「Once in a blue moon」(17)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 の続きです。 


☆ 蓮の過去を翔太から聞いた麻美は動揺してしまう。そんな麻美を不安に思う翔太は・・・?

















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 17 ‥…━━━☆



















* * *



「あれ?あいつ帰ったの?」

「うん、明日早いからって」

「そっか」


翔太は視線を逸らしながら言った。あの後、翔太は麻美を駅まで送ったのだが、車の中

で麻美は一言も喋らなかった。蓮が誰かと付き合ったことを嬉しく思っていた。しかし、

あの重い過去を抱えながら、今もなお苦しんでいる蓮を麻美は全部受け止めてくれるの

だろうか?そして蓮は本気で麻美を好きなのだろうか?翔太は付き合った後もあまり変

わらない蓮に不安を感じていた。


「ゆづ寝た?ありがとなっ」

「うん・・・・やべ、まじかわいい」

「はは・・・うれしーけど。蓮の今の恋人をお忘れなく」

「だからロリコンじゃねーって」


二人は目が合って、思わず失笑する。


「本当に・・・いつもありがとう」


そこに爽子も加わり、晩酌が始まる。爽子の性格からお酒の種類は何でも揃っていて、

テーブルには様々なおつまみが用意されていた。


「俺が好きでやってることだから・・・そんなことはいいけど、これ今作ったの?」


蓮が目の前の御馳走を驚いたように見つめると、爽子が遠慮気味に言った。


「お口に合うといいんですが・・・」

「合わないわけないし・・・。まじ、翔太幸せもん」


パクパクと蓮はつまみを口に入れながら翔太をちらっと見てにやっとした。


「うん。すごいよ爽子は。蓮がいる時だけじゃないし。いつも・・・ありがとな」

「えっいやいや、私が好きでやっていることなので」

「でもありがと」

「翔太くん・・・」


二人がにっこりと微笑み合う横で蓮が頬杖ついて苦虫を噛み潰すような顔で見ている。

蓮の視線に気づいた翔太と爽子はかぁ〜〜〜っとなって俯いた。


「・・・だから、俺居るってば」

「べ、別にそんなわけじゃっ////」

「っとに変わんねーなぁ」


あはは〜〜〜っ


遅くなっても必ず帰ろうとする蓮だが、この日は終電がなくなってしまい風早家に泊

まることになった。もちろん二人は大歓迎した。


「ゆづが起きたら喜ぶなっ!」

「明日は早くに帰るよ。わりーな・・・邪魔して」

「だからさ〜思ってないから。泊まるんだから、ほらもっと飲んで」

「さんきゅ」

「う・・嬉しいなぁ・・・。明日ゆづちゃん、驚くだろうなぁ〜」


爽子が拳を固めて興奮気味に言うのを蓮は横目でちらっと見ると、さっと視線を逸ら

して翔太の方を向いて言った。


「・・・ま、俺に遠慮せずイチャついていいから」

「蓮っ〜〜〜〜////」


あはは〜〜〜っ


しかしその後爽子は、二人きりにするために”先に寝るね”と2階に上がった。2階に

は爽子と翔太の寝室と結月の部屋がある。結月はもうすぐ4歳になるが、早くから一

人で寝ることを嫌がらなかった。


二人はリビングで静かなBGMをかけながら寛ぐ。


「こーやって二人で飲むの・・・何年ぶりかな」

「そーだな・・・仙台にいた頃はよく蓮の家や俺の家で朝まで飲み明かしたよな」

「飲み明かすって、翔太はいつも先に寝るじゃん」

「ははっ・・・そうだった」


蓮はカランッとウィスキーが入ったグラスの氷を転がすと、遠くを見つめて懐かしそ

うな表情を浮かべた。


「あの頃・・・いろいろあったけど、幸せそうで良かった」

「・・・そうだな。懐かし〜な。今となってはあの時があって良かったかも」


翔太が笑いながら言うと、蓮はつらそうに翔太から視線を逸らした。そしてまるで自

分を嘲笑するように口角を上げる。


「・・それはないだろ。あんな想いしない方がいいに決まってる・・・」

