「Half moon」(96)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

沙穂は蓮の背負ってきたものを自分と家族が担っていくことを決めた。それから1年半、皆は・・・?

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それではどうぞ↓






























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―1年半後―


時は流れ、風早が仙台に来て2年半の月日が経とうとしていた。


風早と沙穂の絡み合った関係も修復し、仲間として付き合えていた。仕事面でもそれぞれ

が社会人としてしっかり歩き出している。蓮はあれから美穂に会いにいくことはなかった。

沙穂もまた、蓮の前では一切美穂の話をしなかった。美穂と蓮のことは未だに仲間内では

謎に包まれたまま、誰も触れることなく、月日だけが過ぎて行った。

まるで今までのことが何もなかったように・・・。



「ちょっと〜〜〜つれないよね。聞いた?1ヶ月も前のことだって」

「聞いたよ。蓮は知ってたんでしょ?」

「んーまぁ」


昌と沙穂が責めるように言うが、蓮はいつも通りビールをのんびりと飲んでいる。ある

居酒屋ではいつものメンバーが集まって飲んでいた。


「それで今日は何?」


いつもの飲み会からそれほど日が経っていないのに、緊急招集をかけられた蓮と太陽は

不思議そうに首を傾げた。


「何じゃないでしょうが!!婚約パーティー!」

「へ?」

「婚約パーティーしようよ。そりゃ、盛大にはできないけどさ」


昌は嬉しそうに言った。こういうことがもともと大好きなのだ。実は舞い込んできたニュース

とは風早と爽子が知らないうちに婚約していたということ。たまたま昌が爽子に電話した時

に出た話だった。二人とも自分から言う性格ではないのは分かっていたが、こんなに重要

なことを知らせてくれなかったことに昌は少し怒っていた。すっかり爽子も仙台の仲間達に

とってかけがえのない仲間になっていたのだ。


「ねっ?いいでしょ蓮!」

「ま〜いいけど・・・」

「じゃ決まり!風早には内緒だよ」


嬉しそうな昌と沙穂を見て、蓮は少し口角を上げた。


「じゃ、光平も呼ばなきゃな」

「うんっそうだね!」


昌は嬉しそうに微笑んだ。光平もあれから前を向いて歩きだしているように見えた。月日

は確実に流れているのだ。


「蓮も太陽もちゃんと協力してよねっ」

「うん、何でもやるよ」

「よっしゃ!まかせといてっ」

「じゃさっ、蓮は・・・」


昌と話している蓮を沙穂はちらっと見る。


まるで爆弾を抱えているかのように、それに触れないように過ごしてきた。少しでも触れ

たら爆発しそうな気がしていた。それはきっと蓮も同じ。表面的に明るくしているが、この

1年半、前に進めていない蓮を自分はどうすることもできなかった。


美穂と分かりあえないまま、割り切ることができるわけがなかった。

あれだけ抱え込んでいた蓮なのだ。


美穂と分かりあえないと、ずっと蓮はこのままだ・・・。


沙穂は今も大きな傷を抱えている蓮を哀しそうに見つめた。



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Plululu〜♪


『−はい』

「爽子ちゃん、私・・・」

『あ、沙穂さん・・・こんばんわっ』


幾度と聞いた電話越しの彼女の声。その声にいつもほっとする。いつからだろう・・こんな

に彼女の存在が大きくなったのは。

あの事件以来、彼女はずっと美穂のことを気にしてくれていた。自分も被害者なのに、ま

るで何もなかったかのように心配する彼女。信じられないとか思ったが、それが彼女なの

だ。そんな彼女に段々と張りつめた心が緩んでいくのを感じた。美穂と向き合う度に壊れ

そうになる心が彼女と話している時だけは癒された。彼女の口から出る全ての言葉に嘘

がないのを知っているから。恋敵だったあの時がまるで嘘のように・・・。


『あの、美穂さんはどうかな?』

「うん、大分いいよ〜。今日はね、美穂でずっといられたんだよ」

『ほんと??すごいねっ』


自分のことのようにいつも受け止めてくれる。彼女は美穂に会いたいと言った。憎まれて

いると知っていても、それでも会いたいと言った。その意志の固さに揺らぎそうになった。

きっと美穂も彼女に会ったら変われるかもしれない。例え病気でも、私が変われたように

美穂も・・・。でも、私は断った。自分も強くなりたかった。彼女のように真っ直ぐ生きたか

った。それに、もう・・・沢山のものをもらったから。


「今日電話したのはね、来週こっちに来れないかと思って」

『え??』

「ちょっと緊急事態が起こってね」

『えっ、みなさんに何か・・・??』


深刻な声の彼女に少し口角が上がる。


「いや、ちょっとね・・・。とにかく来たら分かるから。どうかな?」

『うんっ、大丈夫!絶対行きます』

「良かった〜〜〜!それじゃ来週ね」

『あ・・・沙穂さん』

「ん?」

『ありがとう・・・・電話』


心が温かくなる。今は素直に思う。かわいい・・・。風早が大切にするのが分かる。女の私

も宝箱に入れてしまいたくなるような子。いつも思う。


ありがとう・・・は、こっちだよって。


だからもう、十分なの。



沙穂は穏やかな笑みを浮かべて、電話を切った。













あとがき↓

なかなか更新できなくてすみません・・・。あと少しなのに時間が取れない。(;´д`)トホホ…  
主人公光平(??)も最後には頑張りますのでっ!明日更新できると思います

Half moon 97