「Oh My Angel」(20)
やっと自分の気持ちを伝えられる爽子は屋上に翔太を呼び出した。最終回です。
これは「Oh My Angel」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 の続きです。
以下からどうぞ↓
その夜、爽子が屋上に上がると、すでに翔太はいた。
「あ・・・・」
「ごめん。待たせた?」
「ううん・・・」
「なんか、あったかいね。今日」
「うん」
そんな会話をしながら二人で空を見上げた。明日は天気らしく空には
満点の星が輝いていた。
「あ〜〜〜〜最後の夜なんだ・・・」
翔太はそう言って、大きく伸びをした。そして、爽子の方を向いて言った。
「ありがとう!黒沼さんのおかげですごく楽しい入院生活だった。
身体もすっかり良くなったしな。黒沼さんも・・・・幸せに!」
必死で絞り出して言った言葉だった。翔太は自分に言い聞かせるように
言った。ケジメをつけなければならないのだ。自分も明日から気持ちを
切り替えなければならない。あの人と何があったか分からないけど、あの
人なら彼女を幸せにできるだろう。高校生の自分よりは。ただ・・・・
最後に彼女の笑顔が見たい。
その時だった、爽子は下を向いたまま何か悶えていた。
「・・・・?黒沼さん?」
「ーがうの!違うの!!」
そう言ったかと思うと、爽子の大きな瞳から大粒の涙が溢れだした。
「−きなの。好きなの。好きなの・・・・翔太くんが好きなの!」
「・・・・・!」
翔太は一瞬何を言われているのか分からずただ、目の前で真っ赤になって
いる爽子を見つめていた。
「え?」
「す・・好きです」
「・・・・」
やっと、爽子の言葉を理解した翔太は驚きのあまりすっとんきょうな声を
出していた。
「え?えええええええ〜〜〜〜〜〜!!!」
「///////////////」
「そ、それって、男としてって意味?」
爽子はコクンッと恥ずかしそうに頷いた。
「うそ?だって結婚・・・・」
「それは・・・・」
彼女は必死で今までの経緯を話してくれた。
「だ、だから・・・・聖さんには本当に申し訳ないことを・・・・!」
そう言って、彼女は俯いた。
「結婚・・・しないんだ?」
「う、うん」
「俺の・・・こと?」
「////////////////」
真っ赤になった彼女は、コクンッともう一度首を縦に振った。
こんな信じられないことがあるんだろうか。翔太は必死でケジメをつけよう
と自制していた自分の気持ちが簡単に緩んでいくのがわかった。
「だ・・・・抱きしめていい?」
翔太は真っ赤になって聞いた。
「え??あの・・・」
爽子の返事を待たないうちに翔太は抱きしめていた。強く・・・強く。
「ずっと・・・こうしたかった」
「うん・・・・」
二人はお互いの体温を感じながら、心が穏やかになるのを感じた。
「好きなんだ。ずっと我慢してた。気持ちを抑えなければいけないと思えば
思うほど、好きな気持ちが増していくんだ」
「うん・・・私もだよ」
「ほ・・・ほんと?」
翔太は思わず爽子の身体を離して顔を覗き込んだ。
「本当・・・だよ。こんな気持ち・・・初めてだったの」
素直に紡ぎだされる彼女の言葉。
「夢みたいだ・・・」
翔太はまだ信じられないという表情で呟いた。すると、翔太の服の裾を軽く
握りしめ、顔を覗き込んでいる彼女がいた。
「ゆ、夢じゃないよ!!」
翔太はたまらなくなって、再び強く彼女を抱きしめた。
すると、感情が高まったのかひっくひっくと彼女は泣き始めた。自分の身体に
すっぽり入ってしまう彼女の肩が震えている。こんな愛しい気持ち、知らない。
そして、やはり夢なのではないかと思ってしまう。この柔らかい感覚も。
その時、彼女は非力な力で俺の胸から離れようとした。
「服が・・・濡れちゃうから」
そんな彼女に思わず笑みがこぼれる。そして引き寄せられるように彼女の
頬の涙に口を近づけた。
「キャッ///////」
そして、そっと唇に触れるだけのキスをした。
