「Half moon」番外編 ➓ 「夢の中の恋人」

こちらは「Half moon」のスピンオフ 光平の話です。(ん・・・?主人公だっけ?)

光平の悶々とした爽子への想いが夢の中で暴走していきます。怪しい光平の

どろっとした闇の部分が出てきて、少しだけエロいかも。苦情受付ませんので

自己責任で、以下からどうぞ↓






















いつもベッドに入ると脳裏に浮かぶ彼女の姿。目を瞑ると彼女がいる。いつの間にこんな

に深く俺の中に根付いてしまったのだろう。


北海道を離れる時、彼女との繋がりを出来るだけなくそうと思った。


風早があの仲間と一緒に居る限り無理だと分かっていたけどこのまま会わなかったら忘れ

られるんじゃないかって。


彼女には恋人がいる。それも熱い目で彼女を見ている恋人が。


見ていれば分かる。生半可な想いで彼女を大事にしているんじゃないって。いや、例えそ

うじゃなくても、人のモノを好きになるなんて俺には考えられなかった。


のに・・・。


だから諦めようと思ったのに。想いを加速するわけにはいかない。あいつらが言う”風早”

がなぜ彼女の恋人なんだろう・・・。何回思ったか分からない。そして胸に広がるもやもや

した思い。それがいつまでも経っても取れなかった。


「ふぅ〜〜〜〜〜っ」


真夏の熱帯夜、光平はごろごろとベッドの上で何回も寝返りを打っている。そしてタオル

ケットにぎゅっと抱きつく。


もう時刻は真夜中。それなのに何回瞼を閉じめても眠れない。彼女は2日前からこちらに

来ていると聞いている。明日皆で会うことになっていた。


今、何をしているんだろう・・・。


光平は無理に眠ろうとまた目をぎゅっと瞑る。しかし、またしても浮かんでくる彼女の姿。


あいつと一緒にいる彼女。


思い浮かべたくもないのに、彼女は頬を紅潮させてうっとりした顔であいつを見る。


今夜もあいつに抱かれるのか。


「・・・っ!」


この頃から光平は毎日、胸の中にどろどろとした想いが渦巻いていくのを感じていた。

それは見たくなかった自分の中にある闇の部分だった。



* * *



光平は祭りの夜、混雑する人ごみの中で必死で彼女に向かって手を伸ばした。ただ無心

で彼女を求めた。俺の腕の中で感じた柔らかい感覚。彼女の香。ずっと触れたかった。

そして触れたら止まらなくなった。夢の中ならこのままずっと離さずにいられるのに。

このまま彼女の唇に触れることができるのに・・・。



”『風早ももみくちゃにされた?・・・風早?』

 『あっああ・・まぁな。すごいな仙台七夕祭りは・・・ははっ』

 『・・・・・』”


風早はじっと俺を見ていた。あの時・・・・。彼女をこの腕に抱きしめた時。俺は彼女を

離す気なんてなかった。むしろ宣戦布告だった。・・・見ろよ。俺を恨めばいいよ。


彼女を好きになってしまった。


こんな気持ちは初めてだった。彼女が笑っていたら嬉しい。彼女が悲しみの中にいるなら

俺が支えたい。彼女の全てを抱きしめたい。


例え、あいつが同じ気持ちでも、もう・・・引けなかった。



* * *



『田口くん・・・本当はずっと好きだったの』

『黒沼さん・・・・いや、爽子?風早は?』

『だって・・・・田口くんが好きになってしまったのっ』


こんな想い知らない。胸の奥がきゅうっとなった。


彼女が泣きながら俺の胸の中に飛び込んだ。華奢な肩が震えている。


ねぇ・・泣かないで。俺も君が好きだから。好きで好きで全てを投げ出せるぐらい好きなんだ。

俺は彼女の柔らかい唇に何回も口づけた。角度を変えて何回も何回も。全身が痺れるように

熱くなっていくのが分かった。


『光平ってこんな奴だったんだ』


蓮・・・たとえ蓮に何を言われようと引けない。そんな目で見ても俺の気持ちは変わらない。

風早より俺の方が付き合いは長いのに、何で蓮はあいつの味方をするの?そんなに悪いこと

なの?譲れない想いってあるんだ。


『爽子・・・?』


俺の胸の中で彼女の身体がびくっと反応した。


『風早くん・・・・』


彼女の顔がみるみる変わっていく。そんな顔俺に見せたことない。何でそんな笑顔なの?

ねぇ、どこに行くの?俺が好きなんだろ・・・・?待って・・・っ!


