「Once in a blue moon」(45)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
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の続きです。  
 

☆ 以前から約束していた食事会をドタキャンした麻美。その理由とは・・・?麻美が
待ち合わせ場所の広場で見たものとは・・・?



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 45 ‥…━━━☆




















麻美の居た場所はビルの隙間でその前が大きな広場になっていて、そこが待ち合わせ

場所になっていた。その時ある角度から蓮だけが見えた。蓮が座って優しく微笑んで

いる。それは結月を愛しそうに見ているのだと思っていた。そんな姿も微笑ましい。

麻美は嬉しそうに角度を変えて蓮の視線の先を見つめた。


どくっ


そう、それは一瞬だった。そこには結月も翔太も居ず、長い髪をなびかせて夕日を見

て微笑んでいる爽子の姿。


(う・・・そ)


次の瞬間、爽子に翔太と結月が重なる。3人で大はしゃぎしている姿を蓮は嬉しそう

に見ていた。先ほどの目とは違う目で・・・。


麻美の身体ががちがちと震えはじめた。


(違う・・・違うよっ!!)


何も見てない。いつもと同じじゃんっ・・・風早家を愛おしそうに見ているのはいつ

もの蓮だ。大事なんだから、あの人たちが何より大事・・・・っ。

美穂さんの言ったことは幻想だ。あまりにも有り得なかったから印象が強烈だっただ

けで、そのことが頭に残っているから!!

幻想だった・・はず・・・でしょ?


「・・・・っ」


麻美は心の中でひたすらそう叫んでいた。でもそれは悲痛な叫びに過ぎない。

いくら心で叫んでも身体の震えは止まらなかった。

麻美はその場から一歩も動けなくなった。

震える身体と凍りついた目で、4人の楽しそうな光景をただ茫然と見つめていた。




* * *



「あ〜〜〜うまかった!!」


翔太達は食事を終え、駐車場に向かった。一緒に歩いていて蓮が立ち止まる。


「?・・・蓮?」

「あ〜俺、電車で帰るわ」

「え??家まで送るって」

「いや、大丈夫」


また蓮の遠慮かと思い翔太は引き留めたが、蓮は断った。結月はしゅん・・・寂しそ

うな顔をする。すると、蓮は結月の目線にしゃがみこんで言った。


「ごめんな、ゆづ。麻美に会いに行ってみるよ。でゆづが会いたがってたって伝えと

 くな」

「蓮・・・」


翔太と爽子は嬉しそうに微笑んだ。結月もぱぁぁっと顔を輝かす。爽子は麻美を気に

している蓮が嬉しかった。正直、麻美の気持ちは痛いほど知っている。蓮に対して本

気だということ。


「心配させて悪い」


蓮は爽子をちらっと見て言った。爽子はぶんぶんっと顔を横に振ると、穏やかな表情

で蓮を見上げた。


「私も・・・会いたいって伝えて下さい」

「・・・うん」

「あっ・・・それと」

「?」


爽子は少しの間の後、とびきりの笑顔で言った。


「今日・・・話せて嬉しかったです・・・ありがとうっ」

「・・・・ん、じゃ、またな。翔太、ゆづ」

「うん。また来いよ」


蓮は口角を上げこくんと頷くと結月の頭をぽんっとして別れた。それぞれ反対方向に

歩いて行く。結月は何度も振り返ってぶんぶんっと手を振った。そしてかなり離れた

後、蓮は立ち止まって振り返る。そこには遠くなった3人の幸せそうな後姿。3人を

見ていると幸せの象徴のように思えた。


「話せて嬉しかった・・・か」


それは素直な彼女の言葉。”ありがとう”はきっと自分が言った彼女を受け入れる言葉

に対してのお礼。


”『波長が同じ・・・迷惑じゃないよ』”


本当にそう思ったから言った。彼女に会ってから不思議に感じる波長。もし、同性

だったのならきっと親友になれただろう。翔太のように・・・。


でも・・・・


蓮はあの時の自分が自分でなくなった感覚が蘇り、ぎゅっと拳を握りしめた。もう

二度とあってはいけない。あんな自分とは二度と会いたくない・・・

蓮は強く心に誓う。


「・・・他の男にあんな笑顔見せるなっつーの。翔太も大変だな・・・」


蓮は苦笑いをして呟くと、もう一度3人の姿を目を細めて見つめる。その目はどこ

までもせつなく、冬の空のようだった。







「Once in a blue moon」46 へ

















あとがき↓

連載再開です。楽しみにしてくださっている方ありがとうございます。考えてみたら
とっても中途半端なところで止まってた〜(汗)すんません・・・。さて、ここから
蓮目線が出てきます。麻美目線はちょっとお休み。蓮の本音に迫っていきます♪