「Once in a blue moon」(110)最終話


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 の続きです。


☆ 人に支えられて生きていることを実感した蓮は前を向けるようになった。長い年月をかけ
 て辿り着いた今。さて、その先の蓮は・・・?最終回です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 110 ‥…━━━☆

















それから風早家と蓮はいつもの日常に戻った。蓮は今までより頻繁に風早家に遊びに
来ては結月と遊んで、翔太や爽子と飲み明かすという家族同然に付き合いをしていた。
もう以前のように心がすれ違うことはない。そんな生活が1年ほど続いた後、蓮の転
勤が決まった。そして今は東京にいる。


* *


「わぁ・・きれいな蒼い月だぁ」


爽子は夜空を見上げると感嘆の声を上げた。この夜、風早家は高台にある近くの公園
で月鑑賞をしていた。ミーンミーンとセミの鳴き声が響いている。北海道の短い夏の
ある夜、奇跡が起こった。今夜は今月2回目の満月。そう、”blue moon ”だった。


「ほんとすごいなぁ・・こうやって3人で見れるなんて」


翔太がそう言った時、3人は同じことを思った。”ここに蓮がいない・・”と。
蓮の転勤が決まった時、結月がどうなるか二人は心配だった。しかし別れの時意外に
も結月は泣かなかった。しっかり笑って”バイバイ”が出来たのだった。


「ゆづ・・蓮がいなくなって、寂しい?」


夢中で月を見上げている結月に翔太が問いかける。結月は小学3年になっていた。艶
やかな黒い肩までの髪を揺らして頭を横に振る。


「寂しく・・ないよ。だって一緒だもん」
「え・・?」


そう言って結月は夜空に浮かぶ月を指差してにっこりと微笑んだ。


「蓮もお月さまを見てるでしょ。つながってるんでしょ?」


そして結月は以前、爽子が話したことを口にした。


「わたしの名前は”離れているものを結びつける”ってお母さん言ってたから」
「ゆづちゃん・・・」


思わず涙ぐむ爽子の背中を翔太はそっと撫でる。近くにいても繋がれない絆もあれば
遠くにいても繋がっている絆もある。魂に似た感覚の繋がりを翔太と爽子だけでなく
結月もまた蓮に感じていると思うと二人は嬉しさがこみ上げてきた。だから泣かずに
別れることが出来たのだ。


「そうだな・・どこにいても繋がってる」


3人は幸せそうに微笑むと、そっと夜空の月を見上げた。この”蒼い月”を蓮も見上げ
ているだろうか。蓮が結月と一緒に見たと言う”blue moon”はどんなだっただろう。
翔太は珍しい蒼い月を見ながら側にいない蓮を想う。


「・・でもやっぱ会いたいよ。蓮」


蓮の幸せは決して恋愛だけでない。そう思いながらもこの夜、蓮が片割れを探している
ような感覚に陥った自分を翔太は不思議に思った。
まるで蒼い月に魅せられたように・・・


「幸せになって欲しい」


月を見上げながら呟く翔太の手を爽子はそっと握りしめて頷いた。二人は見つめ合い、
微笑み合う。翔太は爽子の手を握り返すと祈るように蒼い月を再び見上げた。



* *



ププーッ プー


「・・あつ・っ」


複雑に絡み合った交差点で信号が青になったと同時に人が交差していく。車と人であふ
れかえった道路と高い建物に囲まれた都会の喧騒にすっかり慣れた今日この頃。東京に
転勤になって2年の月日が経過していた。蓮は陽射しの眩しさに手を翳すと、いつもの
ように昼食を取るために馴染みの定食屋に入った。
そう、ここまではいつもと同じ毎日。何が違ったわけではない。


「川嶋さんは北海道から来たんだっけ?」
「はい」
「じゃ、こっちの夏は暑くてたまらんだろ?」
「はい・・たまらんですわ」
「今年はもっと暑くなるよ」
「えっ!?」


わはは〜〜っ


店の親父さんがスーツ姿で汗を流している蓮を見て大笑いして言った。


(でもま、ここの冷やし中華は最高だしな・・)


夏限定の冷やし中華定食を蓮は美味しそうに頬張る。その時、ピピッとスマホが鳴っ
た。麺を啜りながらカバンに手を突っ込みスマホを開いた。蓮の顔が破顔する。


「なんだよ、川嶋さんも隅に置けんな〜〜」
「あんたぁ、このイケメンがいないわけないじゃない」
「あっ・・そんなじゃないですよ」


横から顔を出したおかみに蓮は目で会釈して答えると、視線をスマホに戻した。それ
は時々来る翔太からのラインだった。日々の何気ない風早家の日常を送ってくれる。
そこには翔太と爽子と結月の笑顔があった。


「ゆづ・・ちょっと見ない間に大きくなったな」


少しずつ大きくなる結月に父親の気持ちになる。離れていても一緒に育てているよう
な感覚に今もなれるのは翔太のおかげだろう。北海道を離れる時、実はちょっと心配
だった。”ずっとゆづと一緒”と言いながら離れてしまうことに。でも俺たちはそんな
繋がりではなかった。そのことを感じていたのは自分だけではないと思いながらもや
っぱり嬉しかった。ずっと特別なのは変わらない。そして爽子に対する想いも・・・
特別だけど以前とは違う。もう胸は痛まない。苦しい感情より優しい感情が胸いっぱ
いに広がる。時は確実に流れている。
そんな自分をほんの少し寂しいと思う反面、穏やかに過ごせる今を幸せだと思う。そ
れはあいつらがくれたもの。


