After Glow 1

自分の人生を悲観していた高校生が爽子に出会って変わっていくというよくある話。
オリキャラ主人公、爽風CPは揺らぎなし・・でありながらオリキャラ×爽子の恋物語でもある。
基本設定として大学4年間を札幌で寮生活していた爽子と、地元の大学通いだった風早が遠恋を
経て、新社会人になったところから始まる。爽子は高校の保健の先生、風早は大学卒業後家業を
継いでいるという原作後を予想した設定。そして前半は風早の出番は少ないという・・・今回は
ガッツリオリキャラ&相変わらず爽子至上主義な話になるので要注意。
それでもいい方は以下からどうぞ↓




















あの頃、俺はすべてのことに投げやりで、日本がどうなろうと、地球が滅びようと、
どうでも良かった。ただ自由になりたい。すべての呪縛から解き放たれたい。そんな
ことばかり考えてた毎日。今から考えたらそんな考え自体が子どもだったのだろう。
人生何が起こるか分からない。期待していない自分の人生に対して、根底から覆す出
会いが待っているなんて予想もしなかった。



なぜ彼女といると前向きになれるのだろう?
なぜ彼女といると自然に笑顔になっているのだろう?
なぜ彼女がいるだけで全てがきれいに見えるのだろう?
世界のすべてが変わった。


それが恋だと気づいた時、俺の人生はすでに変わっていた。
与えられた人生を悲観するのではなく、その人生をどう生きるかが
大切だと言うことを教えてくれた人。



彼女がくれたたくさんのものは今も俺の中に生き続ける。
たとえ、その先の人生が交わっていなくても・・・


back in the afterglow of her side face





After glow 1














がさっ


「・・なに?」


ある昼下がり、絶好の昼寝場所でいつも通り本を読んで寛いでいると、さきほどから感
じる気配に九条は面倒くさそうに眼鏡を上にあげ本から視線を外した。
だいたい、この授業中にこの場所に来る人間はいない。休憩時間でも俺を見つけると、
スルーする人間が多いというのに。


「あ、あの〜〜・・」
「うわっ!」


背後に感じた声がいつの間にか前になっていて、そこに全身から負のオーラを放ってい
るような長い黒髪、白い肌の人物が這いつくばるような体勢で草むらの中から現れた。
そう・・これはまさに


「リアル貞子」
「!!」


と思わず口にしていた。
するとリアル貞子は俯いたまま口角を上げる。まるでニターっと笑っているように見え
て俺は思わず顔を歪める。でも元々あまり物事に動じない性格。幽霊が見えようとビビ
るわけもない。するとリアル貞子はまだ俺をじっと見ている。


「・・なに?」
「す、すみません・・私」
「?」
「本物ではありません・・」
「・・はぁ?」
「本物の”貞子”ではありません。でも小学生の時から”貞子”ってあだ名をつけられまし
 て・・。その、霊感などあったらいいのですが。それはなくってですね・・」
「・・・」


その女は俯いたまま訳の分からないことを喋り続ける。あ、幽霊じゃなくて人間なんだ
とか、冷静に思ってる自分も不思議だが、この女の言っていることも不思議だった。
なぜか俺はリアル幽霊との会話を続けた。


「・・そんなあだ名つけられて嫌じゃないわけ?」
「え?いえっ・・それは”愛称”らしいので・・嬉しかったというか・・」


そう言って何だか嬉しそうにポリポリと頭に手をやっている女を俺はじっと見て言った。


「・・はぁ。で?」
「はい?」
「だから・・で?なんでここに居るんですかね?」
「あっ・・それはですね」


その時、ごそっと茂みから前に出た女の服装でやっと気づいた。この場所はかなり草が
ぼうぼうに茂っていて先ほどまで女の顔しか見えてなかった。だから余計にリアル幽霊
に見えたのだろう。俺は”なるほど”と思った。この時間にここにやって来る訳。噂話は
一切興味はないがクラスの女子が喋っていたのが耳に入ったことがあった。新任の保健
の先生が ”貞子”みたいだと。


