「野球少年の恋」5

野球少年の恋     の続きです。
偶然、夏祭りで、3人が会ってしまうという展開です。風早目線でどうぞ↓


















夏も真っただ中になり、この地域の毎年恒例、夏祭りが開催される。
北海道の短い夏を彩る、とっておきのイベント。
そして、恋人たちのイベントでもある。
今年は3回目の爽子との夏祭りだ。




「あっ・・・あわわわ〜待たせちゃった?風早くん」

「!」


長い髪をお団子に結って、薄いピンク色の浴衣を着た爽子が小走りで現れた。



「あっ―――////」


俺は、思わず直視できずに手で顔を覆って俯いてしまう。


「か、かわいい。」 

「あ、ありがとう///」

「誰にも見せたくね〜!」

「えっ!?」


何回、浴衣姿を見ても照れてしまう。かわいすぎて・・・。


「////」「////」二人は真っ赤になってお互い俯いた。そこに



「あっ!風早じゃん!」「え〜風早?」



男女のグループがこちらに向かってやってきた。



「おっお前ら!」

「わっ彼女さん?」

「うわぁ〜初めて見た!はじめまして、ゼミ仲間の・・・。」


その軍団は大学のゼミ仲間だった。
積極的な女の子たちが我先にと自己紹介していく。



「ど、どうもはじめまして!黒沼爽子と言います。」

「風早が隠したくなるわけだね!ちょーかわいいじゃん!彼女」

「/////」    だから見せたくねーんだよ。

「んじゃ!」

「えっもう行くの風早!邪魔されたくないんだ〜!」

ピーピー!ヒューヒュー   

「か、風早くん、大丈夫だよ。」




爽子が気を遣って言ってくれるけど、あんまり人づきあいが得意じゃない
彼女が緊張しているのを知ってる。それに俺だって、早く二人になりたい。
なんでこんなにすごい人出なのに、会っちゃうんだろう・・・・。




「あれっ翔太?」

またまた、後ろの方から声を掛けられる。

爽子は「人気者・・・」と手を合わせて、羨望のまなざしで俺を見てるし。

「高瀬さん!」

「えっ一人?」

「あ〜うん、家の近くだからちらっと行こうかと・・・。」



と言ったまま、高瀬さんは固まっていた。彼の視線の先を見ると・・・



「あっ!」

「あ・・・」




二人の表情を交互に見て・・・・俺は悟った。まさか!
それから俺にはとても長い時間が経ったように思った。
沈黙を破ったのは爽子だった。




「よく、お花を買いに来てくれる方・・・ですよね? 覚えてますか?

 あっ、私、影が薄いから覚えてないかも・・・。」と爽子は俯いた。





高瀬さんは俺を見た。俺も高瀬さんを見る。
そっか・・・何で気付かなかったんだろう。高瀬さんの話はまるで爽子のこと
じゃないか・・・。でも、まさかそんなことがあるなんて思ってもみなかった。




「・・・・。」

「・・・・。」




俺は、あえて言った。


「高瀬さん・・・・。紹介が遅れて。俺の彼女の黒沼爽子さん」


譲れないものってあるんだ。



「あっ・・・・。俺、高瀬健太郎です・・・。よろしく。

 花屋さんの人ですよね。覚えてますよ。」



俯き加減に目を合わせず、答えた。しばらくの沈黙の後。高瀬さんは、



「俺・・・待ち合わせしてんだった。ゼミの子と。んじゃ皆またな。」


と手を上げ、不自然に去っていく。



「なんか、変だね〜健太郎!」「ね〜」


俺は爽子の手を掴んで、その場から離れた。



「−やくん?」

「風早くん!」

「えっ?」

「ど、どこまでいくの?」



俺は無心で走っていた。そして、いつのまにか人気のいない境内まで来ていた。
祭りの音が遠くに聞こえる。爽子の声ではっと現実に戻った。



「なんか変だよ?」



俺はつないだ手を引っ張り、俺の胸の中にすっぽり収まる爽子を
ぎゅっと抱きしめる。




「きゃっ///か、風早くん???」

「ごめん、しばらくこのまま・・・・。」




それからは何も言わず、爽子はそっと背中に手を回し、抱きしめ返して
くれた。爽子は俺の大事な大事な宝物。離したくない。
いつまでもいつまでも俺は彼女を抱きしめていた。








あとがき↓
そうです。高瀬の好きになった子は爽子でした。いつもはヤキモチを焼くだろう
風早も、相手が相手だけにショックの方が大きく切ないという感じでした。
後2回で終了です。よければ続きを見に来てください。

「野球少年の恋」