『二文字のコトバ』1

以前は言葉に出来ていた『好き』と言う言葉。今は気持ちが大きくなりすぎてお互い

言葉にできない。それぞれ大人になり新たな壁にぶつかる二人。社会人の二人のパラ

レルです。一話ごと交互に視点・シーンが変わります。まずは爽子視点からどうぞ↓































社会人になって3年目。仕事には慣れてきたけれど、まだまだ会社のお役に立ててい

ない私は、皆さんにご迷惑をお掛けすることが多く日々精進の毎日。さすがに学生の

時と違って責任も重く、失敗をして落ち込んだりもする。でもそんな時、周りの方々

ががさりげなくサポートして下さったり、励ましの言葉を頂いたりしてとても元気に

なるのです。本当にチームの皆さんはいい人ばかりで感謝の毎日。でも何より私を支

えてくれるのは・・・。


「あ・・・翔太くんっ・・ごめんなさいっ遅れて」


待ち合わせに急いで走ってきた私に翔太くんはにっこりと微笑んでくれた。


「爽子!急がなくていいのにっ!」

「はぁはぁ・・・だってお待たせして申し訳ない」

「仕事だったんだから。でも・・・一分一秒早く会えたら嬉しいけど」

「/////」


そんなかっこいいセリフを爽やかな笑顔でさらっと言うからもう私の心臓はどっきど

きで壊れるんじゃないかといつも思う。

高校の時からお付き合いさせてもらってる翔太くん。大学も仕事も離れ離れになった

けれどこうやってお付き合いは続いている。色々な顔の翔太くんを知ってどんどん好

きになる。翔太くんは・・・今も同じ気持ちでいてくれているのかな?


「ん?どーした?俺の顔に何かついてる?」

「わっ!!・・う、うううんっ・・なんでもないのっ」


(お隣にいるのに・・・トリップしていたっ)


見とれていたことに気付いた。いつの間にか場所はレストラン。私は慌てて食事の続

きを始めた。今夜もとても素敵な店だった。翔太くんはいつもいろいろ工夫してくれ

て私を幸せな気分にしてくれるの。

翔太くんはとっても優しいから、もし私のことを好きじゃなくなってもそのことを言

えるのだろうか・・・?時々そんな想いが私の脳裏を霞める。


こんなことを考え出したのは最近。いや・・本当はずっと心のどこかで不安に思って

いたことが表面化しただけ。そう、きれいな女の人達と楽しそうに飲んでいる姿を見

てから。偶然その姿を店の窓越しに見つけてしまった。普通に声を掛ければ良かった

のかな?でもどうしても掛けられなかった。通りにあったショップウィンドウに映る

私の姿を見て、何だろう・・・妙に落ち込んでしまったの。


「爽子・・・今日の服かわいいねっ」

「あっ・・・ありがとう」


翔太くんは大人になって以前より照れずに感情を言葉に出してくれるようになったよ

うに思う。女の子はこんなこと言われると嬉しくって・・翔太くんに言われると、き

っとドキドキして好きになっちゃうよ。

そんな気持ちを私は未だに上手く言葉にできない。頭の中でいつも悶々と想いを溜め

ているだけ。私は成長できていない。翔太くんはどんどん光り輝いていくのに私はど

うなんだろう・・・。同じ場所で足踏みをしているだけなんじゃないだろうか。


”好き”


その二文字が言えない。好きという気持が膨れ上がり過ぎて怖くなった。もし、少しで

も躊躇されたらどうしよう・・・。そして翔太くんからも聞かれなくなったのは気のせ

いだろうか。距離を開けられているような気がするのは・・・。

私の思い過ごしであって欲しい。


お互い言わなくなってどれぐらい経つのだろう。


付き合い始めて最初のデートの時、翔太くんは言ってくれた。


”『大丈夫・・・!わかんなくなったらまたちゃんと言うから』


嬉しかった。でも自分自身が分からなくなった時、どうなるんだろう。



”翔太くんも私と同じ気持ちでいてくれてますか?”



言葉にならない心の声を私は抱えたままこの数か月を過ごしていた。




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あとがき↓

キミトドファンの皆様、長らくお休みしていてすみません。それも連載の続きではなくて。
待ってくださってる方、ほんとすみません。また本誌がラブラブになりそうな時こんな話。
実はずっと前に3話ぐらい書いてあって放っておいた二次でしたが急に続きを書きたくな
りました。全11話ほぼ出来上がったのでできるだけ毎日UPします。その後連載頑張りま
すのでお許しを( ̄ー ̄)ちょっとせつない系&やはり私が好きなオリキャラ系です。もち
ろん最後はHappy Endなので♪それからリレー小説も中途半端。あぁどうしよう。