「野球少年の恋」6

野球少年の恋      の続きです。
偶然夏祭りで3人が会って、暗黙の了解で高瀬が爽子を好きだと
気付いた風早は・・・・。前半は風早目線、後半は高瀬目線です。
それではどうぞ↓



























「翔太。」




振り向くと高瀬健太郎がいた。




「・・・・。」





そこは、今流行りの音楽が静かに流れ、なんだか違和感のある

空間に感じた。大学近くのカフェに誘われて、男二人が何も

言わず、沈黙の中、向き合っている。



何も言わずに、でもまっすぐ俺を見る高瀬さんに俺が口火をきる。



「俺・・・高瀬さんのことずっと憧れだった。大学に入って、友達みたいに
 付き合ってもらってるけど、その気持ちは変わらないよ」




俺は思わず、手に力が入っていた。でもお互い目は逸らさない。




「だけど・・・これとそれとは・・・「ってる!」」




高瀬さんが口をはさんだ。



「分かってるよ。ははっ俺、ついてないな。まさか、こんなことってあるんだな」

と苦笑いした。



「お前と俺って、正反対だと思ってたのに、意外と似てたんだな。」



「大丈夫だよ」




とお金を置いて、高瀬さんは出て行った。





何も言わない。言えないという感情が痛いほど分かったから・・・。

その時の高瀬さんの目があまりにも切なすぎたから・・・。

でも、譲れないものってあるんだ。これだけは譲れないものって。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



今ならまだあきらめられる。初めての恋心・・・。

さらさらの長い髪、はにかんだ笑顔。大きな瞳。



あいつの大切な子だったなんて・・・。

あいつの想いは知っている。あまり、喋らないけど、分かるんだ。

中途半端な想いなら絶対、奪ってやるとか想うんだろうけど・・・。

あいつが友達という以上に、あいつの想いを裏切れない。



それに・・・二人はすごくお似合いだった。

それは今までの二人の月日がそうさせたものもあるだろうが、

それだけじゃない。二人の想いが深いんだろうってそう思う。

俺も出会えるだろうか・・・人生で一つだけの大切な想い。




無意識に流れていた頬につたう涙を拭って、高瀬は家路に向かった。












あとがき↓
次でラストです。風早にとって高瀬は尊敬する人だっただけに本当に複雑だった
んですね〜。よければまた見に来てください。

「野球少年の恋」