「彼女の王子様」2
主人公は高校一年の男子。風早はその子の担任の先生。爽風を取り巻く客観的な目で
繰り広げられる妄想です。オリキャラ中心になりますので、興味のない方はスルーで
お願いします。キミトドメンバー出ます。
風早に真剣に恋する琴音、そしてそれを見守る幼馴染の賢。しかし賢は知っていた。
風早が琴音に振りむくことは永遠にないことを・・・。
この話は「私の王子様」1 の続きです。
以下からどうぞ↓
「ふぁぁぁ〜〜っ」
(あ・・・・っ)
あくびをしたまま賢は止まる。教壇で担任がガン見しているからだ。あれから徹龍軒に
あやねさんとケントさんも来て、夜遅くまで盛り上がった。風早は担任として俺を帰す
ことに必死だったけど、千鶴さんやあやねさんが帰してくれず・・・。
(俺のせいじゃねぇっつーの)
斜め横を見ると、相変わらずうっとりとした顔で風早を見ている琴音。可能性のない
恋をする琴音を止めるべきだって分かってる。でも写真をあげたりすると、本当に嬉
しそうに笑うから・・・ずるずる言えなくなる。
(あぁ・・・ほんと、俺ってサイテー)
「高倉くん」
「えっ!?」
(ークン??)
気づくと風早が目の前に立っていた。目が据わって笑っている。周囲はがやがやとし
ていて、いつの間にか授業が終わってることに気付いた。
「後で、職員室に来るように」
「なんでっ・・・「何か??」」
風早にそう言われると”はい”と言わずにいられない。風早は優しい顔で受けくさいの
に結構Sだったりする。有無言わさないところがあるっつーか。だからクラスもまと
まるんだろうけど。筋があるし、頼りにもなる。
(女子が憧れるのも分かるよな・・・)
ハッとしたように斜め前の視線に気づく。
「せんせー早川が今日の授業分からないとこあったって」
「えっ!!」
ぼっと顔を赤くした琴音が驚いた表情で俺を見ている。
「え?どれどれ」
「あっあの・・・ここなんですけど///」
俺・・・何で琴音に協力してしまうんだろう。その理由は分かっていた。
* * *
『け〜〜んちゃん!あ〜〜〜そぼっ』
『あ・・・ことねちゃん、だめだよボクとあそんだら』
『なんで?』
『なんでって・・・ボクとあそんだらほかのこにいじめられちゃうよ』
『なんで?わたしはあそびたいもん』
幼馴染だった俺たちはいつも一緒に居た。そして小さくて弱かった俺を琴音はいつも
守ってくれたんだ。琴音にとって周りの評価なんて関係なかった。ただ、俺と居たい
からというシンプルな理由なんだと思う。琴音はかなりマイワールドが強くてたまに
変人扱いされるけど、周りに流されない強さに俺は何回も救われてきた。
だから琴音には逆らえない。心の奥底でそんな感情が動いてしまう。
そんな琴音が恋をした。小さいころから知ってる琴音だから憧れなんかじゃないのが
分かるんだ。だからこそ傷つくのを見たくない。
* * *
「なんかおかしくない?」
「?」
ある休日、千鶴は龍の店を手伝っていた。そしてバイトをしている賢を見て龍にこそ
っと耳打ちした。そこには確かにぼーっとして皿を洗っている賢の姿。客が引いたの
を見計らって、千鶴はふざけてど〜〜んっと賢に体当たりした。
「わっ!!びっくった〜〜〜っ千鶴さん!?」
「何だよぉ〜〜恋の悩みか?」
「へ?」
俺の心臓がどくんと動いた。なぜ動いたのかその時は分らなかった。
「はぁ?そんなじゃないですよ。ただ、色々あるんです。こーこーせーは」
「ふぅん?私ん時は楽しいことしかなかったけどなぁ〜修学旅行は美味しかったし」
「・・・修学旅行」
「!」
龍さんにそう言われると、千鶴さんは段々発火したように真っ赤になっていった。
「どうしたの?千鶴さん」
「え??な、な、なんもないっ!!////」
俺は意外と空気を読めない奴らしい。そのまま思っていることを何気なく聞いた。
こんなに長い付き合いなのに動揺するなんて思ってなかったし。
「ね?幼馴染なのにどうして恋愛関係になったの?」
「えっ!?な、なんだよっいきなり」
すると、千鶴さんは思いっきり身体をのけ反らせた。あまりのオーバーリアクション
にこっちが驚く。
「え・・と、最初から恋愛感情とかあったのかと思って」
「!!」
そう聞くと千鶴さんはまたまたぼんっと真っ赤になって笑って誤魔化す。
(めちゃくちゃ動揺してるし。この人いくつ??)
そこで龍さんがぼそっと言った。この人は相変わらず表情が変わらない。
「修学旅行」
「え?」
「俺が千鶴に告白した」
表情は変わらないけど、龍さんは優しい目をして千鶴さんを見ていた。なるほど・・。
だから”修学旅行”だったんだ。龍さんはずっと千鶴さんが好きだったけど、千鶴さん
は恋愛対象じゃなかったって。恋愛でなくても大切で、かけがえのない人で。それが
恋愛に変わるってどういうことだろう?つまり龍さんの気持ちの強さが千鶴さんに伝
わったということか。想いの強さって、相手に伝わるものなのだろうか・・・。
俺は幼馴染の琴音のことを思い浮かべていた。
* * *
琴音とは幼馴染で、それ以上でも以下でもない。でもかけがのない大切な人であるの
は変わらないわけで、それは千鶴さんと龍さんと一緒で・・・。
なぜかもやもやしている。
(二人のラブラブを見過ぎたからか・・・)
「う”〜〜〜もう分かんないやっ!」
賢はバイト帰り、頭を掻きむしりながら思わずひとり言を発した。
「あの・・・・賢・・・さん?」
「!」
その時、背後から聞こえた声に振り向くと、暗闇に意外な人物が立っていた。
<つづく>
「彼女の王子様」3 へ
あとがき↓
龍ちづを書いてみたくなった。ちづはずっと照れそうな気がして。しかし龍は一本筋
通っているような気がします。愛も深い。大切なものがこの人もちゃんと見えている
んですよね。こういう人は大成すると思う。若いころから自分が分かってそう。