「ーて・・・・待ってっ!!」


がばっ


「はぁはぁはぁ・・・・」


光平は起き上がると額に手を当てた。ぐっしょりとした汗を掌に感じた。サイドテーブル

の上の時計に手を伸ばした。


時刻はまだ朝の4時だった。


光平は膝に肘を置いて、手で顔を覆った。


「・・・・夢か」


彼女に触れてからずっと俺はおかしかった。こんなに欲してしまって自分が自分でいられな

くなっている。彼女は女で俺は男。もう、ただの同僚ではいられない。普通ではいられない

んだ。一回触れた肌は燃え上がるように熱が取れなかった。


光平は夢の中の蓮の目を思い出す。そして頭をぶるぶるっと振った。


もう・・・引けないんだ。


お願いだ。そんな顔あいつに向けないで。・・・心の中で叫んでる。


彼女が風早を見上げて頬を染める。

風早は簡単に彼女に触れる。その当たり前なことがたまらなく嫌だ。段々と自分が自分でい

られなくなっている。こんな感情があったなんて。俺の中で黒く渦巻く感情。


ドクドクドクッ



ある日、神様は俺にチャンスをくれた。蓮からの突然の電話。


”『風早が彼女を探してる』”


その時、彼女は俺の手の中にいた。さらさらした髪の感覚とシャンプーのいい匂いが鼻孔

をくすぐる。


ドクッッ


異様なほど興奮している。妖しいほどぞくぞくしていた。こんな感情持ってたんだ。客観的

に自分を見る。彼女に出会わなかったら知らなかっただろう。

俺は咄嗟に風早に自分の存在をアピールした。本能的なものだったと思う。案の定・・・・


風早は捕まった。


その時、悪いとか卑怯だとか感じなかった。ただ、目の前の彼女を手に入れたい。それだけ

だった。


きっと俺の顔は笑っていた。


壊れてしまえばいい。


俺の中の悪魔が叫んだ。どす黒い感情が次々に流れ出る。ごめん・・・俺はこんな男なんだ。

だからこそきれいな君が好きなんだ。


俺はその日の夜初めて、夢の中で彼女を抱いた。


そして必ずあいつが現れる。


『爽子・・・』


この一言で彼女を笑顔にさせて連れて行く。でもこの日は彼女を離さなかった。絶対離すつ

もりはなかった。光平は彼女の身体をぐっと抱きしめると、風早を睨んで言った。


『彼女は俺のものだから』

『・・・・何した?』


風早の目が光った。


『お前と同じことだよ。彼女を抱いた』


風早はまるで豹のような鋭い目をしていた。こんな風早は見たことがなかった。


『・・・何言ってるか分かってんの?』

『か・・風早くんっ』


彼女が立ちあがろうとしたが、俺は見せつけるように彼女に口づけた。


『だから言ったろ。もう俺のもんだから』


風早がすごい形相で俺のシャツを掴んだ。そして拳を振り上げる。


ああ、殴れよ。それで気が済むんならいくらでも殴れ。俺はどんなに殴られても彼女を離

さない。彼女も俺が好きなんだから。


それなのに・・・・。


『離して。風早くんが好きなの・・・』


どうしてそんなことを言うんだろう。俺のことを好きと言ったのに。


どうしてあいつのところに行くの?


彼女は簡単に俺の腕の中をすり抜けて行った。そして風早に抱きつく。風早は俺に見せ

つけるように俺の前で彼女を抱き始めた。頬を赤らめて嬉しそうに笑う彼女。


そんな顔見せないで。


俺は結局あいつにはかなわないのか?


「くっ・・・うぅ・・・うっ」


この想いの先はどこにいくんだろう・・・。この胸が張り裂けるような苦しい気持ちはいつか

消える時が来るんだろうか・・。


「うぅ・・・っ」


光平は起き上がると全身に異様なほどの倦怠感を感じた。そして頬に手をやると、うっす

ら濡れている。夢の中のあまりにも悲しくて惨めな気持ちは消えることなく、残っている。


「ううぅ・・・・くっ」


それから俺は大声で泣いた。こんなにつらいなんて。どうしてあいつより彼女に先に会わ

なかったんだろう。もし俺が先に会っていたら、彼女は俺を選んだんだろうか・・・。



今日も俺は夢の中で彼女を抱く。

いつか風化して欲しいようでして欲しくない彼女への想いを抱えながら・・・・。



<END>

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あとがき↓

リクエスト頂いたCOCOTANさま、いかがでしたでしょうか・・・。思っていたものと違って
いたらすみません。あの時の光平が一番やばかっただろうと思います。風早が憎かった
だろうし。さて、これでとりあえず番外編終了します。また思いついたら書くかも。書きた
いものは頭の中で妄想としてあるんですが、時間がない。一日が48時間だったらいいの
にね。そでれは皆様、暑いので体調など壊されませんように・・・。ちなみに夏大好きな
私は元気です!