「かなわない恋」3

こちらは「かなわない恋」  の続きです。最終話になります。
やっと爽子が出てきます。ちょっとくどいですがよければどうぞ↓



















「ふーん・・・。それで逃げてきちゃったんだ。」

「う・・・ん」

「それで・・・諦めるの?」

「・・・・・。」

「そんなもんなんだ。若菜の”好き”って」



愛美に言われて、思わず、拳を握りしめる。



”そんなことない!”



心でいくらそう叫んでも、私は何もできないでいる。



「だって・・・これ以上どうすればいいのっ。相手にもされてないのに。」

「何もしてないじゃん!」

「!」



俯いていた私に、愛美は優しく笑って言ってくれた。



「諦めちゃだめだよ!好きならね!」



こんな時、本当に親友がいて良かったと思う。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それからというもの、毎日彼の姿だけ、影から見るのが習慣になった。

これをストーカーというものかも知れないけど、まず彼を知ろうと。

ある時、彼の携帯が鳴って、駅に向かって歩きながら彼は携帯を取りだした。

その携帯を見た瞬間、今まで見たこともないような顔で携帯を耳に当てた。

遠くて聞こえなかったけど、すごく愛おしそうな、幸せそうな顔をしていた。



(彼女だ・・・。)



私は直感で分かった。

私は、ただ遠くで彼の姿を見るだけで幸せを感じていた。

でも、でもその時気づいたんだ。そんなことで満足しない自分に。

そして、私の中に醜い感情があることに・・・。

いったいどんな人なんだろう。彼の心を捉える人・・・。



次の日も彼を遠くから見つめていた。でもその日はなんかもっと

彼のことを知りたくなって電車までも追いかけてしまった。

すると、私の最寄り駅よりもまだまだ先の駅で彼は降りた。

そして、彼が行く先を目で追うと、髪が長くて、きれいな女の人が立っていた。

優しそうにお互い微笑み、手をつないで歩いて行った。私はそれ以上見れずに

涙で前が見えなくなりながら、走って帰った。やっぱり見たくなかったんだ・・・!

そんな彼は見たくなかったんだ。なんて、幸せなんだろう。彼をひとり占め出来る彼女は

なんて幸せ者なんだろう。そして、この醜い感情に自分が嫌になった。






それからはストーカーをやめたけど、放心状態で生きてる感覚もなかった気がする。

思ったより好きだったんだ。何も始まっていないというのに、

何でこんなに好きになっていたんだろう。






「−大丈夫ですか?」





目の前にタオルがあった。

そのタオルから視線を上に移すと・・・・




「あっ!」



彼女だ!彼の彼女だ!



「あ、あの・・びしょ濡れですから、よかったらタオルと傘を・・・」

「えっ?」


彼女から視線を上に向けると、



「あ・・・・」


雨が降ってることにまるで気がつかなかった。




そして、いつのまにか、彼が降りた駅の近くに来ていた。

私は無意識に涙が出てきた。溢れて止まらなくなった。




「あひっ〜〜〜ひっ」



やだっなんで、涙が止まらないよ。なんで、なんで・・・その時



「あ、あのぉ〜〜〜!」

「ごめんなさい!!嫌だったらごめんなさい!!」



と言って、彼女はタオルをふわっと私の頭にかけてくれた。




「私・・・高校生の時、上手く人と関われなくて壁を作ってしまって

怖がられていたんだけど、そんな私にこんな風にタオルをかけてくれた

人がいて嬉しかったんだぁ・・・。」




彼女はふわっと花のように笑った。あ・・・かわいい。この人。きれいよりかわいいんだ。



「うっ〜〜〜うっ」



私はなんだか涙が更に止まらなくなった。



「あわわわわ・・・どうしよう。怖がらせちゃった!!」

「えっち、ちがう・・・」その時・・・

「爽子?」

「あっ風早くん!ごめんなさい!待ち合わせ場所に居なくて。」

「大丈・・・!あれ?君?」

「あ、あの・・・」

「わ、私、彼女を怖がらせてしまって!!」



必死で説明する姿になんかほっこりしてきて・・・。



「ぷっ・・・。」

「えっ??」



なぜか私と一緒に風早さんも笑っていた。

ああ・・・なんてしっくりいくんだろう。二人はとてもお似合いだった。

でも、不思議だったのが、その時、悲しい気持より幸せな気持ちになった。

愛おしそうに彼女を見つめる風早さんと彼女の姿に幸せな気分になって・・・。




「あ、あの・・・ありがとうございます。タオル」

「あの、それから風早さん!私、私、あなたのことが大好きです!」

「!」




自然にその言葉が出ていた。すると、風早さんはしっかり目を見て




「ありがとう。好きになってくれて。でも俺、この人が大好きなんだ。

 君ぐらいの時に彼女に出会ってからずっと。」



そう言って、風早さんは爽やかに笑った。その隣で真っ赤になっている彼女さん。

あ、ああ・・・言ってよかった。この人を好きになってよかった。

これからの私が変わるような気がした。

私も、きっとこの二人のような恋愛・・・できるよね?


ありがとう・・・。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「か、風早くん・・・さっきの子可愛かったね!」

「あれ?何?もしかして・・・やきもち?・・・なんちゃって!」

「え、え・・・ハイ」

「!」

「あ〜〜〜やっぱりヤバイ今日も////」

「えっ?」

「ズルイよね。爽子は」

「えっずる・・・??」





遠くで、重なった二人の影を見ながら、私はやっと顔を上げて前を歩きだした。
その時、雨は上がっていた。





〈 END 〉











あとがき↓

二人は結婚前ぐらいかな〜という感じで書きました。その頃にはきっと誰もが
認めるお似合いなカップルだろうと♪オリキャラ目線はこれからも書きたいです。

それでは3話まとめて!お気に召しましたら↓   

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