「Once in a blue moon」(58)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
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47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 の続きです。
 

☆ 仙台七夕祭り、仲間達が集まったが蓮の姿がない。庄司は今朝から変な胸騒ぎを感じ
ていた。蓮は一体どうなっているのか・・・?蓮視点入ります。



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 58 ‥…━━━☆



















その時麻美が息を切らしてやってきた。


「麻美ちゃん!!」


爽子が向こうから走ってくる麻美を見つけて駆け寄った。皆の注目を一気に集める。


「はぁはぁ・・・爽子さんっ・・・遅れてごめんなさい」


麻美は膝に手をつき息を整えている。そして皆を見て緊張気味に頭を下げた。

しかし麻美の横に蓮はいない。翔太が即座に聞いた。


「蓮は?」


すると麻美は一瞬戸惑った後、必死に気持ちを落ち着かせながら蓮にあった出来事を

話した。


「実は・・・」


二人は一日前に仙台入りしていた。蓮に仙台を案内してもらい麻美はとても楽しい一

日を過ごした。しかし、その翌日蓮の元に訃報が入る。


「え?葬式?」


一同麻美の言葉に唖然となった。蓮の仙台での同僚で、先に北海道に転勤になってい

た葛西という男が亡くなったというのだ。そして今日実家の仙台で通夜が行われると

いう連絡が入った。麻美は葛西を知らなかったが、蓮のあまりの驚愕ぶりに付き合い

の深さを感じたことと、30代という若さで亡くなった同じ会社の人間だということ

に驚いた。


「・・・・」


翔太も驚いた。葛西の名は知っているが付き合いはない。蓮が新入社員の時に世話に

なったと言っていた人だ。蓮はかなりショックを受けていると翔太は思った。

話を聞いて皆のテンションが下がり空気が重くなるが、とりあえず心配していても始

まらないので予約していた店に皆で向かうことになった。麻美も戸惑いながらも一人

で仲間達との会合に参加する。でも風早家も知っているし、昌、そして今回珍しく参

加した庄司も内緒だが顔見知りだ。麻美は庄司の顔をちらっと見ると目で会釈をした。

庄司も目で返す。


「せっかく・・・七夕祭りだったのにねぇ」


昌は麻美の隣を歩きながら言った。


「麻美ちゃん、蓮大丈夫そう?」

「あ・・はい。感情をあまり出さない人なので分からないけど、多分・・・」

「麻美ちゃん!私沙穂。初めまして。やっぱなぁ〜〜」

「初めまして・・・あの?」


そこにフレンドリーに沙穂も加わり、麻美を見て納得するように言った。麻美は不思

議そうに沙穂を見つめる。


「いや、蓮ってめっちゃメンクイだと思って」

「え??そ、そんなっ」

「いや、メンクイだよ、蓮。だって美穂さんだって・・・あっ!」


ボカンッ


「イテッ」


一発沙穂にやられた太陽は、沙穂と昌に思いっきり睨まれシュンッとする。沙穂は取

り繕うように麻美ににっこりと笑った。


「ごめんねぇ〜〜こいつデリカシーないから未だ彼女いないのよ〜〜」

「っさいわぁ〜〜!!」


わはは〜〜〜っ


場の空気が一気に明るく浮上した。しかし、翔太は笑いながらも蓮のことが気になっ

ていた。


* * *


その時蓮は葛西の通夜に出た後、ホテルに向かってぼちぼちと帰り道を歩いていた。


なぜ・・・葛西さんが


先ほどから頭の中でぐるぐると疑問ばかりが浮かぶ。

肺炎をこじらせて不運にも亡くなったということだが、本当にそうだろうか・・と。

その時、通りすがりの中年ぐらいの女性が二人でこそこそっと話しているのが聞こえた。

その会話にどくんっと大きく心臓が脈打つ。


『自殺なんでしょ、本当は』

『そうみたい。精神病院に居たんだから。それを家族は隠してたけど分かるもんよね』

『北海道の病院に入院してたから分からないと思ったのかしら』

『あの家は何かと世間体を気にするから・・・』


蓮はその会話を横目に”やっぱり・・”と納得した。結局、北海道で葛西の面会には行

けなかった。悪い状態だと聞いていたからだ。どんなに隠そうとしても人の口には戸

を立てられない。蓮はまるで美穂の家を見ているようだった。


やりきれない気分だ・・・。


そして蓮をさらに追い込む会話が耳に入る。


『結局離婚してからよね。奥さん・・・男作ったんでしょ?』


(・・・え?)


新入社員だった頃、葛西はまだ結婚していなかったが大事な彼女が居ると言っていた。

幸せそうだった。

永遠の愛なんてない。そんなこと分かっているのにものすごい絶望感が蓮を襲う。

人は簡単に壊れる。そう・・・簡単に人によって壊される。



せつない夏の夜、蓮は哀しい目でフルムーンを見つめる。きれいな満月の夜だった。

せめて2回目の満月であれば・・・ブルームーンであれば何か奇跡が起こるかもしれ

ないのに。晴れない心に光が差し込むかもしれないのに・・・。


(・・皆のところに一目顔見せようと思ったけど、ホテルに帰ろう・・)


そんなことを思いながら月を見上げている時、暗がりの中に人影が見えた。後ろの車

道から車のライトが反射して蓮は眩しさで思わず手の甲で顔を覆う。


ブゥ〜〜〜〜ンッ


車が走りさり、目を細めていた蓮が手を下ろすと、明確になった人影の存在。


「・・っっ!」



蓮は一瞬言葉を失った。







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あとがき↓

ここから修正部分です。一回書いてたけど書き直した部分&悩んだ部分・・次々回のあとがきで!