「彼女の王子様」5 最終話

主人公は高校一年の男子。風早はその子の担任の先生。爽風を取り巻く客観的な目で

繰り広げられる妄想です。オリキャラ中心になりますので、興味のない方はスルーで

お願いします。キミトドメンバー出ます。


琴音が傷つくと思い、なかなか真実を言えなかった賢。しかし琴音は全部知っていた。

罪悪感でいっぱいの賢は・・・?最終回です。


この話は「私の王子様」1 2 3 4 の続きです。

以下からどうぞ↓
























琴音はキラキラした目でいつも風早を見ていた。でも、白馬の王子様であった風早は

永遠に琴音を迎えには来ない。なぜなら王子には大切な人がすでに居たから。

俺は琴音に笑っていて欲しかった。ただそれだけだったのに・・・。


「・・・・・」


無言のまま俯いていた。その時、琴音がぽつりと話し出した。


「あの夜、賢を見かけた。声を掛けようと思ったら知らない女の人が現れたの。そし

 てその後先生が・・・」

「え・・・」


どくっっ


俺は動揺を隠せなかった。

あの時、琴音が居たなんて・・・。

胸がきりきりする。この痛みを俺は味わいたくなかったのか?


俺は恐々と目線だけ上げて、琴音を見つめた。


「それから・・・次の日、先生に勇気を出して聞いたの」

「え?」

「ちゃんと・・・先生は教えてくれた。全部。賢のことも・・・」


(・・・風早が?)


意外だった。そんなことをぺらぺらと風早が喋るなんて思ってなかったんだ。でもなぜ

風早が琴音に全部話したか・・・。

それは風早が俺のことを全部お見通しだったからだということを後で知ることになる。


「ご・・・ごめんっ琴音。ずっと黙ってるつもりはなかったんだけどさ・・・っ」

「・・・・・」

「怒ってる・・・?」


腕を組んで俺を睨んでいる琴音を俺は真っ直ぐ見れずに俯いたまま聞いた。


「怒ってるよ」


(・・・だよなっ)


