After Glow 14

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は
大学を卒業して家業を継いでいるという設定。原作高校卒業後のパラレルです。


☆ 九条の恋を密かに応援する山野井。そんな山野井の気がかりとは・・?


この話は ★After Glow 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 の続きです。













After glow 14













「黒沼先生、あいつ随分変わりましたね」
「・・え?」
「九条ですよ」


職員室に資料を取りに来た爽子に山野井は声を掛けた。爽子は嬉しそうに頷いた。


「そうですね。目が、優しくなったように思います」
「やっぱり俺が思っていた通りだな」
「え?」


不思議そうな顔で純粋な目を向ける爽子に山野井は思わず照れる。


「その汚れのない目は俺には眩しいなぁ。でも負けず劣らずあいつも純粋な奴だから先生
 なら心を開くと思ってたんですよね」
「開いて・・くれていたらいいのですが」
「まぁ、全部じゃないでしょうけど。抱えているもの大きそうだし。環境的にね」
「やっぱり・・なにか悩みを持っているんですよね」


役不足・・とばかりにしゅんっとしている爽子に山野井はにっこりと微笑んだ。


「先生になら、きっといずれ全部出すと思いますよ。・・ところで」
「?」


そこまで言うと山野井は言いにくそうに視線を泳がし、机の上の資料にわざと目を通すふ
りをしてさりげなく聞いた。


「黒沼先生は・・彼氏とかいるんですかね?」
「え?・・え!?///」
「あはは・・そんな動揺しなくても。いるならどんな人かなと思いまして。変な気はない
 ですよ〜〜自分、嫁いますし」
「そ、そんな変な気なんてっ・・先生が」


(どうせ、あいつは聞けてないんだろうしな)


真っ赤になっている爽子を見て山野井は確信した。”いる”ということを。それを知った時
の九条の顔が自然に思い浮かび、山野井は内心ため息をついた。


「・・長い付き合いなんですか?」
「あっ・・高校の時からで・・。大学は離れていたのですが」
「へぇー俺んとこと一緒だな。俺も奥さんとは高校の同級生でね」
「わ・・そうなんですねっ!」


爽子は”恋バナ”とばかりにぱぁぁと顔を輝かせる。


(彼氏がいるのにコレか・・)


と山野井は心で呟きながらやはり九条のことを思わずにはいられなかった。


「初恋は・・実らないって言うしな」
「え?」
「いや、何でもないですよ」


初恋かどうかも分からないが人を本気で好きになるというのは長い人生の中でもそんな
にあるものではない。出逢えるだけ幸せなのだ。きっと九条にとって爽子はそんな出逢
いになるに違いない。不思議なほどそんな予感がしていた。だからこそ・・・


「彼氏のこと、好きですか?」
「はい」
「!」


山野井がストレートに聞いたことに爽子は即答した。そこに何の躊躇も感じられなかっ
た。実直な爽子らしいと言えばそうだが、本当に好きなのだろうと思った。山野井はふ
と表情を緩める。


「ま、九条のことはよろしくお願いします」
「え?九条くん?」


彼氏の話をしていたのになぜか九条に切り替わったことに爽子は戸惑ったが、山野井が
九条に親身になっていることに穏やかな気持ちになった。


「山野井先生もいますし。私は逆に助けられてばかりです。どこかで頼ってしまってい
 て、生徒さんだというのに本当にお恥ずかしい話です・・」
「へー先生が頼る・・ですか?」


すると爽子は頬を染めて照れたように言った。


「なぜか・・九条くんがいると気が緩んでしまいます」
「へぇ・・またなんで?」


山野井はニヤニヤして聞くと、爽子がう〜んと眉を顰めながら考え込んだ。そしてポン
ッと閃いたように手を叩くと目を輝かせて言った。


「いとこのお兄ちゃんに似ているんです。そうだ・・・!!えーじ兄ちゃんだっ!!」
「あ・・・そう」


山野井はがっくりいという風に肩を落とすと、”とにかくあいつをよろしく!”と去って
行った。爽子は深々と頭を下げると、目を細めて山野井の大きな背中を見送った。


(九条くんの悩み・・・一体何なんだろう・・?)


代議士の家系で生まれ、厳格に育てられただろう。家の話は一切しない。人と関わりを
持とうとしなかったのも何か、環境的なものが関わっているのだろうか・・・
爽子は学校で初めて会った時の九条の目を思い出し、表情を曇らせた。


「・・今は相手にされてねーわ、九条よ。ガンバレ」


その頃、同じく九条を思い浮かべていた山野井は帰り道、寂しげな表情でそう呟いた。



* *


「お前・・・」


九条は教室の前で待ち構えていた人物に驚きの顔を向けた後、眉を顰めた。
そこには世間一般で”美人”と言われるだろうスラッとした女子が九条に笑いかけていた。


ざわざわ・・


「ちょっと〜〜九条くんと彼女・・なんで一緒に居るわけ?」
「あの子、転校生でしょ?知り合い?」
「まさか、彼女とか??」
「うっそ〜〜〜?貞子ちゃんは?」
「でも、妙にお似合いなんだけど・・」


美男と美女で見つめ合っている姿に周りはざわめきたつ。明らかに二人は目立っていた。
その転校生と言われた女子は唇に緩やかな弧を描き、九条を睨むように見つめて言った。


「久しぶり」


しかし、笑みを浮かべながらもその目は決して笑っていなかった。







After glow 15 













あとがき↓
一気にいかなかればまた止まってしまう・・!時間を止めてはイカン!