「彼女の王子様」1

主人公は高校一年の男子。風早はその子の担任の先生。爽風を取り巻く客観的な目で

繰り広げられる妄想、パラレルです。オリキャラ中心になりますので、興味のない方

はスルーでお願いします。キミトドメンバー出ます♪

以下からどうぞ↓

































「はぁ・・・・っ」


今日も一人の悩める乙女が机にうつ伏せながら写真を見てはため息をついていた。

それを傍目に見ていた彼女の友人たちが呆れ気味に近づいた。


「琴音、あんたまた写真見てんの?」

「・・・だってさ、この写真の先生カッコよくない?」

「あれ?新しい写真。どうやってゲットしたの?」」

「賢(けん)にもらった。ね〜〜賢♪」


俺はいきなり女子達に見られて、ぎょっとして視線を逸らした。


「なんで賢くんが持ってんの?」

「だってあいつ、なんか知んないけど先生と仲がいいんだもん。だから無理やり写真

 撮るようにお願いしたんだ」

「幼馴染とはいえ、よくやるよねぇ〜賢くん。やさし〜」

「い〜〜の。賢は何でも言う事聞いてくれるんだからっ」

「出たぁ〜〜〜おじょー発言」


呆れ気味に琴音と俺を交互に見る友人たち。俺はきっと琴音の下僕のように思われて

る。彼女たちは俺に聞こえないと思っているのか、くすくすと笑いながら陰口を言っ

ている。


”『賢くんってちょっと頼りないんだよね〜〜』

 『ビジュアル悪くはないんだけどね、タッパもあるし。でも彼氏としては・・ねぇ』

 『やっぱ男らしさは重要だよ』”


きゃははっ〜〜〜っ


(ほっとけっ。聞こえとるわ)


そんな女子達と琴音は少し違う。表の顔も裏の顔もない。自分の思いのまま突っ走る。

俺はそんな琴音に振り回されっぱなしだ。


友人たちが去って行くと、琴音は顔を歪めてぶつぶつと不満げに呟いた。


「ったく絶対無理とか思ってんだから。ムカツク。賢は応援してくれるよね?」

「えっ・・・いや、俺はどっちでも・・」

「え!なんてっ?」

「いやっ・・・」


琴音に睨まれ、賢は思わず視線を逸らした。


(はぁ・・・なんで俺、琴音にこんなに弱いんだろ)


