「瞳は知っている」5 

※ 前書きから読んでください。こちら⇒前書き
※ 風早×爽子カップルではありません。オリキャラ登場します。


このお話は 「瞳は知っている」    の続きです。
あらすじ*ハルの彼女の爽子に惹かれていく風早。親友のハルはとてもいい奴で風早を
信じている。その中で風早は止まらない想いを悩んでいく。
それでは以下からどうぞ↓










「瞳は知っている」 episode 5







ハルは車好きで、高校生の時から車を買うために必死でバイトをしてお金を貯めてきた。

そして、やっと新車を買ったその日、大好きな彼女をドライブに誘った。


「一番に乗せてもらって・・・ありがとう」

「こちらこそ、突然夜にごめんなっ!!どうしても今日乗って欲しくて」

「と、とんでもない!!すっごく嬉しかったよ。ハルくん、ずっとバイト頑張って

 たもんね。素敵な車だね・・・」


爽子の言葉にハルは嬉しそうに微笑んだ。


「あっもうここで大丈夫だよ。本当にありがとう」


爽子の家の前の道路は狭いので、近くの道路で止めるように制止した。


「俺の運転技術を疑ってるな〜〜〜狭くても大丈夫なんやけど?」

「そ、そんなんじゃないよ〜〜〜!本当に狭くて・・・!!」

「わははっ分かってるって。もう少し返して(ツッコミ)欲しーんやけど。まぁそれが爽子

 やから・・・・やっぱりかわいいわ」

「/////////」

「/////////」


ハルは爽子が真っ赤になって俯くのを見て、恥ずかしいことを言ったことに気付き、

つられるように赤くなった。


「じゃ、じゃあ、」


爽子がドアを開けて出ようとすると、ぐいっと手を引っ張られた。


「?」


そしてハルは振り向いた爽子を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。


「ハ、ハルく!?////」

「俺、大好きな車に大好きな彼女を乗せることができて幸せや・・・ずっと夢やってん」


そう言って、柄やないけどな〜〜とハルは恥ずかしそうに笑った。


「だから、ずっと助手席に乗ってや!これからもずっと」

「え・・・」

「他の奴とか好きにならんとってや・・・」


爽子はいつになく弱気なハルを感じた。ハルは自信のあるタイプではないがマイナス的な

発言はしない男だった。爽子はハルに抱きしめられながらそっと視線を下に落とした。


「他の人・・・好きになんてならないよ・・」

「爽子・・・」


ハルはそっと爽子の唇に自分のを重ねた。爽子は恥ずかしそうに眼をぎゅっと瞑った。


”他の人・・・好きにならないよ”


爽子は、その言葉を自分の中で反芻しながら、脳裏に浮かぶ風早の顔を必死で消そうとした。



* * * * *



「あ・・・・今日はないんだ」


ある日曜日同じようにいつもの草野球場を訪ねた爽子はがらんっとしたグランドを見て

残念そうに呟いた。

とぼとぼと爽子が来た道を帰ろうとした時、聞き覚えのある声がした。


「黒沼―――!!」

「え??風早くん?」


はぁはぁはぁ〜〜〜っ


いかにも全力疾走で走ってきたと思われる風早が息を整えながら言った。


「よかった・・・はぁはぁっ間に合って」

「えっと・・・どうして?」

「いや、今日もともと休みの日だったんだけど、黒沼がもしかして来るんじゃないかって

 来てよかった!」


そう言って、風早は思いっきり笑った。


「ご・・・ごめんなさい。わざわざ・・・」


そんなのいーよ!いい運動になった!と屈伸運動をしている風早をじっと見て爽子は

恥ずかしそうに言った。


「あ・・・あの、よければお茶でもご馳走させてください!」

「え・・・いいの?」

「あっ風早くんが本当に大丈夫なのだけれどっ・・・」

「嬉しい!行く!」


(二人きりだけど・・・・いいかっ。別に友達なんだし)


