「Once in a blue moon」(106)

※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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98 99 100 101 102 103 104 105 の続きです。 

☆ 結月と奇跡を見た蓮は風早家に強く支えられていることを知る。すべてを共有した3人
  は新たな関係を築いていく。
 












・‥…━━━☆ Once in a blue moon 106 ‥…━━━☆














「蓮、退院おめでとう」


パンパンッ〜〜ッ


「おっっ・・・えっ」


翔太がそう言ってバッと玄関を開けると同時にクラッカーが飛び交う派手な演出に蓮
は思わず引くと同時に、懐かしい面々が目の前に広がり驚きを隠せなかった。


「「おめでとう〜〜〜!!」」
「光平、昌、沙穂、庄司先生、太陽・・・」


この日、風早家で開かれた蓮の退院祝い。招かれてやって来た蓮を迎えたのは仙台の
仲間達だった。忙しいのにそれぞれが休みを合わせて北海道まで来てくれたこと、そ
して準備をしてくれた風早家にむず痒いほどの嬉しさがこみ上げる。まさかこんなに
集まってくれるとは思っていなかったのだ。


「・・みんな」


蓮はこの一瞬でも、今まで頑なに人に心を許していなかった自分を恥じた。不思議に
今まで見えなかった世界が見える。否、見ようとしていなかったことに気付いた。ど
んな時でもこの仲間達は見捨てず、受け入れてくれていたというのに。


「・・さんきゅ」


照れを隠すようにぎこちなく言う蓮を皆、温かい目で見守る。しんみりとした雰囲気
を変えるように昌は冗談まがいに踏ん反り返って言った。


「ったく、事故のこと言ってくれないんだから水臭い」
「だよね、蓮は昔からそうだよ」
「まぁこれが蓮だから慣れてるっつーか」
「とにかく久々に会えて嬉しわ〜〜!!相変わらず男前で、くそって感じ」
「なんじゃそれ」


あはは〜〜っ


昌、沙穂、光平、太陽がそれぞれ愛情を持って弄る。その懐かしい光景に蓮の頬が緩
んだ。そして結月が代表で花を渡す。豪華な花の中に結月が摘んだタンポポもあり、
蓮の頬がさらに緩む。蓮は結月の目の高さまでしゃがみ優しく頭を撫でた。


「ゆづ、ありがとう」


結月は少しはにかみながらニカッと笑った。


「あ、あのとりあえず・・お食事どうぞっ!」
「そうだよ、まずはメシ!。こっちこっち」
「わぁぁ〜〜待ってました」


爽子と翔太はそう言うとリビングに皆を案内する。そこにはいつも以上のすごいご馳
走の数々が並んでいた。


* *


テーブルに並ぶご馳走を囲み、周りのソファーや簡易椅子に寛ぎながら飲んで食べて、
気の置けない友人たちのトークは留まることなく続く。この日、沙穂の子どもは実家
に預けてきた。子どもは結月一人で、緊張気味の結月はいつものようにすらすらと言
葉は出てこないが、一言でも発するたびに場が湧きたち、主役級になっていた。そん
な結月を隣で見守る蓮。以前より人に対して心を開いている結月と蓮の変化をここに
いる誰もが感じていた。


「庄司先生もお忙しいのに・・わざわざすみません・・」
「いやいや、まさか生死を彷徨っていたなんて知らずに」
「言ってなかったんだから当たり前ですよ」
「とにかく良かったです。元気そうな蓮さんに会えて・・良かったです」


庄司と蓮は微笑み合った。隣で太陽が一心不乱に食べ続けている。


「うまっ!風早いーよなぁ〜〜こんなご馳走毎日食べてんの??」
「ふふん、いーだろ」
「うぅ・・っくやしーけど、こりゃぁ胃袋掴まれるわ」
「太陽釣るのは簡単だな。胃袋のみじゃん」
「んなことないわっ!!女の好みはうるさぞっ!顔は芸能人の○○で出るとこ出てさ」
「あほかっ!だから結婚できないんだよ」


あはは〜〜っ


永遠と続く太陽の理想の女像に光平は辛口を投げる。そんな懐かしい光景に皆は和や
かに笑う。それからも場には笑いが絶えなかった。


* *


「爽子ちゃん手伝うよ」
「あ、ありがとう」


甲斐甲斐しく動いてる爽子が台所に行くと、昌がリビングを気にしながら後を追って
台所にやってきた。


「じゃ、トマトを切ってここに乗せてもらえるかな」
「ラジャー」


そして隣で並んで作業しながら昌はそれとなく爽子に聞いた。


「・・麻美ちゃん、もういないんだよね」
「あっ・・うん」
「蓮とはもう?」
「二人の間のことは分からないけれど・・多分、海外に行ってしまっているのですぐ
 には会えないかも」
「ーそうなんだ」
「「ー!?」」


後ろから突然の聞こえた声に二人はハッとして振り向くと沙穂が立っていた。3人は
作業しながら久々のガールズトークに花を咲かせる。


「でもさ、蓮変わったね」
「うん、そう思う」


沙穂と昌の言葉に爽子は嬉しそうに目尻を下げ頷いた。


「事故が転機だったの?結月ちゃん喋りだしたんでしょ。それから」
「うん。二人は・・特別だから」
「・・そうだね」


爽子が言った”特別”に二人は何の疑問も湧かない。結月が生まれて、昔からの付き合い
の沙穂と昌は特段子ども好きでもなかった蓮の新たな面を知った。


「結月ちゃんが大きかったら良かったねぇ。まさに理想に”女”になったりして」
「だよね、結月ちゃんみたいな彼女探したらいんだよ」


からかい気味に言う昌と沙穂に合わせるように爽子は少し笑った。


多分そんなじゃない・・・と爽子は思った。でも二人の絆を人に分かってもらうことは難
しいことを知っている。蓮の話を聞いてずっと感じていた二人の繋がりは特別なものだと
いうことを知った。それはお互いが通じ合っていれば良い話で誰かに分かってもらう必要
がないことも。そして自分と蓮のことも。


(翔太くん・・・)


爽子はリビングで楽しそうに話している蓮と翔太に目を向けながら翔太と会話を思い浮
かべた。





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あとがき↓
カウント4ですね。次回は蓮と爽子の密会に翔太がどう思っていたか・・というのを
入れます。相変わらずやきもち焼きの翔太をお楽しみください(笑)私の中では昌×
光平は子どもはいない夫婦。沙穂達はのちにもう一人。太陽は40過ぎに結婚って感
じの妄想です。風早家は一人っ子がいいなぁと個人的に思ってます。さて蓮は・・?