「・・・・」


翔太はいまだに責任を感じている蓮を感じると、ふぅっとため息をついた。そして大

袈裟に呆れたように言う。


「あのさ、一体何年引きずってんの?蓮はしつこいよな〜性格が」

「なっ・・・そうかな」

「そうそう」


蓮が複雑そうに翔太に目をやると、翔太はにっこりと笑って優しい目で蓮を見ていた。

その目に蓮は思わず見入った。


「俺は今、幸せだから。もういいだろ?もともと蓮の責任でもないんだし」

「・・・ん」


蓮は微かに頷くと、切り替えるようにビールを翔太に注いだ。


「おっさんきゅ」

「ーま、最初から心配してなかったけど?お前らは特別だし」

「特別・・・?」


”特別は特別だよ”と言って蓮は笑った。翔太は麻美に蓮のことを言って良かったのか

とずっと考えていた。ただ、彼女の真剣な目が蓮を変えるような気がした。心のどこ

かで麻美に賭けている自分がいた。翔太は決心するように唇を一文字にすると蓮を見

つめた。


「あの子にさ・・・言ったよ」

「え?」

「美穂さんのこと・・・ごめんっ勝手に」

「・・・・・」


蓮はしばらくの間、翔太の目を見つめるとふっと笑みを零した。


「別にいいよ。翔太がいい加減にそんなこと言うはずないから」

「うん・・・いい加減な気持ちで言ったんじゃない。彼女・・・真剣だな」

「・・・分かってる。大切にするつもり」

「うん・・・」


翔太は蓮の言葉に嘘がないことを知っている。嘘をつくような人間ではない。しかし

心の底にある不安も拭いきれない。


「本気で・・・・彼女のこと好きなのか?」

「・・・好きだよ」


翔太は蓮を探るように鋭い目で見つめた。そしてずっと思っていたことを口にする。


「俺には本気に見えないんだけど」

「え?」

「蓮の恋愛を全部知ってるわけじゃないけど、何か・・・違うって感じるんだ」

「・・・・・」

「もう・・・繰り返して欲しくないんだ」


二人の間に沈黙が走る。蓮はしらばく翔太を睨むように見ると、ふっきるようにグラ

スのウィスキーを飲み干した。翔太は蓮から逃げたくなかった。蓮が北海道に転勤に

なったことも意味あることだと感じていたからだ。


蓮はグラスから視線を外さずに、小さな声で吐き捨てるように言った。


「翔太はさ・・・分かんねーんだよ。出会った人間だからな」

「出会った人間?」

「悪り・・・失言した。分かってるよな。翔太は重々・・・・。」

「・・・・」

「でも・・・そんなに簡単に言ってくれるなよ」


”出会った人間・・・”


蓮は俯いて髪をくしゃっとすると、小さな声で”ごめん”と呟いた。翔太は切ない目で

蓮を見つめる。


蓮の言いたいことは分かっていた。なまじ、3年間一緒に過ごしたわけではない。魂

が揺さぶられるような人と出会うのは奇跡だ。世の中どれぐらいの人がそんな奇跡に

出会えているのだろう?そしてその出会いを奇跡だと気づけているのだろう。そんな

出会いでなくても人は幸せになれる。だけどなぜだか蓮は求めているような気がした。

そして・・・その奇跡に出会わない限り幸せになれないような気がした。


本物を知っている。だからこそ・・・。


「それでも・・・蓮には幸せになって欲しんだよ」


翔太は苦しそうにぎゅっと瞼を閉じると、もう一度強い意志のある目で蓮を見つめた。










「Once in a blue moon」 18 へつづく













あとがき↓

途中で止まっていてすみません。またどれだけ続けられるか分からないので、のんびり
見て下さい。この話このままいくとかなり長いです。しかし〜別マの続き気になります
ね。しーな先生は大切なところはかなり粘って描きますよね。ここ、大切なんだろうな
と思っています。キミトドは単純に恋愛して、ライバルが現れて・・・というありきた
りの少女マンガになって欲しくないので、人間らしさや気持ちの部分を重要視して描い
て欲しいなぁと思います。その分、二次は単純な少女マンガなんかも展開できますから
ね〜〜〜(笑)まぁやりたい放題ですけど(´д`)┌