After Glow 2

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は
大学を卒業して家業を継いでいるという設定。原作高校卒業後のパラレルです。


☆保健室から見ていた九条に勇気を持って近づいた爽子だが襲われそうになり・・・?


この話は ★ After Glow 1 の続きです。










After glow 2











一瞬、固まった九条が爽子を見下ろしながら嘲笑するかのように口角を上げて言った。


「・・役に立ちたい?」
「は、はい・・」
「なんで?」
「もし・・何か役に立てたら嬉しいと思って・・・」


そう言って微かに震えながらも視線を逸らさない爽子を九条はまじまじ見つめると、猥
らに目を細めた。


「じゃ、やらせろよ」
「・・・え?」
「俺の役に立ちたいんだろ」


明らかに言葉遣いが変わった九条を爽子はじっと見つめる。爽子の真っ直ぐな澄んだ目
に一瞬、視線を逸らしたのは九条の方だった。


「・・それで九条くんの気が済むのなら・・」
「言っとくけど脅しじゃないよ」
「・・はい」


そう言って爽子は着ていたブラウスのボタンに手を掛けると、怯んだのは九条の方だった。


「・・ちょっ、あんたー「ーいっ!!」」
「!!」


九条の言葉を遮って背後から叫ぶような声が聞こえた。振り向くと物理教師の山野井が
立っていた。


「おい、そこ何してるっ!?」
「!」


慌てて爽子は飛び起きると、バッと立ち上がる。そしてブラウスを慌てて握りしめた。


「黒沼・・先生?九条!?」


驚いた表情で山野井は眉を顰めて眼鏡を上げた。


「珍しいじゃないか・・黒沼先生と九条のツーショットは」
「あ・・えっとその」


上手く繕えないで言葉が出ない爽子に山野井は温厚な笑みを浮かべた。山野井は30代
後半の生徒に人気な男性教師だ。髭を生やしているので髭の井と生徒から呼ばれている。


「大丈夫ですよ。黒沼先生。そいつ意外と大人ですから」
「え・・」


爽子が九条をちらっと見ると、九条は不機嫌そうに明後日の方を向いていた。爽子はバ
クバクしている胸をぎゅっと押さえながら二人を不思議そうに見つめる。


「九条、次の授業は出ろよ」
「・・考えておきます」
「考えるなよ、そんなこと。じゃ、黒沼先生戻りましょうか。保健室に生徒さん来てま
 したよ」
「あっ・・はい」


そう言って山野井はそのままスタスタと九条を強制することなく去っていく。爽子は後
髪を引かれながらも山野井について行った。九条は何事もなかったように再び木にもた
れかかって本を読み始めている。山野井はちらっと後ろの爽子を見て言った。


「あいつになんかされましたか?」
「い・・いえっ」


爽子は堅い表情でブラウスの胸の部分を握りしめながら首をぶんぶんと横に振った。山
野井は不思議そうに首を傾げた。


「ほんと珍しいな」
「え?」
「あんまり人に絡む奴じゃないのでね」
「・・・あのっ」
「はい?」


山野井が後ろを振り向くと神妙な顔で爽子が言った。


「私が絡んだんです」
「はぁ?」


眉間に皺を寄せて真面目に言う爽子を見て、山野井は前を向いて思わずぷっと吹き出し
た。あまりにも真剣だからだ。


「あいつが、気になりますか?」
「・・はい」
「面白いね〜〜黒沼先生」
「そ・・そうですか??」


なぜ笑われているか分からない爽子ははてなマークを頭にちらつかせながら不思議そう
に山野井を見つめた。


「なるほどねぇ・・九条をねぇ」
「・・・・」


4月に初めて保健室に入った時からあの場所に居た彼。授業は出ないのかな・・?なぜ
そこに一人でいるのだろう。でも新卒のなり立てほやほやの養護教員に何が言えるのだ
ろう?まだ自信がなかった。でもずっと気になっていた。なぜ諦めきったような目をし
ているのか。そのうち、色々調べて彼の名は”九条慧”ということを知った。


「・・黒沼先生はなぜ保健の先生になろうと思ったのですか?」
「あの・・言葉で上手く伝わるか分からないのですが・・」


役に立ちたいと思った。高校の時の文化祭で”貞子の黒魔術相談室”をやった時、人の喜
ぶ顔が心から嬉しいと思った。人に喜んでもらえるって嬉しい。私は迷わず保健の先生
の道を選んだ。そして念願の仕事に就いた今、出来ることから一つ一つ頑張っていこう
と保健室に”お悩みポスト”というものを設置した。


「高校の時って悩みが多いと思うので、保健室がホッと出来る場であれば・・・と思い
 まして・・」
「なるほど、先生は人が好きなんですね」
「はいっ・・上手く接することは出来ないんですが・・一生懸命頑張りたいと思います」
「はは、いいねぇ。新卒はキラキラしてて。先生なら心開くかもなぁ・・あいつ」
「・・・あの、九条くんの噂って?」
「噂?あぁ・・一匹オオカミってやつかな」
「一匹オオカミ?」


山野井先生は詳しく教えてくれた。成績優秀な上にかなりのイケメンとくれば入学した
頃からから注目されないわけはなかった。しかし頭が良過ぎて教師を馬鹿にするような
態度も見られ、授業を真面目に受けない彼に注意すると逆に言い負かされるという場面
が多々あったそうだ。そういうことからプライドが崩壊し、学校に来れなくなったとい
う教員もいるそうな。今や教師は腫れ物に触るように彼に接し、生徒も積極的に関わる
人はいない。


「正直、あいつの頭の良さは現職員より上ですからね」
「す、すごい・・っ」
「でも血ですかねぇ・・あの扱いづらさは」
「血?」
「彼の父親は代議士でしてね、また祖父も県会議員の議長まで務めた名門一家なんです
 よ。そのサラブレッドがなんでこんな道立の高校に入学してきたんだか・・」
「山野井先生は九条くんの担任の先生ですか?」
「いや、違うんだけどなんか気が合ってね・・ははっ」
「??」


なぜか山野井は何かを誤魔化すように白々しく声を出して笑った。


キーンコンカンコン


「あっ、授業だ!じゃ、先生あいつのことよろしく頼みますよ」
「えっ・・?」


そう言って山野井は小走りにその場を去っていった。山野井を見送った爽子はぐにゃっ
と脱力するようにその場に座り込む。


「あぁ・・怖かった」


実はまだ足がガクガクしている。こんなことで動揺していてはこの仕事が務まらないと
思いながらも人生未熟者の自分が平然と対応できるわけもなく内心バクバクだ。
でも・・知りたかった。彼の内面が。


爽子は座り込んだまま空を見上げた。


「・・色々勉強になることばかりだなぁ」


爽子はそう呟いて、白衣のポケットから一枚の紙を取り出した。それは一週間前、初め
て”お悩みポスト”に投函されたものだった。そこには”助けて K”と一言書いてあった。
その手紙を見た時に彼の顔を思い浮かんだ。どうしてそう思ったのか分からない。なぜ
か彼からのSOSだと直感的に思った。それは願望だったのかもしれない。あの諦めき
った目を見た時から気になっていることは確かなのだから。


「よし、一歩ずつ頑張るね・・・風早くんっ」


爽子はそう呟くと、決意新たにもう一度、青空を見上げた。




After glow 3


















あとがき↓
やっと次に風早登場です。相変わらずオリキャラ好きです!(^^)!