「Cresent moon」 8<最終話>

オリキャラ投票企画&リクエス

光平完全主人公の話です。はい、あくまでスピンオフではございません(笑)
光平の名誉のために(?)番外編でもありません(笑)

物語は光平が北海道に来て1年後の話です。

この話は「Crescent moon」1 2 3 4 5 6 7 の続きです。


爽子を傷つけてしまった光平はちゃんと謝りたいと思った、そして爽子を店に呼び出

した光平だが・・・?最終回です。



















夜空に輝くcrescent moon

欠けた月もロマンチックで趣があるじゃないか。

そう思えるまで長い時間がかかった。

人は形だけではない。本当に大切なものは心の中にある。

それを教えてくれたのは彼女だった。

そして、自分に向き合う勇気を与えてくれた。

例えどんな好意であろうと大切にする彼女に出会えたから、

今は前を向いて歩いて行ける。

だから伝えたい。


沢山の ” ごめん ” 


そして、それ以上の ” ありがとう ”・・・を。









〜 Crescent moon Epi 8〜最終話〜















*****


「ご・・ごめんなさいっ」


目が点になった。何から切り出せばいいかと言葉に詰まっていた俺の前で黒沼さんは

深々と頭を下げた。


「傷つけてしまって・・・本当にごめんなさいっ」


こっちが謝らないといけないのにあまりの驚きで言葉が出なくて、唖然と彼女の言動

を見ていた。その時の俺はかなり情けない顔をしていたと思う。


彼女は汚れのない目を揺らしながらも視線を逸らさず俺を見つめた。


どくんっ


その目は真実だけを語るからいつも心臓が大きく動く。


「私・・・あれからどうすればいいか分からなくなってしまって、いろいろ考えたの

 だけれど、行きつく先は同じで。やっぱり答えは決まっていて・・・・」

「こた・・・え?」


どくんっ


俺を好きになれないということ・・・だ。


「同じようにしか・・・できません」

「・・・・・え」


声が裏返った。申し訳なさそうに彼女が言った。


「恋愛に鈍いって言われているのは自覚しています。でも・・・田口くんと自然にで

 きないのはやはり嫌で・・・避けるとかできませんっ」


それは彼女でなければ弄んでいるように思えるかもしれない。また、残酷だと。だけ

ど彼女の真剣な目に伝わってくるものがある。


なんだろう・・・この感覚。


「も、もし違ったらごめんなさいっ。もし、田口くんが恋愛感情・・・をまだ私に持

 ってくれているとしたら・・・同じようにお返しすることは出来ないけれど、どん

 な好意であってもやはり嬉しくって」

「・・・え?」

「あの、だからっ・・・恋愛でなくても人として好きで、田口くんとこれからも変わ

 らず接していけたら嬉しいって・・。本当におこがましくて・・ごめんなさいっ」


そう言って彼女はまた深々と頭を下げた。


俺は彼女が好きで、彼女のちょっとした言動でドキドキして異性を感じている。それ

は風早と同じ気持ちで。今言われたことは異性として見れないけど友人としてこれか

らもやっていきたいってことで・・・。それは好きな男には残酷すぎる言葉だ。


でも”嬉しい・・・”と彼女は言った。


その言葉の意味を考える。でも考える以前に彼女の目があまりにも純粋で一生懸命で

温かいものが伝わってくる。なんだろう・・・熱いものがこみ上げてきた。

彼女は懐かしむように目を細めて言う。


「初めて・・・田口くんと喋った時、”いい人だなぁ”って思って嬉しくなったの。

 そして仲間のみなさんといる田口くんをう、羨ましいって思ったよ!!」


”皆さんにとても愛されているんだなって・・・”


拳を握りしめて、一生懸命話してくれる彼女に嘘偽りなんて感じる者がいるだろうか?


