「    」(2) 2周年記念企画リレー小説

サイト2周年企画 リレー小説 

こちらはサイト2周年記念として沢山の方に参加頂き、爽風の二次小説をつなげよう!
企画です。どんな話になっていくのか今から楽しみです。 

題名は最後に決めましょう!


<今まで決まっている設定>

* 風早大学生 彼女なし
* 爽子ウェートレス

読み手の皆様にはあえて今の段階で決まっている設定だけ記述しておきますね。その
方が面白いと思って( ̄ー ̄)ニヤリ 段々と明らかになっていきます。


今までのお話:大学に入って合コンに明け暮れる友人のようには恋愛にのめり込めな
い風早。そんな時、ジョーに連れられてあるカフェに行く。そこで見つけた人物に今
まで感じたことない胸の高鳴りを感じるが・・・?

この話は2周年記念企画リレー小説 (1) の続きです。




第二回 書き手  梶浦ぴろさま






















* * *





あのあと、次々とウェイトレスの女の子を品定めしていたジョーは、運ばれてきたカ

フェオレを飲み干して、「さて、かえろっかー」と呑気な声を上げた。一通り従業員

の女の子を物色して満足したらしい。…まったく、一体何しに来たんだか。


俺はといえば、先ほど突然視界に入ってきた一人のウェイトレスの女の子が気になっ

て、ずっとその姿を見つめていた。長くて指通りの良さそうな黒髪をポニーテールに

した彼女は、少しも動きを止めずに相変わらずパタパタと忙しなく働いている。決し

て大きくはないけれど、どこか雰囲気のある切れ長の瞳をキラキラと瞬かせて、お手

拭きを丁寧にカゴの中におさめていた。そんな彼女が醸し出す雰囲気はどこか楽しそ

うに見えて、どこかめんどくさそうに働く他のバイトの従業員の接客態度との違いに

何故か感心してしまう。


そんなことを考えていたら、彼女はいつのまにかレジの会計を担当していて、大学生

くらいの男性二人組から現金を受け取るところだった。



「―――280円のお返しです。ありがとうございました」



…ふと、彼女の引きつったような笑顔が気になった。

緊張しているのだろうか?一生懸命に口角を上げてニッコリ笑顔を作ったつもりのよう

だったが、彼女のぎこちない笑顔に男性客はどこか引き気味のようだ。



「……あのさぁ、さっきから思ってたんだけど」

「…えっ…は、はい。なんでしょうか」

「あんた、その笑顔どうにかなんないの。コーヒー運んでくる時もさぁ、なんか不気味に
ニヤっと笑われてもさ。正直コエーし」

「…も、申し訳ありません…!」


「向いてないんじゃない、この仕事」



不快そうに顔をしかめた男性客がそう告げた時、彼女は悲しそうにそっと俯いた。

そんなことはお構いなしといった様子で踵を返しカフェを出て行った男性客に、

「また起こしくだいませ」と決まり文句を告げた彼女の声は、すっかり元気を無く

していた。


その一連の状況を見ていた俺は、なぜだかとても腹立たしい気持ちになっていた。


なんだろう、あの態度の悪いにもほどがある男性客は。

彼女は一生懸命、仕事をがんばっていたというのに。

そんな彼女の姿を、あの客は少しも見ていなかったというのだろうか。

笑顔を作るのが少し苦手なだけで、彼女はどうしてあんなに責められなければならないのか。


「……おい、なぁ風早、聞いてる?」


目の前でジョーが怪訝そうな顔で声を掛けてきて、俺はハッと我に返った。

不思議そうにこちらを見つめてくるジョーを適当にあしらっていると、先ほどの彼女が

暗い表情のまま、こちらにやってきた。

すぐ近くの通路を横切った瞬間に、彼女が静かに独り言を囁いたのがわかった。



「………やっぱり、だめだなぁ…わたし………」



寂しそうな声音と、今にも泣きだしそうにうなだれた横顔。



その光景がいつまでもいつまでも俺の目にしっかりと焼きついて、なぜだか彼女のこと

が気になって仕方が無かったんだ。




