの声を聞いたら・・・・嬉しくて・・・。ほっとして・・・」

 
思いがけない彼女の言葉に風早は胸がきゅーっとなった。


「会いたくて・・会いたくて・・・。うっ・・・こんなこと言うつもりじゃ

 なかったのに・・・・。ごめっ・・・」


アルコールはあまり飲めない爽子だが、飲み会はそれなりに付き合う。今日は

飲めないアルコールが入ったせいか、普段言えない気持ちをが素直に出た。


風早はたまらないほど彼女が恋しくなった。


”抱きしめたい”


彼女を壊してしまいそうなほど、強く抱きしめて、彼女を感じたい。


「爽子・・・・そんなの、俺いつもだよ。爽子の側にいる全ての人に嫉妬

 するくらい、会いたいよ。羽があったら今すぐ飛んでいけるのに・・」


普段仕事をしている二人は仕事中は全てを忘れられた。しかし、夜や週末など

に襲ってくる孤独感にお互い苦しめられていた。爽子は両親と今まで通り暮ら

しているので気が紛れたが、一人暮らしの風早は思った以上に心にぽっかり

穴が開いたようだった。

今の自分は彼女の涙を拭ってあげることもできない。


「爽子・・・好きだよ」

「風早くん・・・私も」


そして、お互いの空を見上げる。そこには満月が浮かんでいた。

きれいな満月の夜。でも二人の心は半分のまま・・・・・。



************



風早が私達の飲み会に顔を出すようになって3ヶ月が過ぎた。

私も前よりは少し仕事も落ち着いたような気がする。(するだけ??)

風早と出会った時、彼は健康診断でやってきたと分かった。

だから、あれから職場を訪れることはない。


「沙穂さぁ・・・・もしかして一目ぼれの相手って・・・風早?」


沙穂は昌と久々に二人でランチしていた。お互い社会人になり、恒例の

飲み会以外なかなか時間を作れずにいた。この日はやっと合った休日だった。


「え!!何よ、いきなり」


明らかに動揺する沙穂を見て、昌は笑った。


「だって丸分かりなんだもん。昔から分かりやすいもんね。沙穂」

「////////うわっ・・・・。皆も気づいてるかな」

「う・・・んどうだろ?蓮は鋭いから気付いてるかもね」

「うわぁ〜〜蓮かぁ・・・・」

「でも、ほんといい奴だよね。風早って。壁がなくってさ」


じとぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ


「な、なによ」


鋭い視線を送っている沙穂に気付いた昌はまた、高らかに笑った。


「大丈夫だって!!タイプじゃないし。マジ、本気なの??」

「・・・・・。だってさ、いいなぁって思った人に再会するって、そんなの

 反則だよね。・・・・好きになっちゃうよ」


あの時から、もう私の心には彼が住みついてしまった。四六時中彼のことが

離れない。会えば会うほど好きになっていく自分に気付く。


「だよね・・・。でも彼女いるかもよ」

「きゃ〜〜〜やめて!昌。それ言っちゃダメ。いないって勝手に決めてるから」

「でもさぁ・・・あれだけいい男だしねぇ。まっ今は聞かないでおこ」

「うん・・・・」


彼女がいたら・・・私、どうするんだろう・・・。

沙穂はすでに後戻りできない自分の感情に気付いていた。


「あっパスタきたよ〜〜〜♪沙穂」

「わぁ!おいしそ〜〜〜〜!」


運ばれてきたパスタランチを口に運びながらガールズトークに花が咲く二人。

話が一段落ついた時、昌は沙穂の様子を伺いながら話を切り出した。


「ところでさ、蓮・・・・会いに行ってんの?」


昌の言葉に一瞬張り詰めた空気が流れた。


「・・・・・・」

「いや・・・気になってさ、その・・・」

「・・・・さぁ、知らない」


二人の間にしばしの沈黙が流れる。その空気に耐えられなくなった昌は

話題を変えた。


「とっころで、ここのパスタ、めちゃうまだね!!あはは〜〜」

「う、うん!良かったよね。ここにして」


(やっぱこれ以上・・・・聞けない)


ぎゃはは〜〜〜っ


沙穂は昌の様子をちらっと見て、視線が合うと作り笑いをした。


昌が知りたがっていることはずっと知っていた。いや、昌だけじゃない

あの仲間の皆が知りたいことを。でも、まだ割り切れない自分自身がいる。

いつもの日常を生きている私達に何ができるというのだろう。



沙穂は虚ろな目で前のグラスに映る自分を眺めていた。








あとがき↓

ちょっと含みのある終わり方で。この辺はもっと後に出てきます。
最近、Half moon のお話脳になっていて風早先生が進まないなぁ。
気に向くままなサイトですみません。また波が来たら書きます。
いつも拍手やコメントありがとうございます。
それでは気が向いたら遊びに来て下さい。

Half moon