人として、好きだと言ってくれた。あんなに傷つけたのに。どんな好意であろうと変

わらない。それは人を大切に慈しむ彼女だから自然に出る言葉なのだ。

ちっぽけな俺とは違って・・・。


俺は立ち上がって、机ぎりぎりまで頭を下げた。


「・・・ごめん」


きっと大きな目をまん丸くさせている。そんな仕草も愛おしくて。全部好きで。この

先も彼女が俺に振り向くことはない。それがつらくて仕方なかった。振り向いてもら

えない自分自身が可哀そうで、腐ってめちゃくちゃなことをして。


俺、自分しか見てなかった。


”ごめん”しか言えなかった。言わなければならないことは沢山あるのに。言葉を発っ

したら目頭が熱くなって零れ落ちそうだったから。


”ごめん”は今回のことだけじゃない。あの夏のことも・・・。君を傷つけてしまった

全てのことをいつかちゃんと謝るから。今は、許して欲しい。


顔を上げると彼女が今まで見た中で一番自然な笑顔で笑っていた。

後から風早に聞いた。”彼女は本当に笑いたい時に笑うんだ”・・・と。


俺はその時思ったんだ。彼女に幸せになってもらいたいと。例え俺の側にいなくても

彼女が笑っていて欲しいと心から思った。


それが人を好きになることなのだと・・・気づくことができた。そして俺は彼女と出

会った意味がやっと分かり始めていた。



********


〜1年後〜


「面白かったなぁ〜〜〜風早めっちゃ照れて」

「ほんとあれプロポーズだよな」

「風早ベタボレ」

「俺も恋愛してぇ〜〜〜」

「太陽はまず食い気から色気に変えなきゃね〜〜」


あはは〜〜〜っ


風早と黒沼さんの婚約パーティーの後、二人の気持ちはさらに固まった。もう結婚も

間近だろう。彼女への気持ちが全くなくなったと言ったら嘘になる。でも心から二人

を祝える自分がいる。それはあの時があったから。


俺は横を歩いていた蓮に前を向きながら言った。


「蓮・・・俺、彼女を好きになって良かった」

「!」


あれから黒沼さんのことを蓮に話したことはない。でも蓮はすぐに俺の言った意味を

察してくれて、少し目尻を下げて頷いた。


「光平、変わったよな」

「え?どんな風に?」

「前を向いて歩いてる」

「蓮・・・いろいろ・・・ありがとな。んで、ごめん」

「は?なんのこと」


蓮は分かってるけどそれ以上言わない。そんな男だ。あの時、いろいろな人を傷つけ

た。風早や黒沼さんだけじゃない。蓮も・・・。


”『ちゃんと真っ直ぐ見れる恋愛しろよ』”


光平は蓮を見て穏やかな表情で微笑んだ。


北海道で出会った恋。苦しいことも沢山あった。でも俺の人生を変える出会いとなっ

た。彼女は人を慈しむ。自分のことのように他人を思う彼女との出会いは沢山のこと

を俺に気づかせてくれた。人として生きていく大切なことを・・・。


そんな彼女がいつでも幸せでありますように・・・。



光平が清々しい顔で見上げた夜空には、くっきりときれいな  Crescent moon が

輝いていた。




<終わり>

web拍手 by FC2












あとがき↓

爽子と光平では格が違うと思ってます。爽子はそんなこと考えないだろうけど(´д`)
だから爽子はいろいろな人に影響を与えるのかなと。ここで書きたかったのは、光平が
爽子の幸せを心から祈れるようになることと、自分を受け入れることでした。月日が経
って分かったこともあるでしょうけど、やっぱり最後は爽子から手を差し伸べることに
なってしまいました(-_-X)”愛”が深いですからねぇ爽子は。
さて、リクエストを下さったCさま、満足してもらえたのでしょうか(汗)こんな光平
を愛して(!??)下さって本当にありがとうございました。


余談として、この後光平は昌と結婚することになりますが、友香とのことは墓場まで持
っていくということで(笑)そして爽子も光平と二人で会ったことは風早に言う事はし
ません。爽子なら言わないような気がしました。