賢はそんな琴音の様子を頬杖ついて見ては、はぁ〜とため息をつく。幼馴染の早川琴

音とは長い付き合いだ。何の因果か高校も同じでしかも同じクラスになってしまった。

そして琴音は半年前の入学式で、教師の風早を見た時に一目で恋に落ちた。女の子な

ら誰でも白馬の王子様を夢見るとしたら、先生はまさに現存する ”王子様”だ。あの

爽やかな笑顔に惹かれるのは分かる。でも琴音は憧れなんて思ってない。


あはは〜〜〜〜っ


「やだぁ〜〜〜先生たらっ!」

「!」


廊下から聞こえてきた黄色い声に耳を傾けると、風早が女の子に囲まれて歩いていた。

男女問わず人気がある先生に憧れている女子は多いだろう。でも琴音はそんな女子達

に焦らない。なぜなら琴音の目が言っている。”私はあの子達とは違う”・・・と。

そう、琴音にとって風早は憧れなんかじゃなく、マジ恋だと思ってるから面倒だ。


「はぁ・・・」


この日も乙女は最愛の王子様の写真をうっとりと眺める。そんな琴音をよそに賢には

内緒にしている大きな秘密を抱えていた。



* * *



「ーらっしゃい。あ・・・」

「よっ高倉。ラーメン」

「・・先生また来たの?」

「それが客に向かって言う言葉かぁ!」

「へ〜〜い、らっしゃいませ〜」


風早は仕事を終えて、龍のラーメン屋に寄った。厨房にいる龍と目で挨拶をする。


「龍、高倉頑張ってる?」

「ん、高倉賢頑張ってるよ」

「龍さんっ〜〜〜フルネームで呼ばないで下さいよっ!字が違うし」


わはは〜〜っ


高倉賢が龍の店でアルバイトを始めて3ヶ月。そしてこの店が、偶然来た担任である

風早の親友の店だと知ったのは2ヶ月前。それからというもの、風早は頻繁に来るよ

うになった。だが賢は誰にもバイト先を言っていなかった。なぜなら、もし女子達が

この事を知ると押し寄せるのが分かっていたからだ。もちろん琴音にも言えるわけが

なかった。


がらっー


「おっっ!け〜〜〜ん、元気!?」

「あ・・・千鶴さん。わわっ止めて下さいよ!」


千鶴は店に入るとすぐに賢を見つけ、背の高い賢の頭をジャンプしてぐしゃぐしゃっと

する。皆、賢がかわいくてしょうがなかった。相変わらず顔に出ないが、龍も弟のよう

にかわいがっているのが分かった。龍は父の後を継ぐことになり、共に徹龍軒を盛り立

てている。しかし今年に入り体調を崩しがちの父の仕事量を減らすために、アルバイト

を雇うことになったのだ。


「良かったよ。いいバイトが来てくれて。看板娘の私が手伝おうと思ったんだけどさ〜」

「千鶴・・・仕事先に迷惑かけるなよ」

「な、なんだよ、かけてねーよっいつもかけてるみたいに・・・たまにだよっ・・・


龍に見られるだけで、語尾が小さくなる千鶴を見て賢が笑うと賢は千鶴に思いっきり

羽交い絞めにあう。


「うわぁぁ〜〜〜っごめんなさいっ〜〜〜〜!」

「賢のくせにっ〜〜〜〜」


わはは〜〜〜っ


賢は龍と千鶴の二人に憧れていた。幼馴染だという二人は傍から見てもベストカップ

だった。


(いいなぁ・・・・)


そして賢にはもう一組憧れのカップルがいた。


がらっー


「あ・・・爽子!」

「遅くなって・・ごめんなさい」

「爽子、おひさ〜〜っ!」

「ちづちゃんっ真田くん・・・お久ぶりですっ」

「もうすぐやのちんとケントも来るってさ」

「なんか、同窓会みたいだな。今日」


そう、もう一組のカップルは風早とその彼女黒沼爽子さんだ。この二人は高校からの

付き合いだって聞いた。きっと学校以外のこんな先生を知っているのは俺だけ。


「爽子、お疲れ様。寒かったろ?」

「あっ翔太くんも・・・お疲れ様です」


こんなに愛おしい目で彼女を見るんだ・・・って最初見た時驚いた。それは学校で女

生徒たちと接している目とはまるで違う。同じように優しいんだけど全然違う。


「あ・・・賢さん、こんばんわ。お疲れさまです」

「あっ・・・・こんばんわ爽子さん」

「うわぁぁ〜〜〜〜”さわこさん!?”ちょっとぉいつから名前で呼ぶようになった!?

 いいの?風早!」

「いいわけないだろ〜〜〜〜っ」

「いてててっ〜〜〜っやめろ〜〜〜暴力担任!!」


わはは〜〜〜〜っ


今度は風早にフェイスロックを掛けられて苦しむ賢を皆大笑いしていた。こんな風に

徹龍軒にはいつも笑いがあふれていた。


賢だけが知っているこの風景。そんな時思う。


(琴音・・・やっぱ無理だよ)


琴音がマジになればなるほど苦しくなる。なぜならこの二人を知っているから。そし

て、琴音の気持ちを知りながら言えない自分自身に嫌気がさしていた。


賢は今日も賑やかな風景を見て、ふーっとため息をついた。



<つづく>



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あとがき↓

2010年の君に届けカレンダーの表紙→  
が今もトイレに飾ってあって、王子様の風早が書きたくなったのだが、なぜかこんな
話に。この表紙たまらんほど好き(*´д`*) この絵を見ていると妄想湧くのです。結構
三者目線で二人を見るのは書いていて萌えるっ。ふふっ多分5話ぐらい・・・お付き合
いくださいませ♪