「Half moon」(84)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

仙台の昌の家に泊まることになった爽子は蓮に案内される。蓮は「仙台に来てくれた」と
爽子が再びやってきたことを喜んでくれる。そんな蓮に嬉しくなる爽子だった。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 の続きです。
それではどうぞ↓































********



「昌ん家に行く前にちょっとだけいい?」

「え・・・?」


蓮は爽子を昌の家近くのファーストフードに誘った。店に入った後、飲み物をオーダーする

と二人は向かい合って座った。爽子は風早以外男性と二人になることは滅多になかった

が、無口な蓮と居ても不思議に緊張しなかった。あの時があったからかも知れない・・・。

と爽子は思った。蓮は嬉しそうに頬を染める爽子をそっと見つめる。


「・・・ごめんな。こんな騒がしいとこで」


爽子はぷるぷると首を横に振った。すると突然蓮が頭を下げた。


「・・・ごめんっ」

「えっええ??」

「いろいろややこしくさせてごめん・・・」


爽子は突然の行動におろおろして困惑した表情で目の前の蓮を見つめた。蓮はゆっくり

と顔を上げた。


「俺が・・・全部悪いんだ」

「え??」

「翔太に言えなかった・・・俺が」

「えっと・・・?何のことですか?」


蓮は爽子を見つめると、今までのことを話し出した。爽子は全部聞き終えると寂しそうな

表情をして、視線を下に向けた。


「・・・そうですか。風早くんは美穂さんのこと・・・知ってしまったんですね。」

「なんか・・どっちもごめんな」

「え?」

「いや・・・あんたとの約束破ったこと。それでも・・・翔太とあんたを苦しめたこと」


爽子は哀しげな表情の蓮を見つめると、静かに首を横に振った。


「蓮さんは何も悪くないです。それより・・・秋山さんは大丈夫でしょうか・・・」


この期に及んで沙穂のことを心配する爽子に蓮は少し表情を緩めると、真剣な目を爽子に

向けた。


「俺がちゃんと言うべきだった・・・沙穂を止められなかったのも・・・俺が悪かったんだ」

「違う・・・違うと思います。」

「・・・・・」

「蓮さんは悪くないです。とにかく・・・悪くないです」


拳を作って必死で言う爽子の姿を蓮はしばらく見つめると、ふっと目尻を下げた。


「あ・・あの?」

「いや・・・ごめん」


爽子はきょとんとしながら優しい顔で笑う蓮を見ていた。そして柔らかい笑みを浮かべた。


「ふふ・・・不思議」

「え?」

「うん・・・なんかね、こうやって蓮さんに会っているのが不思議」

「あ・・・・翔太に怒られんな」

「ううん・・・なんか、嬉しいなって思ったの。風早くんのおかげだって。風早くんがいなければ

 こんなに素敵な人達に会えなかったから・・・。私、秋山さんにも感謝してます。私がどれだ

 け風早くんを傷つけたか・・・やっと分かったの」

「もしかして沙穂に会った?」

「あ・・・うん。昨日」

「そっか・・・」


蓮は爽子の言葉と表情から沙穂とのことが解決していることを感じた。


「・・・・あいつ、翔太。マジであんたのことしかないよ」

「・・・・はい」


爽子は想いをこめるように頷くと、胸の前の手をぎゅっと握った。蓮は空港でも必死に風早

の想いを伝えようとしていた。その気持ちを素直に受け入れることができなかった自分が悲

しかった。でも今は、そのまま受け止めることができる。一人ではこんな気持ちになれなか

った。なんていい人ばかりなのだろう・・・。


(蓮さん・・・本当にありがとう)


