風早家シリーズ(2)「13歳の恋」

以前書いた、風早弟くんの話の続きです。13歳になった弟くん
段々と爽子に対する気持ちに気付いて・・・・。
それでは以下からどうぞ↓





























来週は風早くんの弟、透太くんの13歳の誕生日。

前に会った時、誕生日プレゼントは何がいい?って聞いてみると、

透太くんの言ったことは・・・・。




「13歳の恋」




「―ダメ!」

「・・でも、透太くんのお願いだから聞いてあげたくて。

 私でよければなんだけど・・・。」

「オレも一緒ならいいけど、二人でなんでしょ?」



そのことを言うと、風早くんは「ダメ」って譲らない。

困ったな。透太くんはそれ以外はいらないって言うし。



透太くんが欲しい物・・・それはなんと、



”「爽子と一緒にどこかに行きたい!」”だった。


「それじゃ、風早くんと3人で遊園地とか行こうか?」って言うと、

「ちがう!爽子と二人で行きたい!」って譲らない。



「ほっといていいから。あいつ、前から爽子に近づきすぎなんだよ。」



風早くんはそう言ったかと思うと、ぷいっと横を向いてしまった。

それじゃ何あげたらいいんだろう・・・。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「−っじゃね、爽子!明日」

「うん、ばいばい。」



爽子は大学の講義が終わって、門を出ようとしていたその時!



「さ〜わ〜こ♪」

「えっ?透太くん!??」

「来ちゃった!爽子の大学!結構近いんだね。」


珍しいお客さんに爽子のクラスの子達が集まってきた。


「あれ〜〜〜?爽子の恋人?かわいいぃぃ」


何人かの女の人に囲まれ、学ラン姿の透太はぷしゅーっと赤くなり俯いた。


「ち、ちがうよ〜風早くんの弟だよ!」

「あっそれでか、何か会ったことあるような気がしたんだ!似てるね〜!」



大学で一番仲のいい未来ちゃんがやってきて、彼を覗きこんで言った。

うちの大学祭に風早くんは来てくれたので、何人かの友達は風早くんを知っている。



「かっこよくなるよ〜お兄ちゃんイケメンだもんね〜!」



すると、透太くんは 「やめてください!」


といきなりの大きな声で否定した。

その声に一同し〜んとした。



「僕、兄には似てません!」



どうしたのかな・・・。そんなことちょっと前までは絶対言わなかったのに。

透太くんの口癖はいつも”しょーたは僕の憧れなんだ”だったのに・・・。


「透太くん、私に用事だったんだよね?行こ!」



なんとなく、場の空気が悪くなるのを感じて、彼をその場から連れ出した。


(あ・・・・・)


並んで歩いていると、いつのまにか自分の背を越していることに気付く。

いつの間に越されたんだろう?





「ところで・・・どうしたの?透太くん」


こうして二人で居ることはもしかして初めてかもしれない。

ちょっと緊張する。でもなんだろ。空気が風早くんと似てる

からかな。風早くんの家族だからかな。他の人とは違う。



「・・・。おれ、爽子と一緒に出かけたいんだ。ほんとに」

「えっ?あのこと?」

「おれ、誕生日に出かけるのが夢だったんだ。」

「でも、しょうたがいると絶対だめだって言うし、こうして来ちゃった!」



と透太くんは下をペロッと出して、風早くん並みの笑顔で笑った。

うっ・・・かわいい。

でもどうしよう・・・。連絡した方がいいのかな。それに今日、

誕生日なのに!私が独占しちゃ・・・。



「だめだよ!しょうたに電話したら!絶対だめって言われるから。」



そういうと透太くんは泣き出しそうになった。



「でも・・・お母さん心配しちゃうよ」

「大丈夫!お母さんにはちゃんと言っといたよ。夜には帰るって」



そっか・・・。こんなにうるうるした目で見られると弱いよ〜。

だって風早くんみたいなんだもん。ちょっとぐらいいいよね?


