「Half moon」番外編 ➊ 前編


補足・番外編リストをまとめて作ろうと思っていたのですが、とりあえず出来た順に載せ
ていこうと思います。一発目、リクエスト第一弾はEpi88の二人が再会した日の補足話。
甘い〜〜夜のつもり。風早目線の話です。そして、また一回にまとめられず前編・後編
でお送りします(汗)題して「After the rain」  興味のある方は以下からどうぞ↓


※この話は「Half moon」の補足話です。本筋は目次からどうぞ!
















〜「After the rain」〜 前編










2ヶ月ぶりに想いが通じた俺たちは沢山話をした。”どんだけ俺は誤解してんだよ”

って自分で突っ込みたくなるほど、彼女は何も変わってなかったんだ。


どくん、どくん、どくん


空港で会った時からずっと心のどこかでブレーキをかけている。なぜならブレーキを

かけないと、一気に走り出しそうだったから。それはまるでブレーキの壊れた自転車

のように、坂道を駆け抜けるように・・・・。




★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜




「あ・・・あの」

「え・・・な、何?」

「お腹空いたね?」

「あ、あああっ・・・そうだねっ」


夕方に差し掛かり、ずっと話していた俺たちは長い時間が経過したことに気付いた。彼女

の動作、言葉一つ一つに心臓がとび跳ねる。アパートの一室。この狭い空間に二人きり。

まるで想いが通じたあの文化祭の日のように、ドキドキしている。彼女の口元、大きな瞳、

白い肌・・・・自然に視線がいってしまう。


(なに考えてんだ・・・・っ)


「ごはん・・・作っていいかな?」

「え?うん!いいの??」

「もちろんっ!作らせてもらったら嬉しい・・・冷蔵庫に何かあるかな?」

「さすがにないよ。男の一人暮らしだもん・・・・」

「あ・・・・・」


拗ねたように言うと彼女は”そ、そーだよねっ”なんて焦って言っている。ちょっと意地悪

したくなる。


「誰かさんが来てくれないから」

「え??誰か?」

「・・・・・・」


ほら、相変わらず冗談が通じない。でも何かを必死に考えている彼女の一生懸命な顔も

本当にかわいくって・・・・。


風早は思わずぷっと吹き出した。


「えっと・・・?」


そしてそっと爽子の髪に触れる。いきなりの俺の行動に目をぱちぱちさせている彼女。

ずっと欲していた。どうしてこんなに好きなんだろう・・・・どうしてそれなのに彼女に向き

合うことができなかったんだろう・・・・って。


風早はせつなそうな目をすると、ぎゅっと爽子を胸に抱き寄せた。


「風早くん・・・・」

「ごめんっ・・・・また自己嫌悪に陥ってた。ははっ」


爽子は風早の手が少し震えているのを感じた。その大きな手が自分の髪をなでる。その温

もりを確かめるように爽子はそっと目を閉じる。それはまだ夢の中にいるようで消えてなくな

りそうな現実。


「お・・・なじ?」

「え?」

「同じかな・・・?まだ信じられないの。風早くんが側にいること・・・」

「・・・っ!」


俺の腕の中で小さな肩が震えている。胸が詰まりそうなほどこみ上げてくる想い。

どれだけ寂しい想いをさせたのだろう・・・?どれだけ泣かせたのだろう・・・。


風早はぎゅっと爽子の肩に置いた手に力を込めた。


「うん・・・同じ。俺も・・・まだ信じられない。爽子はここにいるのに」

「か・・・ぜはやくん」


胸の中に顔を預けていた爽子がそっと風早を見上げた。お互いを真っ直ぐ見つめる。


「でも・・・もう絶対離さない。信じられるまで、ちゃんと現実だと思えるように・・・・離さない」

「うん・・・っ」


どく、どく、どく


彼女の心臓の音が自分の音とシンクロする。同じように早い。


たった一晩。明日になればまた彼女がいない生活。昨日まで会っていなかったのに、こん

な幸せな一日があればまた貪欲になってしまう。そして果てしなく彼女を求めてしまうんだ。


「あの・・・っ・・・・・んっ」


ずっとブレーキをかけていた。今にも走り出しそうだったから。彼女に触れたら、もう、止まら

ないのが分かっていたから・・・・。


風早は爽子を自分から離すと、思いのままに唇を重ねた。


「んっ・・・・か、風早くんっ/////」

「爽子・・・・」


しばらくの間深いキスを重ねた後、風早は爽子と目が合い、ハッとしたように慌てて身体を

離した。そして、かぁ〜〜〜っとなり俯く。


「ご・・・ごめんっ!長い間触れてなかったから、ずっと我慢できなくて////」

「う、ううんっ////」


恥ずかしそうに顔を紅潮させながら瞳を揺らしている彼女。きっと自分も負けないぐらい赤い

顔になっている。彼女の柔らかい唇の感覚が残る。


ずっと触れたかった。


風早はぎゅっと拳を握りしめて俯くと、今度は真剣な顔で爽子を見つめた。正座して向かい

合う二人。


「か・・・ぜはやくん?」

「・・・ずっと我慢してたよ」

「・・・・・」


爽子も真剣な目で風早を見つめる。しーんとしたアパートの一室。夕暮れ時の茜色の光が

差し込む中、行き交う車の音がやたらと大きく感じた。


「俺、田口にずっと嫉妬してた。側にいることが羨ましくて。でも、爽子を縛りたくなくて・・・

 ずっと我慢してた。俺、田口は地雷だったみたい」


俯いて髪をくしゃっとする風早を、爽子はぼーっと頬を紅潮させて見つめている。


「ほんっと・・・・いつも考えてる。あいつに触れられたりしてないか・・とか」


(・・・もう止まんね・・・っ)


いつも思ってた。俺の本心を見せたら爽子は嫌になるんじゃないかって。がんじがらめに

したくないのに、一緒にいると独占欲だけはどんどんと大きくなっていった。


ぼーっと風早を見ていた爽子が突然声を上げた。


「あ・・・・っ!!」

「え?」


爽子の驚いたような声に風早はバッと顔を上げる。


「あのっ・・・・うわっ・・・・そのっ」

「え??何?」


いかにも様子が変になった爽子を風早は不安そうに見つめた。

そして、次の爽子の言葉に風早は自転車のブレーキか完全に壊れた状態になる。


「ご・・・ごめんなさいっ」

「え・・・・何?」


いきなり泣き出した爽子を風早は真っ直ぐ見つめて言った。


「ちゃんと言って。何でも聞くから。・・・もう何の誤解もしたくないんだ」


爽子はその言葉に促されるようにゆっくりと顔を上げると、上目遣いで風早を見つめた。


(うわっ・・・・それやばいんだって////)


「き・・・嫌いにならない?」

「なるわけないって!!」


(それもまたかわいすぎるし・・・・)


爽子といると本当に心臓が壊れるんじゃないかと思う時がある。きっといつかやられる。

そして、次の瞬間心臓が止まった。


「私・・・あのっ・・・田口くんに抱きしめられましたっ」


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


風早は不安そうに揺れている爽子の瞳を茫然と見つめた。






<つづく>



After the rain 後編 へ













あとがき↓
相変わらずまとめられなくてすみません。次で終わります。このお話はRさまからのリクエス
でした。創作意欲を湧かせてもらってありがとうございます。書いていて楽しいぃ〜〜〜♪
それでは後編に続く!(すみません、後編は12日になります)やばいっ13日は別マじゃ
ないですか〜!!テンション上がる♪いや〜さぼってたせいか1ヶ月早いですね( ̄○ ̄;)