「あ・・保健のセンセ?」
「は、はいぃぃ!!」


その勢いのある返事に思わず引く。そして女はやっと顔を上げた。


「今年から養護教員をしています、黒沼爽子と申します!!」


なぜか嬉しそうに言うその保健の先生を俺はまじまじ見つめる。顔を上げると貞子とい
う感じはなく、結構整った顔に思った。


「・・で?俺を授業に戻そうって呼びに来たわけですか?いかにも新任の教師がやりそ
 うなこと・・「え?・・授業?」」
「へ?」


しばらく二人の間に沈黙が走る。


「出れるん・・ですか?」
「??」
「いや、いつもしんどいのかなって・・思って保健室で寝たらどうかと誘おうと思いな
 がらもなかなか勇気が出ず・・でも、そのっ今日は勇気を振り絞って」
「・・・・」


そして彼女の指差した方向を見ると微かに保健室が見えた。保健の先生の思考もよく分
からないが、保健室が見えることに俺はうんざりした。


(ずっと見られてたってわけか・・)


「いつから?」
「あっ・・ごめんなさいっ・・その怪しいものではなくてですねぇ、ただずっとお話
 をしたくて気がついたら足が勝手に・・あ、十分怪しいですねっ」
「だから、いつから?」


すると彼女は気まずそうに”赴任した時から・・”と小さな声で言った。
赴任したときからと言うと2ヶ月前。俺は木にもたれかかりながら不機嫌なため息を
ついて言った。


「ずっと見てたわけですか?」
「・・はい」
「もしかして俺の名前も知ってるとか?」
「2年B組 九条慧(ケイ)さん」
「じゃ、俺の噂も知ってるでしょ?」
「噂・・?」


きょとんとした彼女の顔を見て俺は確信した。この女は何も知らないと。


がばっ


「きゃっ・・!」
「せんせ、噂はちゃんと知っておいた方がいいですよ」


この時、俺はほんの少しの刺激を求めていたのかもしれない。この養護教員をからかっ
て見たくなった。九条は見下すように口角を上げると、爽子に覆いかぶさる形で両手首
を掴んだ。爽子は目を丸くして瞬きもできずに九条を凝視する。


「この状況把握してますか?誰もいない裏庭に健康的な男女二人、野外プレイもAVに
 ありがちなシチュエーションですよね」
「・・エーブイ?」
「生徒だと思って不用意に近づきすぎると危ないですよ」
「あの・・っでも!」


爽子の白い首筋に九条の直毛の茶色い髪がさらっと霞める。そのまま顔を埋めようとし
た時、彼女が言った。


「お・・お役に立てないかとっ・・」
「・・・はぁ?」


俺は思わず顔を上げた。そして彼女は横たわったまま拳を握り締めて力強く言う。
まるで決意表明かのように。


「あなたの・・お役に立ちたいんですっ!!」


彼女の目は潤んでいるが真剣で、なぜか目を離せなくなった。
これが彼女との出会い。今から考えたら世の中がどうなってもいい、地球が滅びても
いいと言っている投げやりな男がほんの少しでも刺激を求めるあたり、おかしかった。


どうでもよくない、彼女との生活はここから始まった。





After glow 2














あとがき↓
性懲りもなくまだ書くわ・・と思いますが、これは以前から書こうと思ってたもの。
そんなに長くないと思うんですが、未完で終わらないように頑張ります。今までも
こんな話は書いてたんですが、これは「 H○ney 」(一応ぼかしておきます)とい
う大分昔の少女漫画をそのまま爽風で書けないかなと妄想したものです。基本爽風
なんですが、またまたオリキャラ愛溢れた話です。(ほんっと性懲りもなく)なか
なか風早は出てきません。九条君はあの話の中の主人公風に書こうと思ってます。
爽子のキャラはあの話の主人公とはかけ離れているのですが、保健の先生っぽくも
ないしね。まぁ、ネタとして何でもありです。爽子だったら・・・?というあの話
に当てはめて妄想してみました。とにかくあの話のオリキャラが書きたかっただけ
なんですね。相変わらず暴走すると思いますが、読みたい方はどうぞ〜〜!(^^)!