「naturally」 9

この話は「君までもうすぐ」のその先を書いた話です。あの夜、未遂に終わった二人
が最後の関係までいくのがテーマです。(いくのか!?)ヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ

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こちらは「naturally」          の続きです。


※ 「君までもうすぐ」を読まなくても全然大丈夫です。


☆ 爽子を探していた翔太はあやねに言われた言葉に自分の行動を振りかえる。そんな

  時、爽子の姿を見つけて・・・。
  

























気づいてしまった下心の正体。

立派な”心”なんかじゃない。

自然なものなんかじゃない。

初めて知った心。

手に入れたいと思う気持ちを

エゴでなくてなんて呼ぶのだろう。

それは恋愛なら許されるというのだろうか・・・?







「naturally」(9)










がさっ


「!」


爽子は草の音にハッとしたように後ろを振り返った。

そこには翔太の姿があった。翔太は何も言わずににっこり笑うと、そっと爽子の隣に

座った。


「・・・・寒いね」

「しょ・・・翔太くんっ・・・あのっ」


翔太は焦った様子の爽子をいたわるように頷くと、優しく自分の上着を爽子に羽織ら

せた。そしてはぁ〜〜っと夜空に顔を上げて言った。


「・・・矢野に怒られた」

「!」

「自覚が足りないって」


苦笑いをしている翔太を爽子は不安そうに見つめる。


「俺さ、爽子以外まったく見えてないみたいで、まさか他の女の子が自分に恋愛感情

 を持つとか考えなしで接してた。いつも距離は保ってたつもりだったし」

「・・・・」

「・・・ごめんっ・・・今日、本当にごめん。」


翔太はそう言うと、勢いよく頭を下げた。爽子の目がさらに大きくなる。予想もしな

かった翔太の行動に茫然となる。


「爽子を不安にさせてたよな・・・ごめん」

「ち・・・ちがっ・・・違うの」

「!」


今まで黙って聞いていた爽子は、口を開くのと同時に大粒の涙がこぼれた。


プップー


車の行き交う音が喧噪の中、消えていく。


翔太はいつも通り、爽子の涙を拭おうと手を近づける。するとさっと爽子は後ろずさ

りをして翔太から距離を取った。


「!」


その場に一瞬、緊張感が走る。


「あ・・あの、私、迷惑掛けて・・・ごめんなさいっ。突然いなくなって・・ごめんなさいっ」


爽子の顔が長い髪に隠れた。頭を下げたまま上がってこない。

翔太は宙に浮いた手にぎゅっと力を込めると、真っ直ぐ爽子を見つめた。


「・・・ちゃんと言って。爽子の気持ちが聞きたい。誤解したくないんだ」

「・・・・あのっ・・」

「ゆっくりでいいから。俺、ずっと待ってるから」

「・・・・・」


”翔太くんの目にはいつも迷いがない”以前彼にそう言ったことがある。でもそう言う

と翔太くんは ”いつも迷ってる。爽子の前では”・・・・と言っていた。私にはそんな

風に見えない。いつも真っ直ぐ未来を見据えているのは翔太くんだと。

私は迷ってばかり・・・。翔太くんを好きな気持ちが加速していくにつれていろいろな

自分に気づいてしまった。そして、一番嫌な感情。


「言わないと分からない・・・全部言って。ちゃんと受け止めるから。俺、どんなことが

 あっても爽子を嫌いになることなんて絶対ないっ」

「!」


翔太くんの真剣な目。そしてとっても熱い目・・・。いつもその目に守られてきた。私が

迷っていると、怒ってもくれた。100%で応えてくれた。


「・・・すき」

「!」


爽子は次々流れる涙を拭うこともせず、顔をぐっと翔太の方に向けた。


「好き・・・なのっ。好きになればなるほど・・・どうしたらいいのか分からなくなってっ」

「爽子・・・」


しゃくり上げて泣く爽子を見つめていた翔太は、さきほど拒否されたことに躊躇したが、

たまらずぎゅっと抱き寄せた。爽子は身体をびくっとさせたが、次第に力が抜けていった。

翔太は爽子が落ち着くまで何も言わずに抱きしめた。そして優しく髪をなでた。


どのぐらいこうしていただろうか。


爽子は肩で大きく息をすると、”・・・ごめん”と身体を離した。そして真っ赤な目で翔太

