「Half moon」(60)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

それぞれの想いが交差する中、蓮は苦しんでいた。ちょっぴり蓮の心情から始まります。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39  40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59 の続きです。
それではどうぞ↓




















********




「うん、うん、分かった。じゃなっ」


ピッ


「・・・・ふぅ」


どんっ


蓮は太陽から光平の再送別会を開こうとの連絡を受けた。蓮は携帯をポンッと床に投げ

ると、ベッドに勢いよく横たわった。そして天井をぼーっと眺める。

沙穂のこと・・・・。彼女が知ってしまったとしたら・・・?

蓮はそのことを考えると、喉の奥が痛くなるような感覚を覚える。そして、この部屋の

隅に目をやった。

あの日・・・部屋の隅で丸まって座っていた風早の姿が頭から離れない。そして、いつも

迷路のように同じ考えがぐるぐると頭に巡る。


”翔太をあそこまで追い込んだのは自分ではないのか?”


もともと弱みを見せるほうではなく、あまり感情を出さない性格の蓮は今までと表面的

には何も変わりもないように見えた。しかし、大きな傷を背負っていた。自分が起こした

傷がどんどん広がっていく。どうしてこんなことになったのだろう。


あれから何回も彼女が遭遇したこと、美穂のことを言おうと思った。でも言えなかった。

風早の目があまりにも死んでいた。この世の全てを拒絶しているかのような目。そして

すでに遅すぎたことを悟った。沙穂とのことがあった今、受け入れてくれるとは思えな

かった。


蓮は虚ろな目をして、シーツを身体に巻きつけて丸まった。


「何・・・してたんだろう。俺・・・・」


壊れるはずのない二人だと思っていた。それなのに、あんな出来事一つで崩れていく。

それが男と女。自分も身をもって知っている。でもあの二人は・・・・。


全ての原因は俺にある。


自分がなんとかするしかないのだ。


がらっ


蓮は起き上がると窓を開けた。


「ごめん・・・絶対このままにさせないから」


そして爽子の顔を思い浮かべるとせつない目をして月を眺めた。



*********



この1ヶ月、風早と爽子が何の連絡も取らないまま、光平が北海道に帰る日が

やってきた。


最後の日、いつものメンバーで飲み会を開き、光平を送り出すことになっていた。

昌と蓮は思っていた。正直皆来るのだろうか?と。恒例の飲み会もできるはずが

なかった。どんどんと崩れていく関係。


きゃはは〜〜〜ワーワー


賑やかな店内の中、一つのテーブルだけ何の会話もなく、重々しい雰囲気が漂っていた。


しぃ〜〜〜〜〜ん


先に集まったのは光平、昌、蓮だった。光平は蓮を真っ直ぐ見れずに、伏せ目がちに

ビールを飲んでいた。また、昌もいつもの雰囲気でないことを光平は感じ取っていた。


昌は先日沙穂から驚愕の事実を聞き、まだ消化しきれずにいた。そして、光平はこの

事実を知っているのだろうか?もし知っていたとしたら・・・・。思わず心臓がドクンッ

と脈打つのを感じた。そんな思いから光平を普通に見ることができなかった。


風早が来てから大きく動き出したそれぞれの運命。それぞれの思いはどこに向かって

いくのだろうか?誰かが幸せだと誰かが不幸になる。縺れた運命の糸はどう繋がって

いくのだろうか・・・・。


がらっ


その時、店の戸が開く音に3人はハッとしたようにそこに目を向けた。


「ごめ〜〜〜んっ遅れて」


戸口には太陽の明るい声が響いた。3人はほっとしたような安堵感を浮かべる。しかし

太陽の後ろから入ってきた人物に蓮と昌は目を見開いた。


「沙穂も一緒だったんだよ〜〜あれ?どうしたの?行こうよ」

「・・・・・・」


太陽の後ろで俯いたまま沙穂が立っていたのだ。


蓮と昌は神妙な顔で戸口を見つめた。沙穂が太陽に促されてこちらの方にやってくる。

沙穂は昌と目を合わさず、そっと太陽の横に座った。



「・・・これで皆揃ったのかな。皆サンキューな。忙しいのに」


光平がいつもの様子で言った。いつもの飲み会、いつもの仲間。光平を北海道に送り出

した半年前と同じ風景。でも明らかにあの時とは違っていた。



「風早は?風早がまだじゃんっ」


そこで太陽が当たり前のように言う。その問いかけに4人は黙り込んだ。


蓮は一応風早にメールは入れておいた。半年と言ってもすっかり仲間の一員だったのだ

から連絡しないのはおかしいと思ったのだ。風早が光平の気持ちに気づいているかどう

か分からない。しかし感覚的に、光平の名を出すのを躊躇している自分がいた。

そして沙穂のこと・・・・。


「あっ・・・風早ね〜〜仕事忙しいんじゃない?もう始めよっ・・・」


昌はそう言うと驚いた表情で戸口を見ている蓮に気づいた。そして沙穂も光平も戸口に

立っている人物を愕然とした表情で見ていた。

そこにいた人物とは・・・?


「お〜〜〜っ風早っ!!こっちこっち」


太陽が嬉しそうに手招きした。4人は一斉に固まったように戸口の風早を見つめた。

風早は太陽に気づくと、目で挨拶してそこに向かって歩き出した。


「ごめんっ仕事が長引いて」

「・・・・・・」


蓮は風早から視線を逸らさず、信じられないという目で見つめた。


「風早、蓮の隣ど〜〜ぞっ」

「サンキュ」


太陽に勧められて、俯いたまま風早は蓮の隣に座った。

テーブルは3人、3人が向かい合うような形。片方に光平、太陽、沙穂。そして向かい

合って、昌、蓮が並んでいた。蓮はただ呆然と風早を見ていた。沙穂も目の前に座った

風早から視線を外せなかった。光平も黙り込んで一点を見つめている。昌は沙穂と風早

をじっと見ていた。そんな痛い視線を振り切るように、風早はビールを注文した。


張り詰めた空気の中、光平の再送別会が始まろうとしていた。












あとがき↓

このお話を待っていてくださった方、ありがとうございます。なるべく時間が空いた
ら更新していきたいと思いますが、できない時はすみません。ところどころに修羅場
を入れて、自分なりに楽しんでいきたいと思います♪それではまた遊びに来てください。

※ コメントありがとうございます。頂いた日にレスしています。

Half moon 61