「Once in a blue moon」(29)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26 27 28 の続きです。 


☆ 久々に仕事帰りに飲みに行った蓮と翔太。後半です。 




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 29 ‥…━━━☆






















★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜


注文した料理を食べつくしお互いぼちぼち飲んでいた頃、蓮が思い出したように言った。


「そーいやこの間、光平達を空港まで見送ったんだってな」

「ん、ゆづも空港行けて喜んでた」

「だろな」


頷きながらビールを飲んでいた蓮は、再び翔太の視線に気づき箸を止めた。


「ん?」

「いや・・・なんか、サンキュな蓮」

「え??何だよ、いきなり」

「うん・・・」


翔太は記憶を辿るように遠くを見ると、先日光平と飲んだ時のことを話した。


「仙台に居た頃・・・いろいろ田口に言ってくれてたんだろ?俺と爽子のことで」

「・・・・・」

「田口さ・・蓮に”真っ直ぐ見れる恋愛しろよ”って言われなければ俺と向き合って

 なかったって」


すると、蓮はくっと皮肉めいた顔で苦笑いをした。


「えらそーだよな。言ってる俺が一番ひねくれてたってな」


蓮はそう言って自嘲気味に話すと、ぐいっとビールを飲み干した。翔太は寂しそうな

瞳で蓮を見つめる。


「・・・そんなことないよ。蓮は狡いことできないじゃん」

「ははっズルイこと?どーだろな。ただ面倒臭がりなだけだと思うけど?」

「違うだろ?面倒臭がりなら、この間の電話みたいなことはしないよ。美穂さん、

 あの時蓮と話せて良かったと思うよ」

「う・・ん、かな。俺は話せて良かったと思う」


意外に素直な蓮の反応に翔太は目を大きく見開いた。


「何話したの?」

「・・・めちゃくちゃパニくってたから”俺だよ”って話し続けた。俺の声を聞くことで

 あの頃のことがフラッシュバックするかもって思ったけど、俺の中にまだ驕りがあった」

「驕り?」

「・・・”声を聞くときっと落ち着かせることができる”ってさ・・・」


翔太は真剣な眼差しで蓮を見つめた。


「蓮は・・・美穂さんのことまだ引きずってんの?」


すると蓮はふっと優しい笑みを浮かべる。


「俺の部署にさ、仙台支部にいた時に一緒に働いていた先輩がいたんだけど、こっちに

 先に転勤になったんだ。知ってる?葛西さんって」

「あ・・・名前だけは」

「じゃ、知ってるよな。精神病院入ってること」

「・・・うん」

「今、最悪みたいでさ。特に天気が悪いと気圧の関係もあんのかな?だめなんだよな〜。

 美穂はトラウマもあって、嵐とか暴雨とか最悪だからさ」


そう言って蓮は穏やかな顔で語り続けた。


「何だろう?恋愛とかじゃない。でもつらかったあの頃の気持ちとは違う。ただ・・・」

「ただ?」

「責任は感じてる」

「・・・・」


それは本当だ。蓮は誰よりも責任感が強い。だから長い間恋愛をしなかったんだ。

でも北海道に来て恋愛を始めた。それは出会ったからなのだろうか・・・?


今日の蓮はやたらと饒舌だった。翔太は”珍しい”と思った。5年前の話になると、

あまり本音を言わないことが多かったからだ。


翔太は蓮の表情を伺いながら、それとなく聞いた。


「蓮、何かいーことあった?」

「え?」

「いや、何か明るいからさ」

「・・ははっ。確かに、いつもはもっと暗いか」

「いや、暗いんじゃなくて聞き手の方が多いじゃん」


すると蓮はひとり言のように”翔太にはかなわねー・・”と笑うと、ぽつりと話し出した。


「・・・あれから沙穂から電話があった」

「あ・・・秋山さん、生まれたんだって?早産だったんだってな」

「うん。でも母子ともに元気でもう退院してるそうだよ」

「そっか。それで?」


翔太は先を急くように聞き返すと、蓮は”うん・・”と少しの間を持たせた後、柔らか

い表情をした。


「沙穂から美穂のことを聞いたんだ」

「え・・・?」


沙穂はあの時、美穂を落ち着かせてくれた蓮に感謝した。蓮がいなければどうなって

いたか分らないと。そして今まで蓮に美穂の話題を避けていた沙穂は今回のことをき

っかけに美穂のことを正直に話した。今までのこと、そして最近変わったこと・・・。


「美穂が仕事を始めたって」

「マジで!?」


蓮はコクンッと口角を上げ気味に頷いた。その時の蓮はすっきりとした表情でいつも

ふと感じる憂いを感じなかった。それだけ蓮にとって美穂は大きな存在だったのだと

思い知らされる。蓮は美穂の話を続けた。


今までの美穂は以前のように人格が入り混じることはないが、情緒的に不安定になっ

て家に引きこもったり、外に出ても気分が悪くなることがあり仕事ができなかった。

だが、今回蓮と話せたことでふっきれたように精力的に動き出したそうだ。そのこと

を沙穂に聞いた蓮は嬉しくなった。結果的にお互い話せて良かったのだ。


「そっか・・・美穂さん、ずっと蓮のこと気になってたんだね」

「うん・・・俺も」

「知ってる。ほんとに・・・良かった」


翔太が心から嬉しそうに笑みを浮かべると、蓮は素直に頷いた。


「・・・いつか普通に会える時が来るような気がする」

「うん。きっとそんな日が来るよ。・・・恋人同士で出会うと別れもあるだろうけど、

 その出会いに絶対意味があるからさ」

「うん・・・翔太との出会いにもな」

「もちろんっ!恋人より深いかもよ?」

「悪ぃ、翔太。俺いちおノーマルだから遠慮するわ」

「なっ!!蓮っっ〜〜〜!」


あははっ〜〜


翔太は蓮の明るい表情を見つめながら思った。少しは荷物が軽くなっただろうと。自分

には計り知れない罪悪感を蓮は抱えてきた。


蓮がこちらに来てから遠くなったと思った距離が近づいた気がした。そしてやっと安心

して蓮を見ていけるような気がした。麻美と上手くいくのか分からない。ただ、蓮自身

が前を向かなければ何も始まらないと思っていた。


”これで前を向ける・・・”


その夜、蓮と翔太はいつまでも語り続けた。

明るい未来を思い描きながら・・・。



しかし、翔太は知らなかった。


蓮がもう一つ大きな荷物を抱えていることを。そしてその荷物が全ての根源だという

ことを・・・。





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あとがき↓

明日は別マですね。でも感想書けないかもなぁ〜〜書けたら書きますね。
あぁ・・今日はダウンです。文章変だったらまた修正します(;;;´Д`)