「Once in a blue moon」(3)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。こちらは「Once in a blue moon」   の続きです。 


☆蓮のいきなりの北海道転勤を聞いた仲間たちは驚いたが、皆、蓮の幸せを願って
  いた。しかし相変わらず蓮は心を開こうとはしない。蓮の心情とは?























なぜ月を見上げるのだろう。


月を見ると不思議なほど癒された。


それはきっと、翳っている月はまるで自分のように見えるから。


決して満月になることはない。そして蒼い月になることも。


そんな翳った月を今夜も見つめた。


華やかな花火が舞う夜空を見るふりをして・・・・。





・‥…━━━☆ Once in a blue moon 3 ‥…━━━☆









シュ〜〜〜〜〜〜パンッ



今年も仙台の空には大輪の花火が浮かんでいる。皆、土手に座り込んで花火を見上げた。


”わぁぁ〜〜〜〜〜っ”


大きな花火が上がると歓声が上がる。


「きれい・・・」


爽子が目を輝かして呟く。そんな爽子を風早は優しい眼差しで見つめる。その光景は

以前から全く変わっていない。子どもができてもやはり風早にとって爽子は特別で、

仕事やその他の所用で一緒にいられない時間をもどかしく思っていた。


「ふっ」

「・・・何?蓮」


横で蓮が動いたのが分かり、風早は不思議そうに問いかけた。


「いや、変わんね〜なと思って」

「え?」

「今も二人っきりになりたいだろ?」

「〜〜〜〜!!!////」


またまた図星をさされた風早は真っ赤になってぱくぱくと言葉にならない言葉を発した。

さすがに言えなかったのだ。仲間に会いに来たのに二人になりたいとは。


「れ・・・蓮には本音言うけど、思ったより二人でいられないんだよな・・・」

「ああ・・・ゆづがいるから?」

「いや、ゆづは全然手がかからないんだけど・・・やっぱ仕事かな」

「そうだよな。翔太の部署はきっついよな」

「俺は割り切ってる方だけどね。結婚してからなるべく定時には帰るし。それでも足り

 ないって思う」


風早は照れた表情を見られないように膝に顔を伏せた。


「人生なんて・・・短いもんな」

「うん、365日なんてあっという間。こんな風に一生が終わっていくとしたら、やっぱ

 一分一秒・・・大事にしたいんだ」


蓮は風早の横顔を見て微笑むと、視線を花火に向けた。風早もちらっと蓮を見る。そして、

以前蓮が言った言葉を思い浮かべた。


”「俺さ・・・これから恋愛とかできんのかな」”