風早頭に浮かんだ罪悪感をぶんぶんと拭った。

変哲のない休みが彼女に会った瞬間、魔法がかかったみたいに特別な日になる。

風早は彼女が隣にいる幸せを噛みしめた。


二人はグランド近くの喫茶店に入ることにした。


(二人きりなんだ・・・・)


お茶一杯で何気ないいつもの話しをする。ハルの話で笑ったり、大学のことなど。彼女と

いるとどうしてこんなに楽しいんだろう。なんでこんなに心が和むのだろう。風早は今まで

感じたことのないような感覚を覚えた。高揚した気持ちと同時に起こる罪悪感。


「黒沼さ・・・・野球を見に来てることハル知ってんの?」

「あ・・・言わないといけなかったかな・・・」

「知らないんだ・・・・」


びっくりした。まさか彼女が言ってないなんて思ってなかった。って言うか別に後ろ

めたさがないということとも言える。そうだよな。後ろめたいことなんて何もない。

俺の気持ちの他は・・・。


彼女は物静かだけど、こちらが言ったことを真剣に聞いてくれ返してくれる。その物腰

一つ一つが俺の心を捉えて離さなかった。もう、認めずにはいられなかった。止められ

ない気持ち・・・・これが”恋”なのだと。


思わず彼女の動く唇を見つめる。小さな唇。ほんのりピンクの頬。白い肌。

柔らかいんだろうな・・・彼女の唇。

ハルは彼女に触れることができる唯一の男。その時、胸がジリッと痛んだ。


「−くん、風早くん??」

「あっごめん」


すっかりトリップしていた自分が恥ずかしくなり、思わず俯いた。


(俺、何考えてんだ。やばっ・・・////)


「あのさ、どうして黒沼は野球を見に来てくれるの?」

「あ・・・・その、皆カッコよくて・・・」

「かっこいい?」

「うん・・・」


運動音痴の自分は運動が出来る人に憧れていたことや、好きな事をキラキラした表情で

楽しそうにしている子ども達を見るのが楽しくて・・・・と彼女は恥ずかしそうに言った。

嬉しかった。彼女らしい。そんな風に見てくれるなんて。


「嬉しかった・・・・」

「え?」

「風早くんのユニフォーム姿・・・初めて見れた」


風早は見とれるように爽子の柔らかな微笑みを見ていた。自分に理性というものが

なかったら、きっとここで抱きしめてる。そんなこと言われたら・・・・。

君は知らないだろう。何気ない一言で右往左往している俺の心を。


”嬉しかった・・・・”


(俺の心の声が漏れたと思った・・・・/////)


「ずるいな・・・黒沼は」

「え?ずるっ?」


風早はしばらく俯いた後、ぱっと赤い顔を上げた。


「−秘密」

「え?」

「・・・誰にも言わなくてもいいよな。」

「え?何が?」

「ううん・・・何でもない」


彼女との心地のよい空間は手放せなかった。風早は自分に言い聞かせるように言った。


「来週はあるから、見に来て!」

「・・うん!」


風早がそう言うと、爽子は心からの笑顔で嬉しそうに笑った。


彼女の笑顔もきれいな黒髪も、白い肌も女の子を感じさせる甘い香りも・・・全て、

ハルのものなんだ。だから、この空間だけ守りたい。それぐらい許して欲しい。


「それじゃね!」

「うん。また!」


彼女と別れた後、風早はくるっと進行方向を向き、ぎゅっと胸を押さえた。いつもより

痛む胸を。こんな想いをいつまで抱えて生きていくんだろう。


風早はせつなそうに青い空を見上げた。


一方、爽子も風早の後ろ姿を名残惜しく見ながら、ぎゅっと胸を掴んだ。








あとがき↓

爽子目線はありませんが、爽子も初めての恋じゃないだけに、自分の気持ちが恋だと

分かっています。爽子の性格から理性を優先するだろうという妄想。この二人は絶対

人の不幸の上に幸せは成り立たないかな?と。勝手の想像しています。さて、明日は

別マ感想かな。フラゲとかできたらいいのになぁ〜〜それではまた遊びに来て下さい。

 「瞳は知っている」  UPしました