「Once in a blue moon」(76)
※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。
★「Half moon」は 目次 から。
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72 73 74 75 の続きです。
☆麻美と向き合った爽子。しかし話し合っても解決できる問題でないのは分かっていた。
爽子目線です。
・‥…━━━☆ Once in a blue moon 76 ‥…━━━☆
「わ・・朝焼けだ。きれい・・・」
爽子は麻美の家からの帰り道、朝焼けに手を翳して清々しい表情で呟いた。
(朝帰り・・してしまったっ)
沢山話をした。頭から離れない麻美にほっこりしたり哀しい気持ちになったり、様々
な想いが胸の中を交差している。目を閉じて、長い夜を思い返した。
* *
どれだけ・・麻美ちゃんが蓮さんのことを想っているかを知った。そしてどれだけ苦
しみ続けていたのかも。全然知らなかった。向き合おうとしなかった自分自身を恥じ
た。だけど、向き合う時は今だったのかもしれない。
『話してくれて・・ありがとう』
私がそう言うと、麻美ちゃんは少し哀しそうに微笑んだ。
簡単に割り切れる想いじゃない。だから今も気持ちが通じ合っているとは思えない。
気持ちを届けても受け止めてもらえないことが世の中には沢山あるのだと知った。
どうしようもないことがあるということ。
『今は・・受け入れてもらえると思ってないよ。だけど・・・っ私・・』
人に感情がある限り、それは一方通行にもなりうるだろう。だけど・・・
『諦めたくない。だからずっと待ってる・・』
心がちゃんと通い合えるまで・・・
気持ちを全部言葉で伝えるのは難しい。言いたいことの半分も言えていないのに麻美
ちゃんは私の言葉を真剣に聞いてくれて、大粒の涙を流した。その涙の本当のわけは
分からない。ただ私も涙が止まらなかった。私達には時間が必要だ。そして麻美ちゃ
んと蓮さんにも・・・
蓮さん・・・
爽子は蓮のことを想うと胸がきゅっと痛くなった。その痛みを和らげるために胸を押
さえながら空を見上げる。
”大事なことは目に見えない。心で見なければ”
星の王子さまの中でキツネが言う。感情は目に見えない。苦しい感情も嬉しい感情も
そして・・愛しいと言う感情も目に見えないのだ。翔太くんに対する愛しい感情。そ
して蓮さんに対する愛しい感情。自分の中にある確かな気持ち。
まだ何も言えない・・・
この苦しい感情を分かって欲しい人はただ一人。分かち合いたい。でも一番つらいの
は翔太くんを傷つけること。傷ついて欲しくない・・・っ
だけど、諦めたくないと思う。麻美ちゃんも蓮さんも幸せになることを。大切だから。
失いたくない・・・
* *
(静かに開けなきゃ・・・)
そろ・・
まだ時間は朝の5時。爽子は静かにドアの鍵を開けようとした。すると・・・
がらっ
「〜〜っ!!」
自動ドアのように勝手に開いたドアに声も出ないほど驚いた。
「し、翔太くん!?」
そこにはパジャマ姿の翔太が立っていた。
「おかえり」
「た、ただいま・・って。起こしちゃった??」
「いや・・目が覚めただけ」
(・・ん?目が赤いような気がする)
「眠れなかった・・?」
すると翔太は視線を泳がし、がしがしと髪をかきあげると拗ねるように口を尖がらせ
て言った。
「だって・・爽子が横にいないもん」
「え!?///」
「・・爽子の肌に触れてないと熟睡できないし」
「〜〜っ///い、今まで出張もあるのに?」
「それは、我慢してるから」
「////」
えー!?っと爽子は心の中で叫んでいた。まるで子供のような姿に驚きと甘さを感じる。
結局、素直に気持ちをぶつけてくる翔太にいつもやられてしまうのだ。
(これは・・いつものパターンになってしまうのでは!?)
「そ、それじゃ・・ちょっと早いけど朝ごはん作るね。ゆづちゃんは?大丈夫?」
「うん。寝てる。かなり早いね、まだ♪」
「え・・・」
そう言っていつのまにか爽子の背後から手を伸ばし抱きしめられている。翔太の温もり
を感じ、爽子はドキッとした。そしてうなじに感じる翔太の唇。
「しょ、翔太くんっ・・・!////」
「いろいろ・・聞きたいけど、今はこっちを満たさないと俺、今日一日頑張れないかも」
「え〜〜〜っ!?」
平日、しかも朝。でも朝帰りしたのは自分。それに・・やはり大好きな人に求められ
て嫌なわけない。また、彼は私が折れる方法を知っている。いつも必ず負けてしまう
の。その悩殺な子犬のような目に。
「−ダメ?」
「〜〜っ///」
(は、反則だぁぁ・・っ!///)
大好きな翔太くん。この幸せを守ってくれたのは蓮さん。私だけこんなに幸せでいい
のかな?蓮さんはどこにいるのだろう?今からどうするのだろう?
そして・・・何を求めているのだろう。
あたたかい・・・
「爽子?・・泣いてるの?」
「・・っ・・」
翔太の胸の中で爽子は頭をぷるぷると動かした。大きくて優しい手が自分の髪を撫で
る。どれだけこの優しさに包まれてきたのだろうと思う。この狂おしいほどの愛しい
という感情を表現できる言葉が見つからない。この感情を教えてくれたただ一人の人。
この世でたった一人の愛しい人
いろいろ考えることはあるのに、今はただこの温もりに包まれたい。
私はそんなことを考えながら甘い刺激に意識を手放した。
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あとがき↓
とりあえず爽子目線で。翔太の気持ちはまたたっぷりと。