「Once in a blue moon」(5)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。こちらは「Once in a blue moon」     の続きです。 


☆ 蓮の引っ越しを手伝いに来た風早は爽子と結月を迎えに行った。久々に蓮に会った
   結月は??


















たとえば、青い空に輝く太陽があいつだとすると、俺は夜空の月だ。


それもどこか欠けている。きれいな満月になることはない。


そんな欠けた俺を包み込んでくれる。その笑顔で、その純粋さで・・・。


それはまさしく”Blue moon”だった。


蒼い月を見る奇跡は起こらない。


奇跡を見ない限り、俺はずっと欠けた月のままなのだろうか・・・・。






・‥…━━━☆ Once in a blue moon 5 ‥…━━━☆





がちゃっ


「ただいまっ蓮!!」

「・・・あっ、お邪魔しますっ」


蓮は開かれた戸からこぼれる光を眩しそうに眺めた。爽子は蓮にペコっと頭を下げた。

その後ろから結月がちょこっと顔を出す。結月は蓮を見ると満面の笑みを浮かべた。


「ゆづ!!」


蓮が手を出すと、ゆづがたったか〜〜〜と走っていった。そして蓮に抱きつく。


「え・・・・」


その姿を呆気に取られて見ている風早。結月は蓮に抱っこされてすりすりと顔をつけ

甘えていた。


「何?翔太。まさかやいてんの?」

「いや・・・・すげーなと思って」

「へ?何が」

「俺にもそこまでしないし・・・な?爽子」

「うん」

「え??そこまで?」


蓮に甘える結月の姿がとても自然に見えた。風早はその姿を見て頭を抱える。

もしかして、娘はいろいろ我慢をしているのではないかと・・・。


「やっぱ・・・俺、爽子にくっつきすぎだからかな・・・」

「そーじゃないの?」


蓮がにやにやして言う。そして「な!」と結月にからかうように同意を求めた。すると

そのやり取りを見て爽子が言った。


「あの・・・違うと思います」

「「え?」」


二人が同時に声を出すと、爽子は少し怖気づいたようにあわあわした。


「いや・・・そのね、私もゆづちゃんじゃないので分からないのだけれど・・・蓮さんだ

 からだと思う」

「え・・・?」


蓮が不思議そうな顔をしていると、爽子が少し微笑んで言った。


「ゆづちゃんはちゃんと見てるんだと思う。その人の本質を感覚的に」

「ほ・・・んしつ?」


人見知りの結月が蓮だけにはなつく。それは不思議にも思うが、爽子は以前から滅多

に会えない蓮と結月を見ていると目に見えない絆のようなものを感じていた。最初に会

った頃からそうだったのだ。爽子もまた、蓮の温かい本質を初めて会った時から感じて

いた。


「翔太くんとはまた違う、純粋さをゆづちゃんは感じているのではないかと・・・」

「そっか・・・・そーかも」


爽子の言うことに風早も納得するように頷く。そんな二人をぽか〜んと見ていた蓮は

ぷっと吹き出した。


「俺が純粋・・・??」


蓮は信じられなかった。いったい彼女は何を言っているのだろう?自分の何を見て純粋

だと思うのだろうか。でも目の前の彼女の目に偽りはなかった。


そして彼女の言葉に嘘がないことを知っている。


蓮は爽子を見つめるとそのまま言葉を発せず無言になった。爽子は嬉しそうに拳に力

を入れると、結月に興奮したように言った。


「ゆづちゃん良かったね。これからは前よりずっと蓮さんに会えるよ」


結月は笑って頷いた。蓮は結月にぎゅっとされ、現実に戻ったように目を見開いた。

そして、結月の目の高さにしゃがんでにっこり笑った。


「ゆづ、これからよろしくなっ」


結月はにっこりと笑った。その光景を見て風早と爽子も微笑む。結月といる時の蓮は

とても優しい目をしていた。あの頃の目とは違う。爽子はそんな蓮が嬉しかった。