「相変わらずラブラブだな・・」


頬を緩ませながら蓮がスマホを手に取っていると、何かが近づく感覚に気づいた。い
つのまにか視界が暗くなる。


(・・えっ・・・)


ふとスマホから視線を外し見上げた視線の先。
それは何かのデジャブのような感覚。以前にも同じ光景に出合っていると思った。


・・・北海道に転勤してすぐの頃だ。美味しそうに定食を頬張っている彼女の姿。
目が合って慌てて視線を逸らされた。なぜかあの時の彼女をすぐに忘れることはなか
った。繋がっていたから・・いや結果、繋がっていなかったはずだ。そんなことが頭
の中でぐるぐると駆け巡りながらふと浮かんだ蒼い月。


(そうだ・・・)


この日何が違っていたか?それは昨晩の月だったのかもしれない。残業で職場の窓か
ら見た月は”blue moon ”だった。結月も見てるとそう思った蒼い月。まさか人生で2
回も見られるとは思ってもみなかった。その月はこの光景を示唆していたのかもしれ
ない。目の前にある現実を。


そこには目に涙を浮かべながら満面の笑みで微笑む女性がいた。髪は短くなっていた。
そして少し震えた声で俺の名を呼ぶ。その声はとても懐かしくて、愛しいものだった。
蒼い月と彼女が重なる。


トクンッ・・と胸の鼓動が聞こえた。


ここから何かが始まるのか、それとも一瞬の奇遇な出会いで終わるのか、先のことは
誰にも分からない。でも俺はもう知っている。

”once in a blue moon”(奇跡)は待っているものではなく、自分で起こすものだと
言うこと。



俺は心のままに一歩前に踏み出した。



<おわり>

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あとがき↓
というわけで終わりです。まとまったかまとまってないか・・そんな感じの終わり方
ですが後は皆さんに想像して頂けたらいいかと。
長かったですね。まさか110話になるとは!「Half moon」を超えるとは思っても見な
かったです。というかHalf moon も書こうと思えばもっと長くなったと思うけど。でも
まとめようと思えば本当に端折れる部分が山ほどある・・・。まぁ素人なんで無理があ
るんですけどね。まず、Half moon 書こうと思った時に一番最初に出てきたキャラが
光平と蓮だったと思います。最初から蓮は爽子が好きというつもりでやってたんですが、
光平の恋バナでいっぱいいっぱいになってしまって蓮がメインに出来なくなってきた
あたりからやばくなってきて、”蓮どうしよう・・”状態になりました。でもキャラ的
に暗い陰を持っていたかったので美穂が出てきたような・・・忘れたけど。
でもとにかく爽子が好きと言う風に一番したかったのは蓮だったと思う。だから結局
爽子モテモテ構図が出来てしまったわけですが、蓮は出逢った頃から爽子が好きなんで
す!!翔太がいなかったら付き合っていたかも。翔太と違う特別感を出すためにも魂
的に似ているという形しかなかったんですね。つまり・・オリキャラ蓮に思いれが自分
自身も強かったわけです。でも翔太には勝てなかった・・・ぐすん。もっと爽子と卑猥
なところまでやろうかなと思ったこともありましたが、やっぱ蓮はしないだろうなと
思ってやめました。やるなら光平かなっと。でもちょっと暴走して欲しいみたいな(笑)
蓮は爽子と翔太が幸せに暮らすことを望んでいたのは最初から最後まで変わらないわけ
で、でも想いが暴走していく自分を止められず苦しむ・・というのが書きたかったんで
すね。つまり私はサドってやつかも。そして翔太はそんな蓮をどこか気づきながらも
蓮を信用することで防御線を張っていく。そんな葛藤も書きたかったというか。その部
分はあまり書けなかったけど。でも楽しかったなぁぁ。ゆづに関しては不思議な子とい
う設定で考えていて、最初に思い浮かんだのは蒼い月をゆづと蓮が体育座りをしながら
見上げる。その時に初めてゆづが喋るという構図。その展開にどうやって持っていこう
・・・と悩んだり。二人の特別感を出したくて。途中、本当に書く気がなくなってこの
まま放置しようかと思ってましたが、励まして下さった方々のおかげ様で最後まで下手
なりに書くことができました。たがが二次ではあるけど一つの話を終わらせることが出
来て良かったと思います。


爽風の話はこれで終わろうかと思ってたんですが、もう一つやる気になっている話があ
り、それは前々から漠然と妄想出来た話だったのでこの際、やる気のある時に書いちゃ
おうかと思います。もう熱が冷めた方も多いと思いますが、まだ萌えている方はたまに
遊びにきてください。まだサイトやっていますので。
その話はある少女漫画を読んで妄想したものです。(だいたいベースはそんなもの)
よくある話で、私が書いた二次にも似たのがありますが楽しんで書けそうなので気の向
くままやってみようかと思います。またまたオリキャラ主人公ですが(懲りない奴)


本当に長い間、この話にお付き合いありがとうございました。蓮との付き合いは足かけ
4年ぐらいになるかも。途中さぼっていたので長くなりましたが、振り返るとやっぱ、
とっても楽しかったです。
コメントを下さった方、拍手して下さった方、訪問して下さった皆様、感謝です〜〜!
そしてこれからもよろしくお願いします。           ★☆ sawalove ★☆