爽子は浮かんだ涙を閉じ込めるようにごしごしっと目を擦った。


「あの・・・美穂さんは?」

「今日、退院した。」

「え??本当・・・?お、おめでとうっ」


蓮は目の前の爽子の純粋な目を見つめると、つらそうに目を背けた。


「・・・これからだから。」

「・・・・・」

「退院したからと言って、何も治ってないんだ」

「・・・そうです・・・か。」


爽子は喜んで言ってしまったことを恥じるように俯いた。


「俺・・・翔太にも言えなかったことあるんだ」

「??」


蓮は真剣な目で爽子を見つめた。あまりの真剣な顔に爽子は思わず身構えた。


「俺・・・・っ」

「―蓮っ!爽子ちゃんっ!!」


その時、突然呼ばれた声にハっとしたように二人は振り向いた。


「もう〜〜〜遅いよ。何かあったのかと思ったよ。何回もメールや電話したのに。お茶してたの??」


そこに立っていたのは昌だった。蓮は携帯を取り出すと、昌の着信履歴があった。


「悪り・・・」

「あ・・・こんばんわっ」


爽子はしゃちほこのように頭を思いっきり下げた。


「いらっしゃ〜〜い。待ってたよ。こっち」


昌はくったくのない笑顔で爽子を迎えると家の方へ案内した。もともと人を家に泊めたり

世話をするのは大好きな昌はとっておきなお客さんに舞い上がっていた。




* * *



「荷物はここに置いて。これ爽子ちゃんの布団ね。それから・・」


玄関に突っ立ている爽子をよそに昌はてきぱきと動いていた。そしてぱっと後ろを振り向

くと、固くなっている爽子に気づいた。


「ほらっリラックスして。爽子ちゃんがうちに泊まるなんて偶然もうないんだから」

「・・・本当にすみません・・・」


申し訳なさでいっぱいの爽子を昌は引っ張って部屋に引き入れると、机の前に座らせた。


「もう〜っ寒かったでしょ。とりあえず飲もうよっ。蓮はビールでいいでしょ?」

「うん。もうちょっとしたら帰る」

「まっそう言わずにさ。太陽も呼んだんだけどもう寝てた。あいつ早いな」


あはは〜〜〜っ


おろおろしながら固い表情の爽子を昌はそっと見つめた。


「でも・・・すごいよね。爽子ちゃん達」

「え?」

「思ってることが同じすぎるよ〜。タイミングもね。」

「うん・・・」


昌はビールを開けると蓮に注いだ。そして爽子には酔ハイを渡した。自分も注いでもらい

3人でカンパ〜〜イとグラスを当てた。爽子は昌のハイテンションに付いていけず、なす

がままグラスに注がれた酔ハイを口にした。昌はぐいぐいとビールを飲んでいる。


「いや〜〜〜すごいよ。やっぱ二人は。光平なんか敵うわけないっつーの」


爽子は光平の名前が出ると、どきっとした表情をして戸惑い気味に昌を見つめた。


「あっ爽子ちゃん気にしなくていいよ〜〜光平のことは。時間が必要だろうけどね」

「昌さん・・・」


爽子は昌をじっと見つめる。  ”「昌は全部分かってるから・・・」”

さっき蓮の言った言葉を思い出した。


もしかして、昌さんは全部知っている?田口くんのことも沙穂さんのことも・・・?

全部知っていて、こうやって泊めてくれる・・・。

爽子は目を潤ませながら昌を見つめた。


「・・・・ありがとう」

「え?」


きょとんとしている昌に蓮はふっと笑ってビールを注いだ。


「・・・ほらっ」


そんな二人を爽子は嬉しそうに眺めていた。

風早を通して出会った人達。自分は幸せだ。こうしてこの場にいることに爽子は幸せを噛

みしめた。

そして、明日・・・・会える。


爽子は風早のことを思うと心臓がとくんっと動くのを感じた。こんな気持ちになったのはいつ

以来だろう・・・。


蓮は幸せそうな爽子を横目で見つめると、複雑そうな表情を浮かべた。



* * * *



「え〜〜〜蓮もう帰るの?」

「悪いな・・・」


蓮は一時間ほどすると帰り支度を始めた。玄関まで行った蓮に爽子は声を掛けた。


「あのっ・・・ちょっとだけいいかな?」

「え・・・?」

「昌さん、ちょっとだけ外に出るね」

「あ・・・うん?」


蓮と爽子が外に出るのを昌は首を傾げて見ていた。

マンションの外に出ると、爽子はずっと気になっていたことを口にした。


「あのっ・・・美穂さんに会いに行っていいですか?」

「・・・さんきゅ。でも沙穂いるよ」

「うん・・・行かせてもらえたら嬉しい・・・」


蓮は了解と頷くと、そのまま振り返らず帰って行った。爽子は蓮の寂しい背中を見つめな

がら、蓮の心に背負った心の傷に胸を痛めた。


爽子は美穂のことがずっと気がかりだった。目を瞑ると純粋な目が浮かんでくる。そして

別れ際の悲しい目が・・・。


爽子はぎゅっと胸を押さえた。















あとがき↓

書いているとどんどん引き伸ばしてしまうところが皆さんをイラつかせるとこなんでしょう
ね。蓮のこともはっきりしろってところでしょうが、これが私です。ヤキモキ推進委員会を
立ち上げられそうですね(汗)二人が会うまでに蓮の話をちょっと進めます。それでは、じ
れったさに我慢できる方は続きを見に来てください。

PS 昨日のコメ返ししています。(今回は早いでしょ〜〜♪( ^ω^))

Half moon 85