*  *  *




あれから数日経ったある日、大学で取っていた講義が急に休講になったからという理由で、

俺は一人だけで再び彼女が働くあのカフェに訪れていた。


平日の午後だからなのか客足はまばらなようで、数人のウェイトレス達は少し退屈そうに

ぼーっとしているのが大半だ。窓際の席に静かに腰かけて、何を頼もうかと考えていると、

鈴の音が鳴るような澄んだ声が近くで聞こえてきた。



「ご注文はお決まりでしょうか?」



広げていたメニュー表から慌てて顔を上げると、そこにはあの日、俺の胸のなかにそっと

居座り始めた彼女が佇んでいた。突然のことに俺は少しびっくりして、しばしの間ぼーっと

彼女の顔を見つめてしまっていたようだ。



「……あの、お客様、どうかなされましたか…?」

「え…あ、あっ…はい、えと…じゃあ、このブラックコーヒーで」

「ブラックコーヒーをおひとつでございますね。ご注文は以上でよろしいですか?」

「あ、はい…」

「では、少々お待ちくださいませ」



そう言って、彼女はほんの少しだけきゅっと口角を上げる仕草をしただけで、どこか

ぎこちない仕草でくるりと背を向けてしまった。



「………待って!」



気づいたときには、彼女の後姿に声を掛けている自分がいた。

彼女がきょとんとした顔でこちらを振り向く。



「元気だして。君はウェイトレスに向いてないことなんかないよ」



はっとしたように彼女は目を丸くして、こちらをじっと見つめ返してくる。



「だって、俺、ずっと見てたんだ。仕事をする君は、すごく楽しそうに見えたから」



……そのままお互いにしばらく沈黙して、俺はふと我に返って自分がとてつもない発言を

してしまったと気づいた。途端に顔中にぶわりと熱が集まってきてしまい、ものすごい恥

ずかしさに思わずその場にうずくまってしまいそうになる。


ああ、俺はなんてことを口走ってしまったんだ。


初対面の女の子に訳の分からないことを言った挙句に、「ずっと見てたんだ」だなんて。

まるでストーカーをしていたと自白しているみたいなものじゃないか。


羞恥と後悔がぐるぐると渦巻く頭を置き去りにしたまま、俺はどうしたものかと途方に

暮れてしまった。すると、目の前の彼女はポカンと呆けた顔をしていたと思ったら、

ふわぁっとその表情を変えた。



「……ありがとうございます。そんなこと言われたの、生まれてはじめてです」



まるで、小さな愛らしい花のつぼみが静かに花びらを開いていくように、彼女の頬が

桃色に染まったかと思えば柔らかく頬をほころばせている。

切れ長の漆黒の瞳はほんのすこし涙に濡れている。ほのかに染まる桃色の頬と、儚くて

繊細な、優しい微笑み。




その時、俺は初めて自覚したんだ。




もうとっくに、俺は生まれてはじめての恋に堕ちていたんだ、って。






 イラストby 梶浦ぴろさま






<つづく>



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↑書き手さまに感想を送ります〜〜〜♪













あとがき↓

ぶふぁぁぁ〜〜ちょっとどうですっ奥さん(鼻血拭き拭き)萌えまくりません??
もう私これ見た時、妄想膨らみまくりましたよ。た・・たまらん。それにきゅんと
せつなくなりました。爽子は風早にそう言われて嬉しかったんだろうなぁって。
いやぁ〜〜〜リレー小説面白すぎる。やめられませんっ。さぁ、これを見て妄想が
膨らんだ皆様、ご参加お待ちしています。妄想を次に押し付けるって気も楽ですよ。
(と言いながら・・・ラストは誰になるのだか( ̄Д ̄;)そしてイラスト爽子。
ぴろさま凄すぎる。ぶ〜〜〜〜っ、鼻血もんでしょ。
本当に梶浦ぴろさまありがとうございました。再びぴろさんにバトンが回って来る
ことを祈ってしまうsawaloveでした。次のバトンは「すいの部屋」翠さまで〜〜す。
よろしくお願いしますヽ(´▽`)/