「Oh My Angel」(18)

爽子が倒れたことを知ったあやねは?
これは「Oh My Angel」          10 11  12 13 14 15 16 17 の続きです。
以下からどうぞ↓


















「ーえ?爽子が倒れた?」


あやねはちづとの電話で爽子が職場で倒れたことを知った。


「いや〜たまたま爽子の家に借りてた本を返しに行ったらさ〜爽ママが

 爽子が倒れて寝てるっていうからびっくりして・・・」

「・・・・・」

「いつも頑張っちゃうからさ〜爽子は。それにもしかしてあのことで

 思いつめちゃってるんじゃないかって」

「・・・・。ありがとう、ちづ。知らせてくれて」

「やのちん?」

「うん、ちょっと私にまかせてくれない?」

「?」


あやねは電話を切った後、すぐにカバンの中のスケジュール帳を開いた。



*******************



「びっくりしたよ。受付に女性が訪ねて来てるって言うからさ」


市東は行きつけの店にあやねと居た。


「せんせーお久しぶりです。突然すみません」


高校時代、常に爽子の横にいた市東はあやねやちづと顔を合わせる

ことが多かった。そしてあやねは市東が自分のことを女を見る目で

見ていることを感覚的に気付いていた。


「いやっこんな美人さんに呼び出されるのは大歓迎だね!」


そう言って、市東はあやねと自分のアルコールをオーダーした。

手慣れた様子で、女性を全く不安にさせない市東をあやねは冷静に眺めながら

ズバッと言った。


「正直に言いますね。私・・・市東さんは爽子に合わないと思いますよ」

「!」


市東は動作を止めて、あやねを見た。そして、ふっと口角を上げた。


「ふぅ〜〜ん。そういうことか。それで会いに来たっていうわけか。残念だな」


注文したアルコールを受け取ると、あやねのグラスに乾杯の合図をしてぐいっと

一口飲んだ。そんな市東をあやねはじっと見つめた後、自分のグラスに目を向け

て言った。


「市東さんさ・・・結構遊んでるでしょ?」

「・・・だから?」

「!」


市東はグラスがなくなると次々に注文した。


(やっと化けの皮を剥がすのか・・・)


「あ〜あ!やっぱり私が思った通りの男だった。もっと早くから爽子から

 引き離すんだった」


そう言って、あやねはため息を一つついた。あやねは今回の誘いを市東は

受けるだろうか?と半信半疑だった。受けるということは爽子以外の他の

女性とも簡単に会うということだ。

感覚的には危険な男だと分かっていた。でもなんでだろう・・・。爽子には

違う。それを感じていたから今まではっきりと言えなかった。


「し・・・とうさん?」


その時だった。横を見ると酒を浴びるように飲んでいた手が止まり、額に手を

当て、カウンターに肘をついて苦悩している市東の姿があった。


「爽子は・・・・俺の宝物だったんだ。誰に汚されることもなく、純粋で真っ白

 で・・・。天使のような存在だったんだ」


あやねは驚いた。この市東が泣いているように見えたからだ。


「・・・・・・。」

「こんな汚れている自分を・・・爽子といるときれいになれた。だから離したく

 なかった。ずっと自分の側で自分だけを見て欲しかったんだ」


初めて見る、市東の感情を露わにする姿にあやねは言葉を失った。

市東の肩はほんの少しだが震えていた。



「うん・・・・好きだったんだよね。ただ純粋に」


あやねは市東の肩をそっと抱いた。


「爽子が変わっていくのを見るのはつらかった。あんな表情を俺には見せた

 ことはなかったのに・・・」


市東は、爽子と翔太の姿をいつも見ていた。そこで初めて見る爽子の柔らかな

笑顔。二人の空気。見るたびに必死で保っていた自信を失っていった。


「最初から・・・・分かってた。爽子は俺に恋をしていないって。だから・・・

 だから、手を出せなかったんだ」


あやねは子どものような市東の姿に純粋さを見た。酔いつぶれた市東は完全に

いつもの姿ではなかった。そして市東は酔っていたとはいえ、あやねの前では

素直に本音を吐きだせる自分自身に心地よさを感じていた。今まで自分だけで

抱え込んでいた本音。


「いつか離れていくんじゃないかって・・・・・。」


そんな市東をあやねは優しい目で見つめて言った。


「今日は・・・・最後まで付き合うよ」


まるで子どもをあやすように・・・・。

この日、バーの明かりが消えるまで二人は飲み明かした。



****************



「あっ黒沼さん。担当の風早くんの退院が明日になったわよ」

「え?」


爽子は焦った。明日にはこの空間から彼がいなくなる。分かっていた

のに、分かっていたはずなのに。

まだ何もやっていない。彼は真正面にぶつかってきてくれたというのに。

こんな感情のまま、彼と離れて行くんだろうか・・・。

勝手だと思うけど、やっぱり自分の気持ちを伝えたい・・・・。

爽子は拳をぎゅっと強く固めた。











あとがき↓

市東の相談相手はあやねにしました。あやねはきっと男の人の気持ちを
分かる女だと思うので。あやねちゃんはやはりピンとくっつくのでしょう
かね〜?これからの3カップルが楽しみですね。このお話は後、2回で終
了です。次のお話の妄想が広がってる〜〜〜〜!今度は連載を一つにしな
いで書きたいものを並行してUPしていこうかと考えています。読みにく
いかもしれませんが、お付き合いくださいませ!

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