「OVER the TEARS」(1)

ちょっと長編です。それで暗い感じの話です。二人は大学生設定で
教師になりたい爽子は家庭教師のバイトを始めて・・・。
それでは以下からどうぞ↓










花と薬草が広がる、家のガーデンを見て時々思い出す。

あの事件のこと。あの事件は爽子に大きな傷を与えた。

だけど、俺たちの関係はあれから動き出した。未来へと―

over the tears







「えっ中学生の家庭教師?」

「うん・・・なんかね・・・」




爽子は将来的に教える仕事に就きたいと大学では教育学を専攻

している。その将来の参考になるからと、友達に難しい生徒

を紹介されたということだ。






「でも、難しい生徒って?」

「なんか、登校拒否を起こしてるんだって。」

「まさか男?」

「うん・・・そうみたい」

「え・・・・!」



(うわっそれ無理!だって、中学生なんて危なすぎる!)



「大丈夫?」

「うん・・・・自信ないんだけど、ちょっと頑張ってみたい気もあって・・・」



(そういう意味じゃないんだけどね)



爽子がどうしてこだわっているか。それは爽子の共感ポイント

”誤解”が大きく原因しているようだ。彼はクラスメイトに誤解されている

だけで、本当は純真過ぎて、人との付き合い方を知らないと?

でもそんな危険な奴、爽子に近づけさせたくない!というのが俺の本音だ。

だけどそんな俺の独占欲で爽子の人生を縛るわけにはいかない。




「爽子をいつも応援してるよ。が、がんばれ!」

「ありがとう〜〜〜!」



思わず、顔の筋肉が引きつる。



(さすがに俺の勝手で止めれないよな・・・。)




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そして、初訪問の日 ――――


爽子は緊張した身体をほぐすように伸びをしたり、体操

したり、ぶつぶつ何を唱えたり・・・?


「うわ〜〜〜っ!」


そして、鏡を見るとあまりの自分の顔の怖さに驚く。


(やばい!こんな顔じゃ驚かれる〜〜〜!)


焦ってる爽子の前に大きい御屋敷が目の前に現れた。


友達に教えてもらった住所の紙と番地を顔を上下にして確認する。


(えっ?まさかここ?大きい家!)


どきどきどき


「よし!」

ピンポーン


意を決して呼び鈴を押してみる。

しばらくしてからインターホンの向こうから女の人の声が聞こえた。



「はい。どちら様でしょうか?」

「あ、あの、○○さんから紹介されて来た、家庭教師のく、黒沼爽子

 と申します。」

「今、鍵を解除しますので、どうぞ中に入って来てください。」



(うわ〜〜お母様かな?)



長い庭を通って、中に入って行くと、大きな玄関が勝手に開いた。



(うわわわっ!)



ドアが勝手に開いてびっくりしている私の前に一人の男の子?人?が

柱に寄りかかりこちらを見ていた。




「あんた、誰?」




そこに、爽子より大きくて、髪は茶髪で一見大人びて見えるが、よく

見ると、まだ幼さが残る顔をしている男の子が立っていた。



「あ、あの、黒沼爽子と言います。友人から家庭教師を紹介されて・・・」



この子だ。瀬戸道哉くん。中学2年生。登校拒否してるって。



「おれ、カテキョなんていらないし」



話は一応通っているらしい。




「で、でもお母さまに頼まれまして・・・。」

「ふぅーん。」



そう言って、瀬戸道哉くんは私を上から下までじろじろと見た。




「あんた大学生?彼氏いんの?」

「えっえっ??あのっ今はそんなことは関係ないので」




私がおろおろして手を前でぶんぶん振っていると、道哉くんは

ふっと笑って、



「やめなよ。俺なんかを扱えるタマじゃねえよ。せんせ」



というと、ドアを閉めて向こうにいってしまった。



「すみませんが、お引き取りください。」

「えっ・・・」



そう言うと、先ほどインターホンで出たお手伝いさんがゲートの

鍵を解除してくれた。


私は一瞬の出来事に茫然と突っ立ったままだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


とぼとぼと帰り道を歩きだす。


「・・・・はぁ。」  思わずため息。



「爽子!」

「えっ風早くん?どうしたの?」



向こうから見慣れた、愛しい人が走ってきた。



「はぁ、はぁ〜。やっぱり・・・・心配になって」

「そ、そんな・・・」


風早くんは急いで走って来てくれたようで、息を切らせていた。

どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。



「なんかされたの!?」



自分の問題だから、泣くつもりなんてなかったのに・・・・風早くんの

顔を見ると自然に涙が溢れていたことに気付いた。

真剣なまなざしはいつも私のことを一生懸命考えてくれるまなざし。

そして、優しいまなざし。いつもそれに救われていて、また・・・・




「私、甘えてる・・・風早くんに!」

「えっ?」

「こんなじゃ、先生になんてなれないよ」



私は走ってその場を逃げようと思った。このままじゃ風早くんにまた

頼っちゃう・・・。私、風早くんとお付き合いしてから、どんどん

欲張りになっているから・・・。

すると、後ろを向いた私の手をぐいっと引っ張られ、




「甘えてもらわなきゃ困る!」



と言って、引っ張られた手は風早くんの身体へと持っていかれる。

そして、ぎゅっと抱きしめてくれる。



「俺の特権なくなる。いつも俺が甘えてばかりじゃん。ちょっと

 ぐらい甘えてよ・・・。」

「えっえっ!いつも甘えてるよっ!」

「どこが!?・・・まぁっいつも頑張ってしまう爽子も大好きなんだけど!」

「/////////」
「/////////」


お互いふっと笑い、手をつないで帰る。


風早くんは私にいつも幸せをくれる。お父さんもお母さんも、私を温かく

包んでくれる。でも道哉くんはどうなんだろう?

ご両親の愛情をちゃんと感じられているのかな?

私にできる役割って何だろう・・・・。

人との関係に難しさを感じるのは私も同じ。だから諦めたくないの。



そして、その二人を遠くの窓から見つめている影があった。












あとがき↓
このお話のテーマは「性」ってやつです(笑)二人の初体験はどう
やってできるかな?なんて妄想するとこうなりました。なんか暗い
とこ多いんですが、よければ続きを見に来て下さい。
OVER the TEARS   

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