「Once in a blue moon」(57)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 の続きです。
 

☆ 皆が楽しみにしている仙台七夕祭りがやってきた。それぞれの過去がある場所。そして
今、蓮と麻美の未来が大きく動き出そうとしていた。



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 57 ‥…━━━☆



















風早家にとって毎年の里帰りであり、仲間達が揃う定番のイベントである七夕祭りが

やって来た。今年は新しい仲間(麻美)が増えるということでさらに盛り上がってい

る。翔太と爽子にとっても思い出の七夕祭り。そして蓮もこの時期になると、毎年や

って来る風早家と一緒に忘れられない想いをずっと抱えて生きてきた。


皆が楽しみにしている七夕祭り。誰もが今年も楽しい思い出が作れると信じていた。

しかし・・・

蓮は運命の歯車が大きく動き出す帰仙となる。それは麻美にとってもつらい現実であ

り、二人の運命を大きく変える出来事となる。


蓮に幸せになって欲しいと願う皆の想いに反して・・・。



* *


「わぁ・・・きれい」


色とりどりの七夕飾りがゆらゆらと風に揺られている。爽子は今年も来れた嬉しさを

噛みしめるように感嘆の声を上げた。結月も大きな目をくりっとさせ喜んでいる。

仙台にやって来た風早家は夜になり、仲間達との待ち合わせ場所に向かっていた。


わはは〜〜っわいわい、がやがや


賑やかな仙台街中、鮮やかに飾られた装飾、出店などを翔太は懐かしそうに見つめた。

随分昔のことになったが、今も鮮明に思い出すあの日のこと。


「翔太くん?」


爽子は結月と歩きながらボーっとしている翔太を不思議そうに見つめた。翔太はハッ

とすると照れた様子で苦笑いをした。


「七夕祭りを見るたびにやっぱ思い出しちゃうんだよな・・」

「何を?」


きょとっとしている爽子を見つめて翔太は情けなさそうに俯いた。


「・・いや、べつに」

「えぇぇ〜〜??」


(・・・っ情けなさすぎる。未だに田口が爽子を抱きしめた場面を思い出すなんて・・・)


「いろいろあったなぁ・・って。この仙台で」


翔太が周りを見渡して言うと、爽子は静かに頷いて同じように周りを見渡す。


「うん。翔太くんと過ごした楽しい思い出がいっぱい・・・」

「爽子・・・」


二人が見つめ合っていると、爽子の手がぐいぐいっと引っ張られた。結月が手を引っ

ぱり前の方を指差している。二人がその方向に視線を向けると、仙台の仲間達が手を

振ってこちらに向かっていた。


「あ・・・!!みなさん」

「爽子ちゃん〜〜風早〜〜〜〜っ!ゆづちゃんっ」


光平、昌夫妻、沙穂一家、太陽が待ち合わせ場所にやってきた。久々の再会で皆興奮

気味に喜び合う。


「ひっさしぶり〜〜!!ゆづちゃん!大きくなったねぇ」

「皆さん、お元気そうで」


わいわい、がやがや


「爽子さん、お久ぶりです」

「お、お久しぶりですっ・・・」


庄司に声を掛けられ、爽子は緊張気味に頭を下げた。そして庄司に抱っこされている

初めて見る沙穂の子どもに爽子はぱぁぁっと目を輝かした。


「かわいいですねっ!お写真では見せてもらったんですけど。もう1歳ですか?」

「ええ、もうすぐ。結月ちゃんも大きくなって」

「はい、おかげさまで!」


庄司は結月の目の高さまで視線を下げ、にっこりと笑った。結月は緊張気味にぎゅっ

と爽子のスカートを握る。庄司は申し訳なさそうに苦笑いして言った。


「結月ちゃん、すみません。知らないおじさんだもんね〜怖いよね」

「こちらこそすみません・・・っ」


謝りながらも結月に無理に愛想を振る舞うように強制しない爽子を見て、庄司は笑み

を浮かべた。そして周りをきょろきょろっと見渡す。


「ところで・・・蓮さんはまだですか?」

「はい。そう言えば、遅いですね」


爽子は時計を見て心配そうに言った。蓮と麻美は確か昨日から仙台にやって来ている

はずだ。現地集合となってた。翔太にも爽子にも連絡が入っていない。

その会話に昌と沙穂が入ってきた。


「ほんと、蓮達遅いじゃん。早く麻美ちゃんに会いたいのに」

「私、はじめましてだ!麻美ちゃん。楽しみ〜〜♪」


昌と沙穂が言うと、爽子は嬉しそうに微笑んだ。爽子も麻美と一緒に仙台で過ごせる

ことが楽しみで仕方がない。


「うん・・・麻美ちゃんも昌さんに会えるの楽しみにしてたよ」

「まじで。私も会いたかった」

「そっか、昌北海道行ってるもんね。どんな子なの?」

「とってもとっても・・・いい人なのっ」

「爽子ちゃんにかかったら皆いい人だからなぁ〜〜」

「えぇ〜〜??」


沙穂が言うと、昌も”そーそー”と頷いて大笑いする。久々の再会に笑顔が絶えない。

その様子を冷静に見ている男がいた。


「・・・・」


庄司はたまにしか顔を出さないので、爽子と翔太に会うのも久々で何年ぶりか分から

ないほどだ。翔太と爽子、そして爽子に似た娘。幸せそうな家族風景。傍から見ても

幸せだと分かる。いろいろなことがあったからこそ今があるのかもしれない。あの頃

病院で会った爽子はいつも寂しげだった。後から、二人の間にあの時起こっていた出

来事を知った。そこに絡んでいたこの仲間達、そして蓮。庄司は初めて翔太に会った

時全て分かった。どれだけ二人の絆が深いか。そして翔太がどれだけ彼女を愛してい

るか。それは言葉にできないほど深い愛だと分かった。


その二人を見ていると幸せな気持ちになると同時に言いようのない悲哀感に包まれた

ことをあの頃のように思い出す。

庄司は懐かしそうに二人を見つめた。


ぞくっ


その時、悪寒のような感覚が走った。


(・・・まただ)


庄司は今朝から時々感じる胸騒ぎに嫌悪感を感じていた。別に霊感があるわけではない、

鋭い第六感があるわけでもない。だから大丈夫だと、庄司は自分に言い聞かせていた。

そう、何も起こるわけはないと・・・。



しかし、悲しくも庄司の予感は的中していた。その時蓮はある岐路に立たされていたのだ。





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あとがき↓

やばい・・・蓮を追い込んでいくこと楽しいかも!Sなのだろうか(汗)