「Oh My Angel」(12)

爽子目線の爽子側の話。ここから多くなります・・・・。
これは「Oh My Angel」          10 11の続きです。
以下からどうぞ↓












「なんか変よね。黒沼さん」

「結婚前だからじゃないの?」

「そーだよね。今、一番幸せな時だもん」


ナースステーションの休憩室では、看護師達がいつになく変な様子の爽子を噂

していた。窓を見つめてボーっとして顔を赤らめたり、いきなり青ざめたり。

物を落として大きな音を立てたり・・・・。責任感の強い爽子が仕事中にこの

ような姿を見せるのは初めてだった。



「ところで、黒沼さん。」

「・・・・・」

「黒沼さん!?」

「は、はい!」


看護師長に声を掛けられてやっと現実に戻った爽子。別室に呼ばれた。


「大丈夫?」

「は、はい!すみませんっ」


(やだっ!仕事中なのに)


「最近、どう?」

「はい?」

「いつも仕事熱心だけど、これからのこと・・・大丈夫?」

「えと・・・・はい?」


あまりにも話しの意図を理解してくれない爽子に師長は業を煮やして

はっきり言った。


「結婚するって聞いたんだけど?」

「え・・・!!」

「違うの?」

「あ・・・いえ」


爽子は一瞬目の前が真っ暗になった。全くそのことを忘れていた自分に

気付いたからだ。


(私・・・何してるんだろう)


爽子は翔太に告白されてからそのことばかり考えていた。


「辞めないわよね?」

「え?」


師長によると市東が結婚の報告に来たそうだ。爽子には看護師を辞めて側に

いて欲しいと市東は言ったと。


「そんなこと・・・・」


(どうして聖さんがそんなこと?)


「辞めるつもりはありません」

「そうよね〜〜〜!はぁ〜良かった。正直、黒沼さんには期待してるのよ。

 もったいなすぎるわよ。まだまだこれからの人だからね」

「あ・・ありがとうございます」


爽子は顔をぱーっとさせた。この仕事を始めてまだ2年目。新米の自分に

こんな言葉をもらえるとは思わなかった。


「それじゃ、これからもよろしくお願いします。」

「はい!よろしくお願いします。」


爽子は頭を深々と下げた。そして部屋を後にした時、師長は言った。


「お幸せにね」

「・・・・ありがとうございます」


爽子は看護師長の部屋のドアを閉めると、一つ大きなため息をついた。

そしてそんな爽子を遠くから見つめる影があった。


**************



「ふう・・・・」


爽子は仕事を終え、自宅に戻った。着替えをしながら、ふと部屋の隅に

置かれた、指輪の箱を見つめる。



「・・・・・。」


私・・・最低だ。こんな状況なのに、心のどこかで浮かれている自分がいた。

自分の気持ちに気付いた以上、嘘はつけない。爽子の真っ直ぐな性格が、人

を傷つけることは分かっていた。



ピロロロ〜ン♪


その時突然、携帯のベルが鳴った。

ピッ


「あやねちゃん?」

「爽子〜!久しぶり〜突然ごめんね。今いい?」

「う、うん!あやねちゃん元気?」


あやねちゃんは高校からの友達で、化粧品会社に勤めていた。

とても大切な友達の一人。


「元気だよ〜〜!今日電話したのはさ、今度3人で会いたいって

 思ってさ。最近会ってなかったから。ちづに連絡入れてさ」


ちづちゃんも高校時代の大切は友達。


「・・・・・・」

「爽子・・・?何かあった?」

「・・・・・。」


私は泣きそうになるのを必死にこらえた。どうしてこの人は何でも

分かってしまうのだろう。


「とにかく、会おう!」


そんな爽子の様子に気づいたあやねは日や場所などを取り計らって、

電話を切った。

ピッ


いったいどうしたらいいの?爽子は再び、表情のない目で指輪を見つめた。



******************



「え??結婚!!マジ?」


爽子はあやねとちづと3人でランチをしていた。二人の声が

レストランをこだまする。


「ちづ!声大きい。」


あやねがちづを制止する。


「ついになんだ〜おめでとう爽子・・・ではなさそうね?」

「え?」


あやねの言葉に鈍感なちづは改めて、爽子の顔を見る。爽子は俯いて

必死で涙をこらえているように肩を震わせた。


「・・うっ・・・うぅっ」


そしてこらえきれなくて、大粒の涙が爽子の瞳からこぼれ落ちる。


「ごめっ・・・ごめん・・なさっ」


泣いている場合じゃないのに。この優しい人達に頼れる立場でもないのに。


二人はそんな様子をじっと見つめて、爽子からの言葉を待った。


高校時代からいつも爽子の隣には市東がいた。その頃駆け出しの医者だった

市東は忙しかったはずなのだが、時間を見つけては爽子迎えに来たり、何か

と世話を焼いていた。もちろん、この二人とも顔見知りだった。


「私・・・・私・・・どうすればいいか!!」


更にわんわんと子どものように泣いて、必死で想いを伝えようとする爽子を

二人はそっと包み込んだ。


「大丈夫。何があっても私達はあんたの味方なんだから。落ち着いたら話して」


爽子はそんな二人に感動して、しばらく身体を預けた。そして、少しずつ、

少しずつ、今の気持ちを正直に話そうと思った。


(二人ならきっと聞いてくれる・・・)


なんとか話し終わって、3人の間にはしばしの沈黙が流れた。

そしてあやねは第一声



「良かったね」

「「え??」」


これには爽子だけではなくちづも驚いて聞き返す。


「私的には良かったと思ってるよ。やっとかって感じだけど」


そう言うと、ふっとあやねは笑った。


「?・・・あやねちゃん?」

「あんたさ・・・・気付いてなかったかもしれないけど、ずっと市東さんに

 管理されてたっつーか、コントロールされてたんだよ」

「ええ!!そんな悪い奴だったの?市東さんって!」

「あ〜ちづはちょっと黙ってて(汗)」


そう言われて、明らかに混乱して頭を抱えるちづであった。


頭が良くて、隙がなく、仕事も出来る。もちろん世渡りも上手な市東を大切な

親友の相手に反対する理由はなかった。この人なら爽子を幸せにしてくれるだ

ろう。だが、何か引っかかる。まっさらな爽子はこの人だけしか知らずに生き

ていくのだろうか。ここには”愛”があるのか?とあやねはずっと疑問を持って

いたのだ。



「そうか・・・出会ったんだ。嬉しいよ。爽子。」

「あやねちゃん・・・。」


思っても見なかったあやねの言葉に爽子は戸惑ったと同時にやはり嬉しかった。


「とにかく、爽子は悪くないから。裏切りとかじゃないんだよ。これから大変かも

 しれないけど、くじけちゃだめだよ」

「う〜ん、よく分からないけど、うちらずっと爽子の味方だから!」


二人はそう言って、私を応援してくれる。いつもいつも私の背中をそっと

押してくれる。一人じゃないんだって思わさせてくれる。

相手がどうとかではなく、私の幸せをいつも願っていてくれる大切な友人。


「ありがとう・・・。」



爽子は少し軽くなった気持ちに感謝し、二人に別れを告げた。

しかし、爽子の戦いはこれからだった。









あとがき↓

困った時の友頼み!です(笑)ちょっと当分翔太との絡みないっす。
それでもよければ見に来てください〜♪

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