美穂といろいろあった後、二人で飲んでた時に言った言葉。


シュ〜〜〜ドンッパッ


「蓮・・・新しい恋愛できそう?」

「え・・・何だよ。いきなり」

「いや・・・別に言いたくなかったらいーんだけど。ちょっと聞きたくなっただけ」


風早は少し微笑むとすぐに花火に目を向けた。蓮はそんな風早を見てふっと口角を上げる。


「・・・ほんと翔太は変わんねーな」

「え?」


風早が蓮に視線を向けると蓮が穏やかな顔で笑っていた。


「翔太にはかなわね・・・」

「・・・なんかあった?」

「なんかあったらいーけど。色恋沙汰はなんもねーな」

「環境が変わると新しい出会いとかあるかもよ」

「・・・そうだな」


蓮はそう言うと風早に優しく微笑んだ。その横で嬉しそうに花火を見つめる爽子と結月。

そして二人を包み込むように大事そうに見つめる風早。蓮は風早達三人を眩しそうに見

つめた。それから夜空に目を向ける。


「!」


蓮は手に柔らかい感覚を感じて、パッと振り向いた。


「ゆづ!?」


今まで爽子の横にいた結月が蓮の手をぎゅっと握って笑っていた。


「びっくった〜。どうした?」


それを見ていた風早の隣にいる爽子が遠慮気味に言った。


「ごめんなさい・・・ゆづちゃんが蓮さんの側に行きたそうだったから。迷惑なら言って

 下さいっ」

「はは・・・迷惑なわけないじゃん。な、ゆづ。一緒に見よっか」


結月は蓮にそう言われ、満面の笑みで微笑んだ。その笑顔を見て蓮は心が澄んでいく

のを感じた。まるで静かな波のように穏やかになる。


繋がれた小さな手から、天使のような笑顔から紡がれる感覚。なんだろう・・・。不思議

なほど温かい気持ちになる。この小さな体にどれほどのパワーを秘めているのだろう。


蓮は結月の手をぎゅっと握り返すと、決心するかのように風早に向かって言った。


「翔太!これからよろしくなっ」

「・・・え?ああ、こちらこそ!」


いきなり言われたことに風早は躊躇したが、すぐにこれからのことだと分かった。蓮が

戸惑っていることは風早にも分かっていた。なので、『蓮が来ることが嬉しい』と素直に

言えなかったのだ。仙台の時のようにいつも会える環境ではないことは大きかった。

蓮の言葉に風早は嬉しそうに微笑んだ。


一方蓮は、皆に気を遣ってもらっていることが分かっているだけにしんどかった。正直、

仙台を離れることは距離を開けるいい機会だった。何より風早がいる北海道に行ける

のだ。そのことは素直に嬉しかった。


そう、いるのだから・・・。


「物件とかその他のことも頼ってよ。何せ道産子なんだからさ」

「・・・ああ、さんきゅ」


ぎゅっ


「ゆづ・・・?」


手を強く握る感覚を感じて蓮は結月を見た。結月は目を輝かすと、夜空を指差した。

そこには大輪の花火が上がっていた。花火の光が結月の笑顔を照らす。


「うん。きれーな」


結月はうんうんと頷き、くしゃっと笑った。蓮は結月を愛しそうに見つめると夜空に

目を向けた。二人は三角座りの同じ体制で親子のようだった。


「ふふ・・・仲良し」

「だな・・・・」


爽子が二人を見て嬉しそうに微笑む。あまりにも自然な姿に風早も穏やかに頷いた。


「蓮、良かったよな。ゆづが近くにいたら癒されるよ」

「うん、きっとそうだよね。私たちもそうだもんねっ。すごいよね・・・ゆづちゃん」

「俺は爽子がいたら癒されるけど?あっでもドキドキしすぎるかぁ〜」

「わわっ/////」


風早は真っ赤になった爽子を愛しそうな顔で包み込むように肩を抱いた。


「はは・・・ったく。皆もいるっつーの。なぁ、ゆづ?」


蓮が言うと、結月はにっこりと笑うだけだ。結月は爽子と風早が仲が良いのがとても

嬉しいようでそれが結月の情緒の安定に繋がっていることは見ていて蓮にも分かった。

そして二人が触れ合うのは風早家の日常でもあるようだ。


「まじ・・・変わんねーな・・・」


幸せには形がない。実際幸せそうに見えても愛情がない家庭もある。幸せを人に見

せることで幸せを感じる人間もいるだろう。でもここには確かな幸せがある。真実の愛

がある。出会えなかったら知らなかったもの。


その本物を知らずに生きている人間はこの地球上にどれだけいるのだろう。そして、

それを知っていても掴めない人間はどれだけいるのだろう。


それでも求め続けるのだろうか?真実の愛を。

同じものには出会えないと分かっていたとしても・・・・?



蓮はせつない目をして花火の横に浮かぶ、翳った月を見ていた。




「Once in a blue moon」  へつづく











あとがき↓

(あ・・・ネタバレなるかな。チャリティ本、これから見る方、以下見ないでください)



チャリティー本来ました!龍目線でした。思っていた通り短かったけど癒された。
龍は本当に千鶴が好きなんだなぁ。そして独占欲が強いんだな。風早並みじゃん!
それは純粋だからなんですよ。風早も龍も純粋だから変わらないものがあるんで
すね。この二人はきっと何年付き合っても変わらないですよ。だらけた関係にな
らない。周りにもそんな人がいます。いくつになっても大切なものを” 純粋 ”に
守り続ける。憧れます。だから君届にも憧れるんですね・・・。