俺は動揺しまくってどうすればいいのか分からくなり、髪をくしゃくしゃとかき乱した。


「何に怒ってるか分かってんの?」

「・・・黙ってたことだよな」


琴音に睨まれ、俺は蚊の鳴くような声で答えた。これはまさに親に怒られている子供

の姿だ。これじゃ女子達にからかわれてもしょうがない。


「違うわよっ!!私のことを信用していない賢に腹立つのよっ!」

「・・・・え?」


俺は訳が分からず、きょとんっとした顔を上げて琴音を見つめた。


「ばかっ!私が、失恋から立ち直れない・・・とか思ってたんでしょ。冗談じゃない

 わよ!そんな弱い女じゃないっつーの」


琴音はぶすっとした顔でいつも通り怒りながら言う。

全部俺の自分勝手な思い込みだったことを知った。俺が琴音を傷つけまいと必死にな

っていたことが何の意味もなさなかったのだ。


・・・というか、逆に傷つけてしまった。


「賢はさ・・・優しすぎんのよ。そんなに私に恩を返さなくていいのよ」

「恩?」

「何かにつけ、子どもの頃言ってたじゃん。”一緒にいてくれて嬉しい”って」

「・・・・」


恩は感じてる。でも何か違う。この違和感・・・その後、俺は無意識に動いていた。

琴音の腕をばっと取った。


「えっっ」

「・・・違うよっ。恩じゃない。好きだから・・・琴音が好きだから泣くのを見たく

 なかった!!」

「!」


目を見開いて、驚いている琴音。


そっか・・・そうだったんだ。やっと気づいた。俺は琴音が笑っていたらそれで嬉し

かった。それは琴音が好きだから・・・。


あまりにも近い存在だから気付かなかった。でも琴音はずっと俺にとって特別な存在

だったのだと、やっとこの時気づけたんだ。



********


一週間後〜



あれから風早に、なぜ琴音に全部話したか聞いてみると、さらっと言われた。


”『だって高倉の大切な子だろ?』”・・・と。


そっか・・・風早は全部分かってたんだ。もう認めるしかない。風早がすごい教師だ

ということ、そして琴音への気持ちは恋愛感情なんだってこと・・・。


「けっ〜〜〜〜ん、聞いたぞっ!!」

「わわっうぐっっ・・!」


俺がバイトに行くと、なぜか宴会場のようになっていて沢山のご馳走が並んでいた。

戸を開けた途端に千鶴さん恒例の羽交い絞めに遭う。


「好きな子に告ったんだってなぁ〜〜ひゅ〜ひゅ〜」

「えっ!?」


俺は顔を歪ませて風早を見る。すると鼻歌なんか歌って何もなかったように爽子さん

といちゃついている風早。


(ムッカッツク〜〜〜ッ)


「んで?結果は?」

「ケントさん??」


振り向くと、ケントさんだけでなく、あやねさんもにやにやしてこちらを見ている。

結局、全員知れ渡っているらしい。俺はがく〜〜っと脱力する。そして観念したよう

に恋の結果を報告した。この人たちに敵うわけない。


「フラれました」

「え??まじで〜〜〜!!」


千鶴さんとあやねさんが素っ頓狂な声を上げる。いつもからかわれるけど、二人とも

優しいのを知っている。心配そうに見つめる皆に心が温かくなる。


「でも、気持ちが強ければ伝わるって知ってるから諦めません」


そう言って龍さんを見ると、優しく微笑んでくれた。そして平然と言う。


「さ、今日は店閉めて、賢の失恋パーティーだから」

「ええぇぇ〜〜〜〜っ」


わはは〜〜っ


表面労わってくれてなくても、俺のためにみんな集まってくれて、料理も用意してく

れたことが嬉しくて、泣きそうになる。なんていい人達なんだろう・・・って。


1時間経過ー


わはは〜〜っ


「・・・・・」


すっかり皆ほろ酔いで俺の話題は全く出ずに、それぞれの話題で楽しんでいる。

そして俺の話題が出てもただの酒の肴・・・。


(結局騒ぎたいだけかよっ!)


「いい人達なわけねっ〜〜!」

「え!?大丈夫?賢くん」


ぶすくれて、叫んでいる俺に爽子さんがジュースを注いでくれた。


「ありがとーございます。あっ・・・爽子さん知ってました?」

「え?」

「風早が爽子さんの花壇を守ってること」

「・・・え」


北幌高校が薬草を扱ってることは知っていたらしいけど、風早が理科部の顧問だとい

うことは知らなかったようで、聞くと大きな目を潤ませていた。




自分のことのように相手を想う。千鶴さんと龍さんのように、そして風早と爽子さん

のように・・・。あの花壇の前で笑い合っている高校生の二人を思い浮かべる。そし

て、その姿がそのまま俺と琴音の姿に変わると、俺は胸が熱くなった。大切なものは

何も変わらない。だけど、その想いが”恋”だと気付いた時、いきなり光が差し込むよ

うに俺の人生が輝き出した。


彼女の王子様がいつか俺になりますように・・・。


俺はそんな未来を思い浮かべながら、皆の笑顔を見つめ続けた。



<おわり>

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あとがき↓

なかなか更新できなくてすみません。この話の番外編でこの時の風早&爽子を書きた
いと思ってます。それからもう少し風早先生も書きたいなぁ・・・。書きたいものは
沢山あるんですけどね・・・。いつもご訪問ありがとうございます。
それから震災後1年経ちましたね。忙しさにかまけてちゃんと考えられていないよう
に思います。被災された方でこちらに遊びに来てくださっている方はいるのでしょう
か?ほんの少しの楽しみにでもなれば嬉しいです。頑張ります〜〜〜っ!