「でも、ゆづばっかに構ってると彼女できないからさ、適度にな」

「ははっ確かに。ゆづといる方が絶対楽しーもん」

「まさか蓮、ロリコン!?」

「何とでも言え〜〜〜〜」


あはは〜〜〜っ


蓮はそう言いながら結月と身体でアクロバットに遊んでいた。結月もきゃっきゃっと言

って喜んでいる。結月は静かに遊ぶのも好きだが、風早にもよく身体を使って遊んで

もらっているのでこのような遊びも大好きだった。


「やっぱ変わったよな・・・蓮」

「うん・・・明るくなったね」


蓮のそんな姿を見ていると子ども好きそうに見えるが、以前の蓮は決してそうではな

かった。子どもと一緒に居てこんなに楽しいと思ったことがなかったからだ。蓮は不

思議だった。一緒に居るだけで癒される空気。全てを浄化してくれるように・・・・。


その夜は爽子の料理を堪能して、皆で楽しい時間を過ごした。



* * *



「じゃ、長々悪かったな」

「それはこっちのセリフ。さんきゅーな。そんでこれからもよろしく!」

「れ・・・蓮さんっ」

「ん?」

「あのっ・・・これからも私でよければごはんとか作るんでっ!!」


拳を固めて、使命を果たすかのように言う爽子に二人はぷっと吹き出した。


「さんきゅ。マジでうまかった。あんなにうまいメシ食ったの初めてかも」

「わわ・・・思いがけないサービスをありがとうございますっ」

「いや、マジで爽子の料理はすごいから。蓮また家来いよな」

「え〜〜〜いいの??」


蓮がちらっと風早をからかうように見ると、焦った様子で”別にいーしっ”と口を尖ら

せている。相変わらずの風早に蓮はぷっと吹き出す。

翔太に抱っこされている結月はすっかり夢の中だ。蓮はそんな結月を覗き込んで

言った。


「寝ちゃったな・・・」

「今日ははしゃぎすぎたみたい。すごく嬉しかったんだと思う」

「遊んでくれてありがとなっ」

「こっちこそ、遊んでもらった」


あはは〜〜〜〜っ


「んじゃ、ごちそーさん」

「ども〜〜〜っまたなっ」

「さ、さようなら」


「あ・・・蓮」

「え?」


風早はドアを閉める瞬間、蓮の目を見て真剣な顔をした。


「絶対、ウチ来いよ。いつでも待ってるから」

「・・・・サンキュ」


蓮は照れ臭そうに頷くと3人の後ろ姿をしばらくの間眺めていた。そして静かに

戸を閉めた。


「ふぅ・・・っ」


ドアにもたれかかり、大きくため息を漏らした。そして一人の部屋を見渡す。

部屋はすっかり片付き、食事の片付けもきっちり爽子は終わらせていった。


窓を開けて、夜空の月を仰いだ。月が穏やかに感じた。



「・・・純粋か」


爽子が言った言葉が頭から離れなかった。そして自分を見つめる純粋な目も。


「はは・・・純粋なのはアンタじゃん」


思いもよらなかった転勤。それも北海道。仕事的に不安はなかったわけじゃない。でも

戸惑っていたのは自分の心の奥底にあるものを恐れていたからだ。それは小さいもの

で前に出ることはないのに感覚的に恐れている。


その純粋なものに触れたらどうなるんだろう・・・と。


もっと見すぎたらどうなるんだろう・・・と。


蓮は切ない目をして月を眺める。


今夜も蒼い月が現れることはなかった。







「Once in a blue moon」  へ

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↑ 感想などありましたらヽ(´▽`)/マニアックすぎるって!?






あとがき↓

そういえば別マ9月号って出てたんでしたね。君届以外買う価値を感じない私は買って
ません。(漫喫で読む。虎と狼の続きとか見たい)来月予告とかあるのかしら。いよいよ
再開ですもんねっ!!ワクワク♪さて、この話はここでちょっと休んで「はつこい」に戻り
ます。よろしくお願いしま〜〜〜す!