を見つめた。翔太は優しく爽子を見つめ返す。その目をしばらく見ていた爽子が戸惑い

ながら、ぽつりぽつりと話し始めた。


「私・・・気づいてしまったの」

「・・・・」

「私の下心が自然じゃないことに・・・」

「え?」


きょとんとする翔太。


「・・・私、翔太くんと大学が離れてずっと・・・不安だったっ」


爽子の純粋な目に翔太は思わず息を飲んだ。


「離れていると寂しくなって・・・でも一緒にいると、どんどん近づきたくなって、キ、キス

 したいなっとか////もっと触れたいなっとか思って・・・全部欲しくなってっ・・・」

「えっ!?//////」


そう言うと、爽子は両手で顔を覆って、かぁ〜〜〜〜っとなった。その姿を呆然と見ていた

翔太も負けずと真っ赤な顔になっていく。


「そんな私はきっと翔太くんに嫌われるって・・・思うと、どんどん普通に接することができな

 くなってきて、苦しくなっていたの」

「そんなわけな・・・っ」


翔太は爽子の暗い表情に言葉を詰まらせた。


私は気づいてしまった。自分の下心に。それはあやねちゃんが言っていた自然なもの

ではなく、エゴ以外の何物でもないことに。自分勝手なモノ。


「でも・・・」


興奮と不安・・・複雑に絡む感情を持て余しながら、翔太は表情を曇らせる爽子を戸惑い

ながら見つめた。次の言葉でまた混乱が広がっていく。


「でも、それは私のエゴだと分かった。私が先に行きたいと思ったのは・・・そのっ・・・

 翔太くん一人占めしたいからでして、それはとてもおこがましい感情で・・・」

「・・・・」


涙を流しながら言う爽子を翔太は茫然と見ると、複雑そうに眉を顰めた。正直、爽子の

言うことが分からなかった。


「・・・あのさ、爽子の言う・・・その先って何?」

「えっと・・・」


爽子は決心したように口をぎゅっと結ぶと、勇気を振り絞るように想いを伝えた。


「翔太くんっと・・・そういう関係になれば、”特別”になれるのかって・・・そんな勝手な

 ことを思っていたの」


翔太はさらに混乱する。爽子は男女の関係のことを言っているような気がするのだが、

そのことではないかもしれない。


(ええっと・・・どういうことだ??)


「・・・翔太くんはとても素敵な人で、皆大好きで、私は・・・翔太くんにふさわしくない

 んじゃないかって・・・」

「・・・・・」

「今日も、翔太くんの大学の友達に感じの悪いことをしてしまって・・・本当に・・ごめんなさいっ」

「えっと・・・爽子、整理していい?あのさ、”その先”と”特別”がやっぱよく分からない

 んだけど・・・」


ハッとした爽子は一呼吸置くと、翔太に伝わるようにはっきりと言った。


「あのね・・・つまり、私は翔太くんをつなぎとめるためにその先に行きたかったのかな・・って

 思ったの」

「・・・え?」


翔太と爽子の視線が固まった。その時、車の流れも信号で止まったのか辺りはし〜ん

と静まりかえった。


実は、爽子の頭の中にずっとあったもの。それは、大学の友達とガールズトークをして

いた時に一人の友人が言った言葉だった。


”『男をつなぎとめるのはやっぱ身体の関係かなって思うの』

 『でも、それだけじゃ簡単な女だって思われちゃうじゃん』

 『でも”特別な関係”になれるのは確かでしょ。結局相手を好きになるのは、セックス
  できるかどうかなんだし』

 『きゃ〜〜ストレート』

きゃはは〜〜〜〜〜っ ”


爽子が翔太の電話の後、会いに行けなった理由はここにあった。爽子が下心で悩んで

いる時に出会った大学の女の子。嫉妬という感情が下心とリンクして、負のループへと

入り込んでしまったのだ。爽子は人に対して嫌な感情を持つということをこの時、初め

て強く感じた。


それはさすがにあやねも分からない、爽子の異次元思考であった。









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あとがき↓

分かりますでしょうか・・・?爽子は嫉妬という感情をはっきりと自覚して持つのが初め
てという設定で、人にそんな感情を持つことに目を背けた爽子は大人の目覚め=嫉妬
=翔太への独占欲とすり替えてしまったわけです。ちょっと悩みすぎだね〜〜〜!
ま、二次なのでそこんとこよろしくです〜〜ヽ(´▽`)/
明日は別マだ!わぁ〜〜〜い!というわけで明日は感想、明後日は最終話です♪