「俺もこんな気持ち・・・初めて。ずっと大切にしたい」
「・・・・・・」
爽子は翔太にキスをされて茫然としていた。そっと唇に指を持っていく。
初めて感じた気持ち・・・。
「ご、ごめっ//////思わず!!」
翔太は爽子の様子に気づき、はっとした。
「う、ううんっ!!/////あの・・・・」
「え?」
「突然過ぎたので、も・・・もう一回・・・お願いします」
目の前で真っ赤になって言う爽子に爆弾を投下されたように頭から湯気を
出した翔太は爽子に負けないぐらい真っ赤になって、座り込んだ。
「ず・・・・ずっりぃ〜〜〜〜//////」
翔太は立ち上がり、そっと爽子の顔に自分を近づけた。
満点の星の下、思いが通じ合った二人の影を月明かりが照らし続けた。
いつまでも・・・いつまでも。思いが永遠であるようにと・・・・。
*****************
退院の日、同室の人たちや多くの看護師さんや先生達に見送られ翔太は家族と
一緒に車に乗り込んだ。いつの間にか翔太は病院の人気者になっていた。
それぞれが寂しそうに別れを惜しんだ。爽子はそんな翔太を温かく見守っていた。
そして、そこには市東の姿もあった。
市東を見つけた翔太は驚く。そんな翔太にそっと市東は近づいた。
「!」
そして、耳元でこそっと何かを呟いた。
「なっ//////」
「んじゃーな」
そう言って、市東はくすっと笑いながら後ろを向いて手を振った。翔太は照れ
ながらも市東の優しさを感じて笑みがこぼれた。
「ーお兄ちゃん!!」
そこに、小児科にいた11歳の女の子がやってきた。
「わっ!来てくれたの?ありがとう」
「これ!」
そう言って、一枚の紙を手渡してくれた。そして、見送る爽子と、翔太を交互に見て、
「お幸せに!!」
とにかっと笑った。
「さよなら〜〜〜〜!!」
そこにいた人々が皆手を振り、翔太を見送ってくれた。
翔太は最後に爽子を見て、微笑んだ。そして車は走り出した。外の景色を眺めながら
色々あった入院生活に思いを馳せた。様々な人との出会い。昨日の出来事はまだ信じ
られない夢の中のようだけど、確かに通じ合った気持ち。大切な想いをこれからも大事
に育てていく。これから始まる二人の新しい関係。
「あっ・・・そうだ」
車が走り出してしばらく経った頃、女の子にもらった紙を思い出した。
「あ・・・・」
そこには爽子と翔太の結婚式の絵が描かれてあった。その絵に翔太は思わず
笑みがこぼれた。
「全部・・・お見通しだったな。参りました」
そう言って、照れながら頭をぼりぼりとかいた。
「あ〜〜〜しょうた!それ何!!」
すかさず弟の透太がその紙を覗きこむ。
「あっやめろ!透太!」
「なんだぁ〜〜〜これ誰??」
「いやっその//////」
思わず照れてしまう。思いが届いたばかりの自分にはいっぱいいっぱいの未来。
「でもいつか・・・」
弟は一人で赤くなって悶えている兄を冷やかに見ていた。自分がそれを描いた
女の子の初恋の相手だとは知らずに・・・。
そして、翔太はふっと最後に市東に耳元で言われた言葉を思い出し、またまた
顔を赤くした。
『俺、爽子に手ぇー出してないから。頑張れよ!』
市東は本気で爽子の事を愛していた。翔太には分かっていた。
色々な人の想いの上に自分がいる。そのことを忘れずに、彼女をずっと守って
いく。すっかり視界から消えた病院を遠目に見送りながら、翔太はそう、心に誓った。
<END>
あとがき↓
20回になりましたね。読んでくださる皆さんは長編はお好きなのかしら?
さてさて次はちょっとショートをUPしますね。
拍手のページをたまにしかみないんですが、(ちゃんと見ろ〜〜)多分以前
の話とかに拍手をしてくださっている方がいるみたいで、ありがとうござい
ます。やっぱり嬉しいもんです♪私の妄想が途切れない限りこのサイトは続
くと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
それではお話の区切りなので、お気に召しましたら〜♪↓