「OVER the TEARS」(10)

その後、複雑な気持ちを抱えながらも家庭教師を続ける爽子に事件が!
これは OVER the TEARS           の続きです。
それでは以下からどうぞ♪















二人の関係が動き始めた頃、事件は起こった。



「せんせ、何か元気ないね?」

「えっ?ごめん、問題解けた?」



あれから風早くんはやたらと謝ってくれて今まで通りの

お付き合いをしているけど、微妙に何かが変わってきている。

風早くんが謝るたびに私の胸は痛む・・・。謝るのは私の

方なのに・・・っていつも。でもそれを言葉にはできない。

だって、それを言ったところで今の私にそれ以上の覚悟はない。



ガチャーン

「お前!どういうつもりだ!!」



その時、家のどこからか大きな声が聞こえた。それと同時に

何かが割れる音がして、道哉くんと私はそちらに耳を傾けた。


「あ・・・!」


道哉くんを慌てて見ると、表情が変わった。

私は、すごく嫌な予感がした。



「あの男と別れてなかったのか!?」

「そうよ!悪い?あんただってそうじゃない。」

「あの男、財産目当てに決まってるだろ!」

「分かったように言わないでよ!あんたよりよっぽどいいわよ!」」


「何をー!」


バシッ


あ・・・叩かれた?


「淫乱女!道哉は俺の子じゃないんじゃないか?ずっと何かが違うって

 思ってたんだよ。別れるなら達哉をもらうからな!!正当な血筋のな!」

 
達哉って道哉くんのお兄さん?






「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



どんでもないところに出くわしてしまった。


「み・・・道哉くん?」


「せんせ!何て顔してんの?こういうの日常茶飯事だから。くっくっ

 でも俺がアイツの子じゃないってのは初耳だけど?」


道哉くんの目が初めに会った頃の目に戻った。


「悪いけど・・・・帰って」


そう言って、無表情のまま、道哉くんは私を部屋から出した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それから、私は気になって、毎日道哉くんの家を訪ねたのだけど

やはり彼は会ってくれなくて・・・・。

その日も同じように彼を訪ねた時だった。


「あんた、道哉の噂の家庭教師?」


そこに、高校生ぐらいで眼鏡をかけた少し青白い少年が立っていた。


「あの・・・?噂って」

「あの、道哉を飼い慣らしたってどんな手を使ったのかなってさ」

「・・・・・。」


「道哉だったら、もうすぐ帰って来るから、家で待ちなよ」


その人は道哉くんのお兄さん、達哉さんだと言うのが分かった。

その時から私は嫌な感じがしたのに、促されるまま、家に入ってしまった。


私は、いつもの道哉くんの部屋じゃなくて、違う部屋に通された。

そこはリビングでもなく・・・達哉さんの部屋?


「あ、あの・・・家の皆さんは?」

「あ〜奥にでもいるんじゃない?」


お手伝いさんは、いつも近くにいるはずなのだけど、この日は

気配がなかった。私は、なんだか言いようのない不安感に襲われていた。


「あの・・・私、改めます。それじゃ・・・」


その時だった、達哉さんは帰ろうとした私の手をぐいっと引っ張り、

ベッドに叩きつけた。そして、あっという間に上から覆いかぶさり、

私は身動きが取れなくなった。


「ちょっとストレス溜まってんだよね!あんたでいいや!相手してよ」

「!!!」


私は声が出なかった。


達哉は爽子の服をビリッと破り、下着も引きちぎった。そして、スカートの

中へと手を伸ばし・・・・!



「キャ―――――――!!」


助けて!!風早くん――――――!!!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


気付いた時には家に居た。


「爽子?大丈夫?」


「ああっ――――!!」


「爽子!!お母さんよ!もう大丈夫よ!」


「お・・・かあさん?」


目を開けると、お母さんの姿があった。

汗いっぱいかいた、私の顔を必死でお母さんはタオルで

拭いてくれる。そして優しく抱きしめてくれた。


そっか・・・家なんだ。私どうしてたんだっけ?

段々、脳裏に焼き付いているあの記憶がよみがえる。


「い、いや――――!!」



「大丈夫よ。爽子。もう大丈夫だから!!」


そう言って、母は泣いていた。

あれから、気を失ってしまった私は、父に迎えに来てもらった

ようだ。そして、3日間も眠り続けたそうだ。


「爽子!爽子!つらかったね。でもね、安心して!何も汚されて

 ないからね。もちろん、何があっても爽子は爽子だけど」



眠っている間に病院で処置などしてもらい、何もなかったことが

分かった。私は記憶はないけど、すぐにお手伝いさんが帰って

来て私を助けてくれたそうだ。


身体は何もなくても、私は心に大きな傷を背負ってしまった。





「えっ?訴える?」

「お父さんもお母さんもその子を許せないの。爽子の身体は

 傷ついていないとしても、心を傷つけた罪は大きすぎるわ」

「・・・・・。」


「あんなに一生懸命爽子が関わってたというのに、恩をあだで

 返して・・・許せないわ!」


「え?誰のこと?」

「え?道哉くんに決まってるじゃない。ごめんなさい!その名前を

 聞くのも嫌よね」


「ちがっ・・・!」



犯人がいつの間にか道哉くんになっていた。どうして??



「―ダメ!!」

「だめ、だめだよ。とにかくお願いやめて・・・。」

「爽子?」


どうしてなの?会って訳を聞きたい。道哉くんがそうしたのか

それとも周りに仕組まれたのか?聞きたい。でも今は会えない。

私がどうにかなってしまいそうで。



私はしばらくの間、お父さんに会うのさえ怖かった。

そう、心に大きな傷。男の人が怖くなってしまった。



このことを知らない風早くんはどう思っているだろう。電話口

に出ることも出来ない私を・・・・。










あとがき↓

やばい・・・暗くなってきた。でもこういう話を書きたかったのです。
こういうことがあると爽子も「性」に嫌でも向き合うだろうと。
こんな展開ですが、もう少しお付き合いください。
OVER the TEARS  11