「それじゃ、いこっか!」

「えっいいの?爽子!やったぁぁ〜」


透太くんは、私の手を握り、ぐいぐいと引っ張った。小さいころから変わらない。

でも、しばらく行くと突然手をぱっと離した。



「どうしたの?」

「//////ううん・・・なんもない」

「?」

「あっ大切なこと言ってなかった! 誕生日おめでとう!透太くん」

「あ、ありがと//////」



私達は、その日、透太くんリクエストの遊園地に行くことにした。



その頃―――風早家では。


「今日、せっかくあいつの誕生日プレゼント持ってきたのにいないなんて・・・」

「そうなのよ。お友達と出かけるとかで。」

「ふぅーん。女の子だったりして!」「〜まさかぁ!」


茶の間は母と翔太の笑い声が響いていた。

しかし!本当の相手を全く知らない翔太であった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



すっかり日が暮れて、辺りは薄暗くなっていた。

爽子は透太を風早家まで送って行った。



「−ありがとう!爽子。楽しかった。」

「ちょっと遅くなっちゃったね。大丈夫かな。」

「おれ、爽子を家まで送る」

「だめ!もう、家に入って。」

「・・・・。」

「おれ、早く大人になりたい。」


俯いて、小さな声で透太くんは言った。


「おれ・・・おれ・・・」


ガチャッ

その時、玄関のドアが開いた。

そして、そこに立っている人を見た時、透太くんは

「あっ!」と声を上げた。



「おっおまえ!!」


そこに立っていた風早くんをドンッと押しのけて、勢いよく

透太くんは家の中に入って行った。


「爽子・・・。」

「風早くん・・・。」


私は、風早くんの家に上げてもらった。

風早くんは一人暮らしをしているのだけど、今日は弟の誕生日って

ことでプレゼントを持ってきたそうだ。



「透太くん・・・部屋から出てこないね?」

「ん・・・ほっといていいよ」

「う・・・ん」


折角の誕生日なのにな・・・・。


「あ、あの・・・ごめんなさい。今日は」


私がもじもじして言うと、


「今日は、ありがとな。あいつにつきあってくれて。」


と風早くんはにっこり笑ってくれた。


「う、うん!」



私は、風早くんがそう言ってくれてほっとしていた。

よかった。あれだけ反対してたもんね。


「楽しかったよ。遊園地に久々に行った。」


私は嬉しくなって今日のことを話し出すと・・・


「やっぱり、やだな。今度遊園地いこ!」

「えっあっ?」 


風早くんはむすっとした顔で真剣に言うから・・・・。


「くすっ」

「あっ!笑ったな〜〜」

「あわわ〜〜ご、ごめんなさい!」


すると、風早くんは私をぎゅっと抱きしめて、そのまま口を

近づけてくる・・・!



「か、風早くん・・・ここご実家だから!!/////」

「それじゃ続き、うちでしよっ♪」

「ええっ!!」

「さぁ〜帰ろ!」と風早くんは私の手を取り、下へ降りて行った。



透太くんの部屋を愛おしそうに見つめながら・・・・。



”透太へ

13歳の誕生日おめでとう!いつも透太を応援してるよ!

今日のことは最初で最後だからな!

翔太より ”


メッセージ付きのプレゼントが透太の前には置かれていた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



―後日の風早家にて―

ぼりぼりぼりぼり〜〜〜〜



「俺の前でどうどうと食べるな!爽子のクッキー」

「へーんだ!それぐらいいいだろっ!ちっせー奴だなぁ。」

「なっ!!!兄ちゃんに向かってコンヤロー」



すっかり仲良しの風早兄弟。二人の間に何があったのか分からないけど、

やっぱり兄弟はいいなって見ていて微笑ましい。

いつか、この家の家族になれたら・・・きゃっ//////


そんな妄想に夢膨らませている爽子ちゃんでありました。



〈 END 〉













あとがき↓
長いものをUPしていこうかと思ったのですが、これにしました。
翔太はここまでして爽子と出かけたかったという透太の気持ちを
汲んであげたので知ってからもそんなに怒らなかったという風に
しました。風早くんは人の気持ちには繊細な人かなって思います。
あと、中学2年生って子どもから大人に変わるときなんだそうですよ。まぁここでは中1設定でしたが。読んで下さった方、ありがとうございました。

web拍手